【 新型エクストレイルを○△✕で辛口判定】○は日本にマッチしたサイズ感!×はやっぱりアレ…。

2022年9月に登場した新型エクストレイル。スクエアでタフなステイルが人気だが、全車に搭載した第二世代e-POWERと、新システムe-4ORCEの走行性能など先進性も抜かりがない。多彩なシートアレンジと使い勝手が向上した広い荷室を備えるなど、街乗りからアウトドアまで幅広くこなす優等生SUVの長短を○△×で判定してみよう。
TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)/ 平野 陽(HIRANO akio)

新型エクストレイルの長所と短所は?

e-POWER専用モデルとなった新型エクストレイルは、従来の「タフギア」というコンセプトに、上質感や先進性を付加した意欲作だ。4WDに待望の3列シートを設定するなど、注目が集まりがちな電動化技術や4WD技術以外にも見どころは多い。日産の登録車ラインナップを支える新型SUVの長短を○△×で判定してみよう。

【エクストレイルのココが○】日本でストレスなく使えるぎりぎりのサイズ感

新型エクストレイルのボディサイズは、全長4660×全幅1840×全高1720mm、ホイールベースは2705mm。

4代目となるエクストレイルは、三菱アウトランダー同じモジュラープラットフォームである「CMF-C/D」を使っている。ボディサイズは、全長4660×全幅1840×全高1720mm、ホイールベースは2705mm。先代は全長4690×全幅1820×全高1730mm、ホイールベース2705mm。新型は全長が30mm短くなり、全幅は20mmワイドに、全高は10mm低くなっている。

また、先代は、複雑なラインや面を多用したエクステリアだったのに対し、新型は比較的直線やフラットな面構成で、フロントマスクの存在感が高まったこと、ワイドになった全幅もあり、押し出し感も強まっている印象を受ける。全長が短くなっているのに伸びやかさも抱かせるのも美点といえるだろう。

従来モデル以上に大きく立派に見えるが、先代と比べて、全幅+20mm以外は、全長−30mm、全高−10mmとサイズは大きくなっていない。

新型車が年々肥大化している中、全幅の拡大を20mmに抑え、全長を短くしたのも評価できる。1840mmという全幅は、幅1850mm以下の立体駐車場などに入るぎりぎりのサイズで、このサイズならマンションの駐車場に止められるというケースもあるはずだ。さらに、最小回転半径は先代の5.6mから5.4mに小さくなっている。全幅の拡大は、狭い道でのすれ違い、狭い駐車場での乗降時などでは歓迎できないが、最小回転半径も小さくなったことで、日本でも取り回ししやすい大きさに収まっている。

また、可変圧縮比のVCターボと第2世代e-POWERの組み合わせも魅力だ。100%電動駆動らしくスムーズな発進性を備えているだけでなく、リニアに加速していくためとても扱いやすい。第1世代のe-POWER車は、軽快なダッシュ力を意識させる一方で、アクセル操作に対して少しクルマが飛び出すような印象もあった。

エクストレイルは、新型になり欲しい加速感だけ得られるようになっている。また、高速道路の合流時や山道など、鋭い加速が欲しいシーンでは、VCターボの加勢が強まり、内燃機関のような走行フィールが得られる。4WDのe-4ORCEを選べば、雪道だけでなく雨天時の高速道路やワインディングなどでも安定した走りを享受できるのも光る。

先代よりも大幅に質感を高めたインテリアも長所で、先代からの買い替えであればより実感できるはず。センターコンソールに大型のカップホルダーを備えるなど、ポケッテリアが充実しているだけでなく、より使いやすくなっている。

メーターとセンターモニターに大型液晶を採用するなど、インテリアの上質感は満足度が高い。

【エクストレイルのココが△】硬めの足まわりとサードシートの乗降性、居住性、2WDには3列シート車がない。

グレードにより235/60R18、235/55R19タイヤを履くエクストレイルは、足まわりが比較的引き締まっている。路面が荒れている場所では左右に揺すぶられるような乗り味を示す。2列目、3列目も含めて不快ではないものの、もう少しフラットでソフトな乗り心地であれば、理想的といえる動的質感といえそうだ。

上級Gグレードは写真の19インチ(235/55R19)を履く。S、Xグレードは、235/60R18サイズ

また、e-POWERにもサードシートが設定されたのは朗報である一方で、2WD車は2列シート仕様のみとなるのも惜しい。非降雪地域やオフロード、林道などを一切走らないSUVユーザーも多いはずで、街乗り中心であればFFでも何ら不足がないだけに、エマージェンシーシートであっても欲しいというニーズはありそう。

そのサードシートは、乗降性も含めて緊急用として割り切りたい。大人だと体育座りのように膝を抱えて座るような姿勢になるだけでなく、高齢者だと乗り降りだけでもかなり厳しいかもしれない。もちろん、日常的に3列シートも使うのであればセレナが控えているわけだが。

2列シート仕様のラゲッジルームは広くスクエアで使いやすい空間。

【エクストレイルのココが×】e-POWERのみのラインナップと強気の価格。

e-POWERの発電を担う1.5Lの3気筒エンジンは、可変圧縮比ターボを採用する。

×をあえて探せばe-POWERのみの設定になるため、約320万円〜というエントリー価格が若干高めに感じられることだろうか。
エクストレイルの2022年4月〜2023年3月の登録車販売台数でエクストレイルは、約2万2500台(214.8%増)の28位。1つ上の27位には、約2万2800台でSUBARUフォレスターがランクインしている。エクストレイルも2トーンボディカラーの受注を一時停止しているなど、半導体不足などによる供給不足、長い納期待ちなどの可能性もあり、売れ行きを探るのは難しいものの、フルモデルチェンジを受けた新型としては少し物足りない気もする。

海外には、純ガソリンエンジン車やマイルドハイブリッド車も設定されているだけに、より価格面で気軽に乗れる仕様があればユーザーの裾野も広がりそうだ。エクストレイルに限らず、SUVの価格は年々高まっていて、ユーザーの年齢層も価格に合わせるように上昇しているという。

初代や2代目あたりまでは、もっと「若者のクルマ」という印象もあっただけに、価格を抑えられる純ガソリンエンジン車やマイルドハイブリッド車などが選択肢にあってもいいように思える。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…