新型インプレッサ&クロストレック直球問答 スバリスト以外にも伝えたい進化ポイント【開発主査ロングインタビュー】

新型スバル・インプレッサ
4月中旬に千葉県袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された新型スバル・インプレッサ(プロトタイプ、試乗コースはサーキット)とクロストレック(公道)の試乗会。そこで開発主査の刀祢友久さん(株式会社SUBARU 商品企画本部主査)に話を伺った。聞き手は瀨在仁志さんとMotor-Fan.jp鈴木慎一。
エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター 型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000pm 最大トルク:188Nm/4000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48ℓ モーター:MA1型交流同期モーター 最高出力:13.6ps(10kW) 最大トルク:65Nm トランスミッション:リニアトロニックCVT

MF:燃費に関しては、ライバルたちがものすごい数値になっています。そこはなにか手があるんですか?
刀祢さん:先の話はなかなか言いにくいのですが(笑い)、考えてはいます。いまのe-BOXERの燃費って、けっして悪いわけではありません。16.6km/Lという数字は出せているので。でもライバルが昔のカブのような燃費になっていますから。ただ、そこにもっていくがゆえにいろんなものを捨てていくという判断はまだできていないですね。燃費、出したいんですけど。電動システムのデバイスの差というのは理解しています。我々のそこに対してどう手を入れていくかというのは、お話はできないんですけど、考えてはおります

12Vのマイルドハイブリッドシステム、e-BOXER

刀祢さん:安心して乗れるようにスムーズさ、素直さ、あとエンジン、駆動フィールのしなやかさみたいなものを基本的には優先して今回制御を変えています。そこをある程度犠牲にしていけばいまのシステムでも燃費改善の余地はあるんですね。モーターとコンベンショナルなエンジンシステムを繋いでいかないといけない。そこを燃費がいいからモーターからバスっとエンジンにします、となるとエライことになるわけです。それはやっちゃいけないなと思っています。
瀨在:滑らかで結構でした(笑)

MF:リニアトロニックCVTは、突き詰めるところまでいった感じですか?音以外は。完成形?
刀祢さん:技術としては完成しています。音の話や燃費技術は当然あります。そういうところはまだまだ改良する余地があるとは思いますが、刷新はいまのところは考えていないです。

MF:難しいところですね。これから電動化がどのくらいのスピードで進むのかわからないから、トランスミッションにどのくらい投資すべきなのか……。
刀祢さん:それはエンジンも一緒ですけどね。
MF:スバルは水平対向で最後までいくのですか?
刀祢さん:そうですね。そのあたりもうちのトップは、水平対向でいくってもう宣言しています。それ以前に内燃機関がどうなるのか、という話もありますからね。

じつはハブのサイズ(PCD)を100mmから114mmへ上げているんです!

SGP(スバルグローバルプラットフォーム)のVer.2となった新型のボディ。

瀨在:インプレッサとクロストレックのボディは、技術的には同じと考えていいのですか?
刀祢さん:そうです。基本的には織り込んだものは共通です。

瀨在:ボディの剛性アップのためにウェルドボンドを30mにしたのは、クロストレックもインプレッサも同じってことですね。部分的な補強はどうなんですか? サスペンション周りとか。
刀祢さん:ありますね。やっています。サスペンションの取り付け部というか、溶接して付けているナット類を少し工夫しているんです。細かいからあまりお伝えしてなかったりするんですけど。

瀨在:たとえば、リヤサスのしっかり感は、こういう改良が効いている、というのはありますか? ピッチングが抑えられているのは、なにかジオメトリーに手を加えたりしましたか?
刀祢さん:今回、ウェルドナットのような、サスペンションアッシーの取り付け部に、クルマでいうと脚周りからクルマに伝わる部分を、ほんとうに細かな部品なんですが、突起部にはねじ状のものをつけないとつかない。それを一般的には突起が付いていてそこで接合するようなカタチをするんですが、溶接はするんですね。今回は形状を工夫しました、位置決めは外に置いて、面で力が伝わるようにしてそこで伝わる力が集中して拡がるのを避けていいます。

瀨在:細かいところですが、効きそうですね。
刀祢さん:ええ、こういう細かいところ、大好きなんですよ、スバルは(笑)。でも、本当に効きますね。こういう細かいところが何カ所もあるので、やはり効きます。

瀨在:おおむね、ボディ側ですね。サスペンションに関しては剛性アップということでしょうか? 
刀祢さん:基本はボディ側なんですよ。サスペンションの取り付け部のことをお話しさせていただいたので。サスペンション自体は、剛性を上げると言うよりはしなやかにしてあげるべきという考え方です。その代わりボディはカチッとする。ボディがしなる分をサスペンションに背負わせるな、と

左が前型、右が新型。持ち上げると重さの違いがわかる。

瀨在:タイヤは何kgから400g軽量になったんですか? 何gくらいから効果がでるんですか?
刀祢さん:今回のタイヤは一本、9.9kgから400g軽くしたので9.5kgですね。持ち上げるとわかるレベルで軽くなっています。パターンも変えていて、国内仕様のタイヤなんですが、欧州仕様にも使っています。このあと日本にも入ってくる車外音規制への対応も見据えて、今回音を抑えたタイヤにしています。重さ自体は、タイヤは軽くなっていますが、じつはハブのサイズを100mmから114mmへ上げているので。

瀨在:それ、聞いてないですよ!(笑)大きなことじゃないですか!
刀祢さん:(笑)失礼いたしました。変えているんですよ。剛性にも寄与していますが、どちらかといえば、ブレーキサイズやベアリングサイズを少し信頼性を高めるために上げたので……我々としては信頼性を高める意味合いが強かったので、あまり積極的に言ってなかったのですが。

瀨在:他のメーカーなら、最初に言いますよ!
刀祢さん:もっとちゃんと言った方がよかったですか?(笑)うちは、お客さまのメリットになるのか……前型からホイールを共用できなくなったりするので、そこはご説明をちゃんとするようにしています。スタッドレスを組んでいたホイールが使えないことがありますから。

刀祢友久さん(株式会社SUBARU 商品企画本部主査)

瀨在:走りに良い影響が出ていますよ。もっと言った方がいいですよ。
刀祢さん:次から言います(笑)。

瀨在:でも、ハブのサイズアップで重くなっているんですよね。
刀祢さん:だからタイヤを軽くしました。
瀨在:ああ、そうか! 
刀祢さん:だから、単純に軽くなったとは言いにくいんですよね。

新型インプレッサ(FWD)瀨在氏のサーキットインプレッションはこちら。

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