【新型カングーを○△✕で辛口判定】○は走行性能と安全性の大幅向上!×はもっと“デカイ”カングー になったこと!?

13年半ぶりにフルモデルチェンジを受けたルノー・カングー。日本では、ルノー カングーの成功を受けてシトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフター、そしてフィアット・ドブロの導入もアナウンスされるなど人気の高まっているカテゴリーだ。今回のモデルチェンジで新型カングーはどのように進化したのか、長短を○△×で判定してみよう。
TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)/ 中野幸次(NAKANO koji)

新型カングーの長所と短所は?

ルノー・カングーは、欧州では小型商用車という認識が強いが、日本では“遊べるクルマ”としての人気が高い。

ルノー・カングーは欧州ではLCA(ライト・コマーシャル・ビークル)と呼ばれる小型商用車、いわゆる“働くクルマ”として活躍しているが、日本では乗用のMPV(マルチ・パーパス・ビークル)の“遊べるクルマ”としての人気が高く、 「カングー・ジャンボリー」というオーナー&ファンが集結するイベントが開催されるなど、フランス本国も驚くほどの支持を集めているのは周知のとおりだ。

13年半ぶりにフルモデルチェンジを受け、新型にスイッチしてもカングーの本質は、LCA(ライト・コマーシャル・ビークル)であるということ。そこを理解していないと長所も短所も見誤ることになる。

【新型カングーのココが○】走りのクオリティアップと先進安全装備の採用

新型カングーが、初代〜先代のカングーと決定的に異なるのは、走りの面。とくに、静粛性とボディの剛性感は先代と比べても大幅な進化を遂げている。さらに、待望の先進安全装備、ドライバーサポート機能であるADASの全車標準化が朗報だ。

静粛性では、高速走行時の風切り音、ロードノイズがかなり抑えられている印象で、低速域でのこもり音もほとんど感じさせない。ドラミングなどの不快な振動音は、先代もよく抑えられていたが、さらに一段と静かになっている。同時に、ボディの剛性感も一段と高まっていて、ボディサイズが拡大したにもかかわらずハンドリングにも好影響をもたらしている。

最大の魅力は、先述したADASの全車標準化で、ストップ&ゴー付アダプティブクルーズコントロール(再発進が3秒以内なら自動発進する)をはじめ、操舵を支援する車線中央維持機能と車線逸脱機能、衝突被害軽減ブレーキなどを搭載。キャンプやウインタースポーツ、マリンスポーツ、あるいは帰省などのロングドライブでの疲労度軽減に大きく寄与してくれるはずだ。先進安全装備の標準化だけでも先代からの乗り換えなど、購入動機になるケースも出てくるだろう。

ADAS(先進運転支援システム)が全車標準装備され、アダプティブクルーズコントロールなど先進安全機能が利用できるようになった。
車線逸脱機能なども備える。
ナビ画面から先進安全装備の設定を行う。

また、先代と同様に日本向けは、観音開きのダブルバックドアになり、黒い樹脂バンパーを備える仕様も設定されたのも朗報だ。前者は後方や頭上が狭い場所でも開閉しやすく、開閉に力もほとんど要しないのが美点。後者は、LCAらしい道具感(ギヤ感)が好みという人のニーズに引き続き応えている。もちろん、広大でフラットなラゲッジスペースもキャンプなどで多くの荷物を積み込む人にとって、とても使いやすい空間になっている。

リヤハッチは使い勝手の良い「観音開きのダブルバックドア」となった。凹凸のないスクエアなラゲッジスペースは積載性に優れる。

【新型カングーのココが△】硬めの乗り心地とスライドドアの操作性

足まわりは、フランス車から想像するよりも硬めだ。ライバルのベルランゴ、リフターの足がソフトで、大きめのロールを許しながらも、したたかな路面追従性を披露するのに対し、新型カングーは、ライバル車ほどコーナーで傾くことがない反面、路面の凹凸を越えた際のギャップも正確に伝えてくる。最近のルノー車は、ルーテシアなどもそうだが、こうしたやや硬めの乗り味を示す印象を受ける。

ボディの剛性感は向上しているが、LCAの必須条件である広い開口も十分に確保されている。

カングーもそうしたテイストであるものの、既述のように先代から圧倒的に高まっているボディ剛性感の向上により、揺れなどの収束も速く、またボディからミシリという不快な音なども伝わってこない。ベルランゴ/リフターのようなソフト派か、カングーのようなハード派かは好みが分かれそうだが、山道などを走らせて子どものクルマ酔いなどが少ないのは、新型カングーかも!?

【新型カングーのココが×】先代「デカングー」よりもデカイ!拡大されたボディサイズ

冒頭で紹介したように、LCAであるカングーは、新型になってもスライドドアの電動開閉機構はもちろん、リモコン操作やドア下に足を出し入れすることで自動で開閉する機能なども備わらない。もちろん、キーを携行して近づくだけで自動で開いたり、予約ロック機能を備えたりもしていない。スライドドアの操作は、ライバルのベルランゴ/リフターほどコツも力も要らないのは美点だ。ただし、後席に座った小さな子どもがスライドドアを閉めるのは難しいだろうし、インナードアハンドルの位置も遠い(後席よりも後方にある)。
ただし、あくまでLCAと理解して織り込み済みで購入したユーザーにとっては「×」にはならないだろう。

拡大されたボディサイズとキリッとしたフロントマスクは、ユーザーの用途や好みによって賛否が分かれるポイントだ。

新型カングーは、山道や高速道路などでも操縦安定性が高まった一方で、先代の「デカングー」よりもボディサイズがさらに拡大した。新型のボディサイズは、全長4490×全幅1860×全高1810mmで、最小回転半径は5.6m。先代は、全長4215×全幅1830×全高1830mm、最小回転半径は5.1mで、全長は275mmも長くなり、全幅は30mmワイドになっている。幅1850mm制限のあるマンションの駐車場などでは、入庫できないケースもあるはず。また、0.5mも最小回転半径が拡大したことで、先代でぎりぎり取り回しができていた狭い駐車場や住宅地の生活道路などでは持て余すケースも出てきそうだ。

なお、デザインは人により好みが分かれるので蛇足になるが、先代までのデザインは「可愛い」といった声もあり、キリッとしたフロントマスクなども賛否両論あるはずだ。

キーワードで検索する

著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…