日産伝統の“Zカー”が405psにパワーアップして登場!「日産 フェアレディZ」【最新国産新型車 車種別解説 NISSAN FAIRLADY Z】

生粋の国産スポーツカーの代表と言えるのが、1969年に誕生した「日産フェアレディZ」。その最新モデルが2022年に発表され、長い歴史に新しい命を吹き込んだ。洗練されたスタイリングは、眺めるだけでも気持ちが高まり、乗り込めば少しスリリングながらもクルマとともに駆け抜ける一体感を感じさせる。この名を持つ純エンジンモデルは 最後の世代となる可能性もある。歴史を背負った「Z」の集大成と言える一台だ。
REPORT:河村康彦(本文)/小林秀雄/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽/中野孝次 MODEL:花乃衣美優

S30をイメージさせる外観、怒涛の405psをFRで堪能

2022年日本の自動車シーンに華を添えたニューモデルの名を挙げよ、と言われたら、真っ先に思い浮かべる人が多そうなのはフェアレディZだろう。

エクステリア

初代フェアレディZ(S30型)を彷彿とさせる、伝統的なロングノーズ・ショートデッキフォルム。リヤコンビネーションランプは4代目モデルのZ32型をモチーフとしており、前後スポイラーはグレード別の設定。最小回転半径は5.2m。

確かに、4枚のドアを備えながら飛び抜けた走りのポテンシャルの高さを売り物とする新しいシビックタイプRのようなモデルも登場しているし、ボディはもちろんのことパワーユニットやシャシーもゼロから開発され、文字通りのオールニューモデルとして強いインパクトを放ったCX-60のような存在も強く記憶に残る存在だ。

けれども、走り始める以前に眺めているだけでも気持ちが昂って来る生粋のスポーツカーとして、やはりフェアレディZが刷新されたことは忘れ難い。しかも、昨今はむしろスポーツカーには逆風が吹きまくるとも言える状況。そうした中にあって、世界に視野を広げても、1969年に初代が誕生したという例外的に長い歴史を誇るこのモデルを日産が見捨てることなく新しい命を吹き込んだことに、日本人として誇らしい気持ちすら漂ってくる。

乗降性

着座位置や天井の低さゆえに「乗り降りがしやすい」とは言えないが、これもスポーツカー独特の世界観。乗降時は足元を広げるためスライドを後方にするのがオススメだ。

一時期はコンパクトなリヤシートを設けた〝2by2〞やフルオープンのボディもバリエーションに加えた過去もあるフェアレディZだが、22年4月に発表された最新のモデルでは、純粋な2シーターのみというシンプルな1ボディの構成。トランスミッションにこそ新たに開発をされた9速ステップATと6速MTの2タイプを用意するものの、電動化されることなく純粋な内燃機関として用意をされた心臓部は、これまでスカイライン400Rに積まれて来たVR30DDTT型ユニットで、吸気系にリサーキュレーションバルブの追加など、新たな独自のリファインを加えた、ツインターボ付きの3リッターV型6気筒ガソリンエンジンのみという設定だ。

インストルメントパネル

Zのヘリテージともいえるダッシュボードの三連サブメーターは新型にもしっかり継承された。Z33型や先代は一部がデジタルだったが、新型ではすべてアナログとなり温故知新といえる。

そんな心臓から発せられるオーバー400㎰の最高出力と475Nmという大トルクは、フロントエンジンで後輪駆動という従来同様のレイアウトをもつシャシーで路面に伝達させるには、率直なところ「そろそろ限界が近い」という印象も感じられる。けれども、〝4輪の設地荷重を安定させる〞という操縦安定性のコンセプトにより、少なくともドライの舗装路面上では破綻のないトラクション性能を生み出しているし、いかにもスポーツカーに相応しいちょっとスリリングな走りのテイストを演じていると、むしろ好意的に受け取れるのも事実ではある。

居住性

運転席まわりでなによりお伝えしたい新型フェアレディZのトピックは、フェアレディZとして初めてテレスコピックステア(ハンドル前後調整)が採用されたこと。姿勢の自由度が高まった。
フレームなどは従来型から継承しているシートだが形状は新しく、ショルダー部をはじめサイドサポートも見直されている。着座位置の低さはまさにスポーツカーだ。

スピード性能の高さを理詰めに追い求めたGT-Rに対してこちらは〝ダンスパートナー〞とその走りのキャラクターが表現されるなど、同じブランド発のスポーツモデルが見事に棲み分けられたのは、実は両車の開発の陣頭指揮を執る人物が同じであることに起因をしているのかもしれない。

うれしい装備

おそらく、初めて接する人はリヤハッチのオープナーをなかなか見つけることができないだろう。正解は、日産エンブレムの中。まるで隠しスイッチ。
フルモデルチェンジ発表      22年4月25日
月間販売台数                102台(22年年7月〜12月平均値)
WLTCモード燃費           10.2km/l ※9速AT車

ラゲッジルーム

昨今の世の中の情勢を鑑みれば、もしかするとこうして純エンジンを搭載するものとしては最後の世代ということになってしまうのかもしれないのがこの最新フェアレディZ。たとえそんなことになるとしても人々の記憶に永遠に残るであろう濃密な内容と、いかにもZらしいスタイリッシュさが魅力的な、Zの集大成と言える仕上がりの1台である。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.147「2023 国産新型車のすべて」の再構成です。

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