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エクステリアの変更点は軽め。グリルのデザインにメルセデス流の遊び心を発見。
今回実施されたメルセデスベンツAクラスのマイナーチェンジは2018年2月に世界初公開、同年10月に国内発表となった現行4代目としては初で、デビューからおよそ4年半での化粧直しとなる。
1度目のマイナーチェンジと遅めのタイミングともいえるが、ご覧のように、とくにエクステリアはオーナーでないと変更点を指摘しにくいほどの軽めの内容である。つまり、現行Aクラスのデザインや商品力は市場で好評だったということだ。
まず、エクステリアでは(標準の17インチ、AMGラインパッケージの18インチとも)ホイールデザインが変更された。さらにはヘッドライトとテールライト、リヤバンパーのディフューザー部分の意匠も変わっているという。ただ、ライト類は内部デザインのみだし、ディフューザーも一見しただけではよく分からないほどの形状変更にとどまる。
エクステリアの変更ポイントはもう2つあるが、これらも即座には気づきにくいものの、事前情報があれば“なるほどいわれてみれば……”と思えるレベルではある。
そのひとつはフロントグリル。以前は内部にメッキのドット模様があしらわれていたのだが、新型ではそのドットひとつひとつが、いわゆる“スリーポインテッドスター”になった。これはAクラスのみならず、メルセデス全車に順次取り入れらている共通モチーフだ。
もうひとつはボンネットフード。つるんとフラットでシンプルな形状だった従来に対して、マイナーチェンジ版では2本のプレスラインが入り、全体的にも盛り上がった形状になった。メルセデスではこれを“パワードーム”と呼んでいる。ただ、じつはこれ、完全に新しいデザインではない。従来からAMG銘柄のハイパワーモデルであるA45Sに使われていたもので、今回からそれがAクラス全体に拡大採用されたというのが正解である。
最新のステアリングを装備して、センターコンソールのタッチパッドは廃止。
インテリアも変更部品そのものは少ないのだが、エクステリアと比較すると、変わったことは直感しやすい。ステアリングホイールが最新のものとなり、スポーク部にセンターディスプレイのコントロールスイッチが内蔵された。結果として、これまでセンターコンソールにあったタッチパッドが不要になり、その後方のパームレストともども姿を消したのだ。ドアを開けてフロントシートに座ると、すっきりしたコンソールがいやでも目につく。
タッチパッド跡地には小物トレイが設けられた。それはさほど深くなく、サイズも大きくはないのだが、キーや小さめの財布なら置けるので、実際には意外と便利ではある。また、センターディスプレイ内のMBUX(メルセデスベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)も最新世代のNTG7にアップデートされた。たとえば、純正ナビを搭載すると、前方カメラ映像を表示してバーチャルな矢印を重ねて案内するなどの機能が使えるようになった。
その他、クルマとしてのハードウェアの変更点はとくにアナウンスされていない。AMGをのぞく標準モデルには、ルノーグループとの共同開発となる1.33Lガソリンターボ(A180)と、自社開発の1.95Lディーゼル(A200d)という2種類のエンジンが搭載されるのも従来どおりだ。排ガスとCO2排出規制が厳しい欧州では、マイナーチェンジを機に全車マイルドハイブリッド化されたそうだが、日本仕様はそのかぎりではない。
17インチタイヤ履いて最小回転半径5.0mは、国産車を含めても最優秀。
実際、走りの印象もこれまでと大きく変わらない。最近は燃費のいいディーゼルが人気だそうだが、走りの軽快さ、乗り心地、静粛性のすべてでガソリンのA180のほうが好印象だった。エンジン単体ではディーゼルのほうがトルクが太いが、車重も100kg以上重い。もちろん長距離を走る人にはディーゼルの経済性は捨てがたく、実際に買うとなるとかなり迷うことになるだろう。
乗心地も強いていえばリヤサスペンション以前よりスムーズに動いている気もするが、実際に変わったかどうかは定かではないレベルだ。整備された路面では非常にスムーズな乗り心地を味わわせてくれるいっぽうで、路面が荒れると、乗り心地が強くドシバタしがちなクセは相変わらずである。
乗心地については正直いって、ライバルに対するアドバンテージはあまり感じられないAクラスだが、メルセデス伝統の小回り性能は、このFFレイアウト車でも健在。このクラスで17インチタイヤを履いて5.0mという最小回転半径は、国産車を含めても最優秀の1台といっていい。
一度、この取り回しを味わってしまうと、同じクラスのままだと、なかなか他社に乗り替えられなくなるのも事実だ。