ボルボのBEV、C40 Recharge ロングドライブでわかった実力とプラスアルファの魅力とは

ボルボC40 Recharge Ultimate Twin Motor 車両価格:759万円
ボルボのピュアEV(つまり電気自動車)であるC40は2022年に日本へ導入された最新モデルである。大人気のコンパクトクロスオーバー、XC40と同じCMAプラットフォームを使うC40は、個性的なルックスもあって、個人的に注目していたクルマだ。そのC40を筆頭に、ボルボの最新モデルにたっぷりと乗れるチャンスに恵まれた。
TEXT:鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)

「ボルボといえばBEV」への先陣を切るモデル

C40(左:ボディカラーはオニキスブラック)とXC60 RECHARGE ULTIMATE T6 AWD PLUG-IN HYBRID(右)

ボルボは、2025年にグローバルでBEV販売の割合を50%(日本は45%)、2030年までにグローバルで販売する新車をすべてBEVにする目標を掲げている。急速に進むBEVシフトのなかでボルボが選んだ道だ。

言うまでもなく、かなり高く意欲的な目標である。

ボルボの母国、スウェーデンの電源構成は、水力が40%、原子力が38%、風力が12%、その他の再生可能エネルギーが7%だという。であれば、テールパイプでのゼロエミッションのみならず、トータルでのゼロエミッションも夢ではない。「安全のボルボ」という大看板のほかに「環境のボルボ」という新しい看板を掲げつつあるわけだ。

その尖兵を務めるのがC40だ。冒頭にC40は「個人的に気になるモデル」だと書いた。その理由は、ボルボが作るBEVがどんなクルマなのかということと、そのデザインのユニークネスにあった。他のどのクルマにも似ていない。街で出合ったらつい目で追ってしまう。かつて、同じボルボで「C」を名乗っていたC30というクルマもかなり個性的なデザインで、こちらも大好きなモデルだった。

CMAはPHEV、BEVまで見越したプラットフォームだ。シングルモーター仕様は当初はFWDだったが、今後はRWDになるようだ。

現在のボルボのラインアップで、BEVはC40とXC40 Rechargeの2モデルだ。どちらもCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)というプラットフォームを使う。XC40 Rechargeがマイルドハイブリッドモデルを擁するのに対してC40はBEV専用。外観から、「このクルマ、タダ者じゃない」オーラがあるのはC40の方だ。後席の居住性やラゲッジスペースはXC40 Rechargeの方が広いから、ボルボのBEVを選ぶときに、そちらに流れる人が多いのは無理もない。が、当初XC40 Recharge 3:C40 1、つまり3対1程度の販売比率になると予想していたそうだが、蓋を開けてみたら2:1。C40の個性が、BEVを買う層(マーケティング的に「イノベーター」と「アーリーアダプター」と呼ぶ層)に刺さったということだろう。

今回の試乗車はC40 Recharge Ultimate Twin motor(車両価格759万円)である。2023年モデルのRecharge Plus Single motorモデル(659万円)は早々と完売したそうだ。これまた個人的にはベーシックなSingle motorモデルにも乗ってみたかったのだが。2024年モデルからは後輪駆動のSingle motorモデルのみのラインアップになるそうだ。

福岡空港~長崎平戸往復ドライブ

最高速度は180km/h バッテリー保証は8年または16万kmとなっている。

今回の試乗会のスタート地点は福岡空港のパーキング。その前に短いブリーフィングを受けていた。「最近、ボルボにお乗りになってない方がいたら、ご説明しますよ」と言われたのだが、前に試乗したのが2年前(XC60PHEV T8 AWD Inscription)、まぁ大丈夫かと思って黙っていた。

これがいけなかった。

C40のキーを渡されて、ドアを開けてドライバーズシートに座ったところで、いきなり戸惑う。あるべきものが見当たらない。そう、「起動スイッチ」がないのだ。スタッフの方に「あの~どこに起動スイッチがあるんですか?」って質問するのもかなり間が抜けている。とりあえず、ブレーキペダルを踏みながらシフトレバーを「D」に入れてみた。すると、メーターに「D」が表示されてアクセルをそっと踏むとC40はするするっと走り始めたのだ。おおっ。

C40には起動ボタンはない。ドライバーがキーを持っていればドライバーがクルマに近づきドアを開けてドライバーズシートに座ればスタンバイ状態になる。クルマから降りる時も、パーキングボタンを押してシートベルトを外して外に出れば自動的にオフになる。なるほど(シートにセンサーが仕込まれているそうだ)。

ステリングも本革巻きではない。手触りは上等だ。ロックtoロックは2.7。
C40はレザーフリーを謳うから、シートも本革製ではなく高品質な合成皮革を使う。
最近のBEVによくある多くの表示モードはC40にはない。ここにも好感が持てた。

C40は、徹底的に「シンプルで使い勝手の良いユーザーエクスペリエンス」を目指している。だから(だと思う)、ドライブモード(スポーツ、ノーマル、エコなどの)もないし、ステアリングホイールに回生量を制御するためのパドルもない。メーターもシンプル。シフトレバーで「B」を選べば、ワンペダル(アクセルペダル)でスピードをコントロールできる(完全停止まで)。とにかく、ドライバーは、C40に乗ったらステアリングを握りアクセルペダルを踏めば気持ち良く走らせることができる。これはなかなか新しい感覚だ。

その延長線上にあるのかもしれないが、Googleマップ、Googleアシスタント、Google Playといった「Google搭載」しているので、たいていのことは、「OK Google!」と話しかければ解決してくれる。

「OK Google!」は想像以上に使いやすかった。

「OK Google! 最新ニュースを読み上げて」といえば、各ラジオ局のニュースを読み上げてくれるし、「いまの充電量であと何km走れる?」と訊けば即座に答えてくれる。もちろん、充電スポットも同様だ。これが想像以上に便利なのだ。

福岡市内を抜けて都市高速に乗る。初めての場所でも自身を持ってドライブできるのは、ボディサイズによるところも大きい。全長×全幅×全高:4440mm×1875mm×1595mmは、全幅がややワイドだが、やはりコンパクトで扱いやすい。日産アリア(4595mm×1850mm×1665mm)よりも小さく威圧感がない。ちなみに同じツインモーターのアリアB6 e-4ORCEの価格は720万円だ。

インテリアも新しい。レザーフリーのインテリアは本革の代わりに耐久性とメンテナンスを損なうことなく、上質な合成素材(部分的にリサイクル素材)を使う。カジュアルで上質な仕立ては、SPAを使う60/90シリーズの「上等な北欧家具のような」インテリアとはテイストが異なるが、気を遣うことなく付き合えるのがいい。

気を遣わなくていい、というのは航続距離にも当てはまる。バッテリー容量は78kWhでWLTC一充電走行距離は484kmある。350km程度のドライブなら電池の残量を気にしないでいい。

平戸オランダ商館の前を走り抜けるC40。航続距離は実走行で440km程度。充分だ。車両重量:2150kg 前軸軸重1100kg 後軸軸重1050kg

今回のドライブでは福岡空港から唐津を経由して長崎県平戸まで往復約260kmを走行した。平均電費は17.6kW/km(平均時速48km/h)。フル充電で443km走れる計算だ。WLTCモードの92%、かなり優秀だ。

今回程度のドライブなら充電する必要はないが、C40は充電性能も優秀だ。普通充電は9.6kWまで(一般家庭で48AをBEVの充電に使えるのはレアケースだと思うけれど)、急速充電(CHAdeMO)は150kWまで対応する。残念ながら150kWの急速充電器はまだ数少ないが90kWはだいぶ増えてきた。90kWの急速充電器なら30分間で35〜40kWh程度は充電できるはず。今回の電費を当てはめれば200~230km走れる計算だ。

福岡から長崎平戸までのドライブは快適だった。景色も、道路も、道路状況も素晴らしかった。ボルボといえば、B&Wだと思っていたがC40、XC40はハーマンカードンを採用する。13個のスピーカーが生み出す音楽を楽しみながらストレスなく走れた。

XC40とは大きく違うリヤエンド。BEVらしさを演出する部分でもある。
フロントには当然エンジンはない。そこにはフランク(FRUNK)と呼ぶ収納スペースがある。

そうそう、C40 Recharge Ultimate Twin Motorのパフォーマンスについても触れておこう。前後に204ps/330Nmのモーターを搭載するAWDは、ひとたびアクセルを床まで踏み込めば0-100km/h加速を4.7秒でこなす。そんじょそこらのハイパワーのスポーツカー顔負けの加速だ。しかも、前後重量バランスは前51:後49。バッテリーの重量は500kgだが床下に搭載するので重心も低い。試しに高速道路の料金所で少しだけ踏んでみたが、制限速度まであっという間だった。

バッテリー容量=航続距離、そして価格(補助金の額)がBEVの評価軸だった時代はすでに終わりを告げた。これからのBEVにはコネクティビティや走り味、電費と充電性能、BEVならではデザインと仕掛け、そしてストーリーが求められるようになる。ボルボC40には、それがある。

今度はシングルモーター(後輪駆動)のC40に東京で乗ってみたい。ツインモーターの強烈な加速はもちろん魅力だが、バッテリー容量69kWh、502kmの航続距離のC40も試してみたい。きっと新しいBEV体験ができるだろう。

ボルボC40 Recharge Ultimate Twin Motor
全長×全幅×全高:4440mm×1875mm×1595mm
ホイールベース:2700mm
車重:2150kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
モーター形式:交流同期モーター
モーター型式:
定格出力:160kW
最高出力:F 204ps(150kW)/4350-13900rpm R 204ps(150kW)/4350-13900rpm
最大トルク:F 330Nm/0-4350rpm R 330Nm/0-4350rpm
駆動方式:電子制御AWD
電池:リチウムイオン電池
総電力量:78kWh
総電圧:403V
WLTC交流電力量消費率:188Wh/km
 市街地モード170Wh/km
 郊外モード176Wh/km
 高速道路モード207Wh/km
一充電走行距離WLTC:484km
車両価格:759万円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…