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縦置きレイアウトは、やっぱり高級・上質だ
新型GLCのプラットフォームは「MRA2」で、Cクラスセダン/ステーションワゴンやSクラスと共有する。乱暴にいえばCクラスベースのSUVがGLCだ。ひと足先に新世代に移行したCクラスやSクラスが採用した最新技術を取り入れたているのが新型の特徴であり、魅力でもある。
走行機能系ではリヤ・アクスルステアリングを採用(オプション設定)して、SクラスやCクラスに追随した格好。電気自動車のEQSやEQEも採用しており、「C」以上のメルセデス・ベンツの定番技術となっている。
最大の魅力は最小回転半径が小さくなることだ。後輪を前輪とは逆向きに最大4.5度切ることで、5.1mの最小回転半径を実現している。先代は5.6mだったから0.5m小さな半径で転回できる。リヤ・アクスルステアリング非装着時の最小回転半径は5.5mで、この場合でも従来比0.1m小回りが利く。
GLCの取り回しの良さは「日本の道路事情に合っている」と輸入元のメルセデス・ベンツ日本は主張する。ボディサイズは全長×全幅×全高4725×1890×1635mmで、先代比で50mm長く、幅は同じで、5mm低くなっている。いたずらに大型化していないのは歓迎すべき点だ。広い駐車場でUターンを想定してフル転舵してみると、お尻がクイッと外に振り出すような感覚を味わわせながら想像以上にコンパクトに転回した。
リヤ・アクスルステアリングは約60km/h以下では前輪と逆の向きに最大4.5度の範囲で切れ、約60km/hを超えると前輪と同じ向きに最大約4.5度切れて走行安定性を高める。Uターンするような大転舵時以外、リヤ・アクスルステアリングの動作を意識することはない。高速道路でレーンチェンジする際のスムーズかつ安定した動きにも寄与しているのだろうが、動きは自然でいやらしさはない。
サスペンションはフロントが4リンク式、リヤはマルチリンク式で(当然のことながらプラットフォームを共有する)Cクラスと同じだ。試乗車にはドライバーズパッケージのオプション(49万円)が付いていたが、このオプションを選択すると、コイルスプリング+減衰力固定式ダンパーがエアスプリング+電子制御ダンパーになる。
走行モード切り替えのダイナミックセレクトでSportを選択、あるいは一定以上の車速になると車高は15mm下がって走行安定性と燃費の向上に寄与。Offroadを選択すると車高は15mm上がり、悪路走破性を高める仕組みだ。ダイナミックセレクトにはほかに、標準設定のComfort、燃費志向のEco、設定をカスタマイズできるIndividualがある。
GLC試乗時にはアップデートされたAクラスとBクラスに試乗したこともあり、横置きパワートレーンのプラットフォームと縦置きパワートレーンのプラットフォームの間に存在する歴然とした乗り味の差を体感した。MRA2プラットフォームのGLCは“ザ・メルセデス“の乗り味で、「これぞプレミアム」と表現したくなる。動きは上品だし、なめらかだし、静かだ。荒れた路面も鋭い突起も澄まし顔でいなして快適さを失わない。横置きプラットフォームの車両はメルセデス・ベンツの味を残しながらもずっとカジュアルに感じる。
OM654MのMはモディファイ=進化版
新型GLCが搭載するエンジンはひとまず1種類のみで、OM654M型の2L直列4気筒ディーゼルである。これに9速ATを組み合わせる。さらにいうと全車4MATIC(4WD)だ。駆動力配分はフロント45%、リヤ55%の固定である。
OM654Mの「M」はモディファイの意味で、OM654の進化版だ。すでにCクラスなどに設定されている。大きな変化点はストロークを2mm伸ばして94.3mmにしたことだ。82mmのボアに変化はなく、排気量は42cc増えて1992ccになっている。ストローク/ボア比は1.13から1.15になった。コンロッドを短くして対処したとすればスラスト力が増えてフリクションが増えるが、それよりもストロークを伸ばしたことによる効率向上分が上回るのだろう。
直噴インジェクターの最大噴射圧は2500barから2700barに引き上げられた。また、冠面の温度ピークを効果的に低減するため、スチール製ピストンの上部にナトリウム封入式の冷却ダクトを内蔵している。これらエンジン改良の効果で、WLTCモード燃費は15.1km/Lから18.0km/Lに約19%向上している。
最高出力は145kW/3600rpm、最大トルクは440Nm/1800-2800rpmだ。最大トルクが40Nm向上したのが大きいし、48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせとなったのも大きい。エンジンとトランスミッションの間に最高出力17kW、最大トルク205NmのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を挟む。
ISGの効果を最も大きく感じるのは、アイドリングストップからの再始動時だ。従来のスターター始動に比べて格段に静かでスムーズ(不快なショックがない)である。走行中、ディーゼルエンジンに特有の燃焼音は耳に届くが、「聞こえる」のは発進から巡航スピードに達するまでで、それも、気にならないレベルに低く抑えられている。巡航スピードに達してからはロードノイズなどの走行音にマスクされるため、ディーゼルであること、エンジンを積んでいることを意識させられることはない。力やレスポンスに不足はなく、快適なドライブが味わえる。
装備面では最新の安全運転支援システムや最新のMBUX(車載インフォテインメントシステム)の採用が大きい。ステアリングホイールは最新式になり、ハンズオフの検知機能がトルク感応式から静電容量式になった。追従型のクルーズコントロールをオンにして走行している際、従来は意識的にステアリングに力を伝えていないとステアリングを握るようアラートが出ることがあった。新型は静電容量式なので、ステアリングに触れているだけでオーケー。高速巡航時の快適性が違う。
カメラで捉えた画像に青い矢印で進行方向を案内するAR(拡張現実)ナビゲーションはSクラスやEクラス、EQSなどに続いて採用。GLC独自の機能はトランスペアレントボンネットだ。360度カメラのフロントカメラと左右ドアミラーのカメラが捉えた映像を合成し、11.9インチ縦型のメディアディスプレイにボンネットで隠れて見えない前下方の状況を表示する。
また、ステアリングホイールの奥にある12.3インチのコックピットディスプレイに車両の傾きや路面の勾配、標高、緯度経度など、メディアディスプレイにはGLCの現在姿勢やリアホイールの操舵角度など、オフロード走行に関連する機能を表示するオフロードスクリーンも新型GLCで新たに採用された機能だ。
急な下り勾配で車速が一定以上にならないようブレーキとアクセル操作を車両側で制御するダウンヒルスピードレギュレーション(DSR)も備えており、新型GLCは形だけのSUVではないことを搭載する機能で証明している。気分やシチュエーションのオン/オフだけでなくラフ(ロード)でも頼りになる1台だ。
メルセデス・ベンツGLC 220d 4MATIC(ISG搭載モデル) 全長×全幅×全高:4725mm×1890mm×1635mm ホイールベース:2890mm 車重:2020kg サスペンション:F4リンク式/R マルチリンク式 駆動方式:4WD エンジン 形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 型式:OM654M 排気量:1992cc ボア×ストローク:82.0mm×94.3mm 圧縮比: 最高出力:197ps(145kW)/3600rpm 最大トルク:440Nm/1800-2800rpm 燃料供給:DI 燃料:軽油 燃料タンク:62L モーター EM0023型交流同期モーター 定格電圧:44V 定格出力:10kW) 最高出力:17kW 最大トルク:205Nm トランスミッション:9速AT WLTCモード燃費:18.1km/ℓ 市街地モード 14.3km/ℓ 郊外モード 18.5km/ℓ 高速道路モード 20.1km/ℓ 車両価格:820万円 オプションはAMGラインパッケージ 60万円 AMGレザーエクスクルーシブパッケージ 55万円 ドライバーズパッケージ49万円 パノラミックスライディングルーフ22万円 メタリックペイント8万円 ランスミッション:9速AT WLTCモード燃費:18.1km/ℓ 市街地モード 14.3km/ℓ 郊外モード 18.5km/ℓ 高速道路モード 20.1km/ℓ 車両価格:820万円 オプションはAMGラインパッケージ 60万円 AMGレザーエクスクルーシブパッケージ 55万円 ドライバーズパッケージ49万円 パノラミックスライディングルーフ22万円 メタリックペイント8万円