乗降も車内移動も便利な導線、後席は居住性が高い快適空間

ダイハツは軽自動車を中心に開発するメーカーで、最も販売台数の多い車種がタントだ。2022年の軽自動車販売ランキングでは、N-BOXに続く2位になった。現行型の発売は19年だが、20年と21年は、スペーシアに抜かれて軽自動車の3位だった。

それが22年に2位に浮上したのは、同年10月に行なわれたマイナーチェンジによるところが大きい。フロントマスクや荷室の使い勝手を変更して、外観をSUV風に仕上げた「ファンクロス」も加えている。これらが人気を得て販売順位も繰り上がった。

エクステリア

標準系との違いは大型フロントグリルのほか、前後バンパー、メッキドアハンドルなど。15インチアルミホイールとなるのはターボエンジンの「カスタムRS」だけだ。リヤスポイラーは全車に標準装備。最小回転半径は4.4〜4.7m。

タントは全高が1700㎜を超えるスーパーハイトワゴンゆえ、軽自動車の中では車内が広い。特に注目される特徴は、左側のピラー(柱)を後席側のスライドドアに内蔵したこと。左側の前後のドアを両方ともに開くと、開口幅は1490㎜に達する。

子育て世代のユーザーは、雨天のときなど、ベビーカーを抱えた状態で乗り込めるから便利だ。助手席をあらかじめ前側に寄せておけば、後席のチャイルドシートに子どもを座らせた後、親が降車しないで運転席まで移動可能。高齢者も身体をよじらずに左側から乗り降りできる。

乗降性

このようにタントは、開口幅がワイドな左側のドアから乗車して、運転席まで移動できる導線に重点を置いた。開発者は「車庫の状況によっては、運転するお客さまが右側から乗り降りできない場合もある。このときに車内の移動のしやすさがメリットになる」と述べた。

インストルメントパネル

ブルーのアクセントを入れたキャビンは、カスタムの世界観とターボエンジンのスポーティな走りを表現したもの。メーター面積は広いが表示はシンプルに整理されている。

シートの座り心地は、現行型へフルモデルチェンジしたときに向上している。以前の後席は座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足して、足を前方へ投げ出す座り方だった。今はそこが改善された。

居住性

走行性能も、以前は操舵に対する反応が少し曖昧だったが、現行型は正確になった。その代わり乗り心地は少し硬い。動力性能はスーパーハイトワゴンの平均水準だ。自然吸気は登坂路でパワー不足を感じることもあるが、ターボは最大トルクが1.7倍に高まり、1.0ℓ前後のエンジンを搭載する感覚で運転できる。しかも自然吸気と比べてWLTCモード燃費の悪化率は3〜6%だから、ターボは効率が優れている。

うれしい装備

月間販売台数      10603台 タントファンクロスを含む(22年7月〜12月平均値)
現行型発表         19年7月(マイナーチェンジ22年10月)
WLTCモード燃費       22.7km/l ※「L」「X」のFF車  

ラゲッジルーム

タントは実用的な軽自動車で幅広いユーザーに適するが、特にワイドに開くスライドドアを使いこなせるとメリットも増える。後席の居住性も快適になり、選ぶ価値を高めた。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.148「2023 軽自動車のすべて」の再構成です。

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