見事なフットワークの仕上がり!「ホンダ・シビック タイプR」【最新国産新型車 車種別解説 HONDA CIVIC TYPE R】

大きく張り出した前後のフェンダー、目を引く大型リヤスポイラー、タイヤホイールの隙間からは赤いブレーキキャリパーを覗かせ、ひと目で“只者ではない"気配を感じさせる。外観には強い個性が光るが、これまでよりもスマートでクリーン、シンプルと言ってもいいスタイリングが新型タイプRの特徴だ。街乗りでは乗り心地に優れ、サーキットでは本領を発揮する、今どき稀有な一台であることは間違いない。
REPORT:河村康彦(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:宮門秀行/平野 陽/中野孝次 MODEL:新 唯

最後のエンジン仕様 タイプRの登場?

スポーツ派ドライバーの心を鷲掴みにして離さないのが、『R』というひと文字が与えられたホンダのモデルだ。そもそも、エンジン性能の高さにおいては定評のあるブランドであるものの、「ピュアEVとFCVの販売比率を2040年までに全世界で100%にする」と表明し、すなわち〝脱エンジン〞の姿勢を明確にした今だからこそより話題となったという印象も受ける最新のRモデルが、22年9月に発売をされたシビックタイプRだ。

エクステリア

専用の前後フェンダー造形や、リヤドアパネルの採用によって、より統一感のあるスタイリングを実現。これまでのアドオンスタイルのタイプRから、より洗練された印象を醸し出した。最小回転半径は5.9m。

大開口を備えるフロントマスクや大きく膨らんだ前後のフェンダー、さらにスポークの隙間から真っ赤なブレーキキャリパーを覗かせた大径のタイヤやウイング状の派手なリヤスポイラーを採用するなど、見る人がみればそれがとんでもなく高い走りのパフォーマンスの持ち主であることは即座に見破れるもの。

乗降性

それでも、それぞれが何とも自己主張の強い見た目のさまざまなボディキットやディテールデザインを採用していた従来型に比べると、むしろクリーンでシンプルと受け取れるのが新型のルックス。従来型にはちょっと抵抗があったけれどこれならば自分にも似合いそう……と、そんな印象を受けた人もいるはずだ。

インストルメントパネル

何よりも特徴となるのは、インストゥルメントパネルまわりで運転を妨げる配色を極力避けたこと。しかしタイプRとしての高揚感は大切にされ、フロアやシートはレッドの配色に。

FFレイアウトの持ち主としてサーキット最速を狙う、と、このモデルがそうした一面を備えるのは事実ではあるのだが、一方で必ずしもそれ一辺倒ではないことを示すのが、シフト時のタイムロスが避けられないMTのみというトランスミッションの設定。

自身のラインナップ中に適合する2ペダル・ユニットの用意がなく新たに開発をするには莫大なコストを必要とする、といった事情ももちろん関係がありそうだが、同時に「MTを究めたい」という開発陣の熱い想いも無関係ではなかったことは、従来のユニットにリファインを重ね、今や〝極上〞という評価こそが相応しい優れたシフトフィーリングにも表れている。加えればターボ付きの2.0ℓで330㎰という出力値も、昨今では数字だけを見ると「より上」が存在するという状況。

居住性

けれども、「今回も前二輪駆動方式を踏襲することを考えれば、よりピーク値を高めることでフレキシブルさを欠いてしまう出力特性は、シビックのタイプRには相応しくないと判断した」と開発陣はコメントしている。実際、街乗りシーンでもすこぶる柔軟なパワー特性を味わわせてくれるし、一方でサーキットでそのポテンシャルすべてを開放するならば、見事にパワフルで頭打ち感に見舞われることのないフィーリングに、「やっぱりホンダのエンジンは最高だな」という思いを新たにすることになる。

うれしい装備

自動ブリッピングのレブマチックシステムは、2速から1速へのシフトダウン時にも対応可能となった。
フルモデルチェンジ           22年9月1日発表 
月間販売台数              441台(22年9月~12月平均値)
WLTCモード燃費             12.5km/l ※ハイブリッド車  

ラゲッジルーム

ドライブモードで最もハードなポジションを選択すると「これは完全舗装のサーキット限定」と思えるセッティングとなるが、逆に最もソフトな設定を選ぶと、時に「しなやか」という表現を使いたくなるほどの乗り味を提供してくれるフットワークの仕上がりも見事なもの。今の時代にこうしたモデルが開発されたことに加え、それが500万円を切る価格で提供されることにも感動を覚える珠玉の1台である。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.147「2023 国産新型車のすべて」の再構成です。

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