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グラディエーターの登場でジープブランドの人気はさらに強固に!
ピックアップトラックといえば、アメリカでは1家に1台といわれているほど人気が高く、実際、売り上げの1位~3位までをフォード・Fシリーズ、シボレー・シルバラード、ダッジ・ラムで独占している。その販売台数は、2021年度の統計で年間182万台と驚異的な数字で、アメリカではピックアップトラックが日常の足として親しまれていることがよくわかる。
一方の日本はどうかというと、大きなボディサイズ、むき出しの荷台、室内空間の狭さ(リアシートが直立しいている点も含む)などが仇となり、昔からアメリカン・ピックアップトラックは見向きもされない存在だった。代わりに、オールマイティに使えるワンボックスや、経済的で小回りの利く軽自動車に人気が集中しているのはご存知のとおりだ。
ところが、最近では街中でもハイラックスや米国トヨタのタンドラを見かけることが多くなっており、とりわけハイラックスは、アフターパーツ市場を含めて活況を呈している。
そんな中で満を持して2021年に国内販売を開始したのが、ジープの血統を直接受け継ぐピックアップトラック「ジープ・グラディエーター」だ。ご存知のとおり、「ジープ・ラングラー」は4ドアのアンリミテッドが発売されて以来、人気はうなぎ登りだが、「ジープ・グラディエーター」の登場で、国内におけるジープブランドの人気はさらに強固なものとなった印象だ。
ジープ・グラディエーターのルーツは1963年にまで遡る
「初代ジープ・グラディエーター」が登場したのは、今から60年前の1963年。写真を見るとわかるとおり、ラグジュアリーSUVの草分けといえるワゴニアのプラットフォーム、フロントフェイス、パワートレインなどを流用し、「JEEP GLADIATOR / J-SERIES TRUCK」という名で誕生したフルサイズ・ピックアップトラックだ。しかし、「グラディエーター」の名称は1971年に廃止となり、以後ジープのピックアップトラックは1987年まで「Jシリーズ」と名称を変えて販売されていた。
実は、ジープはJシリーズとは別に、1980年代に一世風靡したチェロキー(XJ型)をベースにした「コマンチ」という小型ピックアップを、1986年から1992年まで販売していた。つまり、これまでジープのピックアップトラックには、ワゴニアとチェロキーの2つの系譜が存在したわけだが、どちらもジープのレジェンド「ウィリスMB」の系譜からは外れている。
しかし、2代目にあたる「新型ジープ・グラディエーター(JT型)」は、「ジープ・ラングラー」をベースにしていることから、ジープの血統を直接受け継ぐサラブレッドの系譜。ジープの長い歴史の中でも、初の正統派クロカン4WDピックアップトラックであるだけに、どのような実力の持ち主なのかとても気になるところだ。
大きいクルマへの憧れからジープ・グラディエーターをチョイス
今回の取材では、「ジープ・グラディエーター RUBICON」にお乗りの日野さんにご協力いただき、各部のチェックや試乗を実施した。
日野さんは、ある日ショッピングモールに展示してあった「ジープ・ラングラー」を見たのがきっかけで惚れ込み、奥さんを説得に苦労しながらも「ジープ・ラングラー(JK型)」でジープ生活をスタート。その後、2011年11月に「ジープ・グラディエーター」が発売されたのを知ると、すぐに契約書にサインしてファーストロットのオーナーになったという自他ともに認めるジープフリークだ。
なぜ、数年しか乗っていない「ジープ・ラングラー(JK型)」から「ジープ・グラディエーター」に乗り換えたのかと聞いてみると、“昔から大きいクルマへの憧れがあったから”と嬉しそうに答えてくれた日野さん。このクルマにゾッコンなのが、表情からひしひしと伝わってきた。
ロングボディ&ロングホイールベースでありながら取り回しは楽チン!
まずは、「ジープ・グラディエーター」でイチバン気になるであろうボディサイズを、ベースとなった「ジープ・ラングラー(JL型)と比較してみよう。
やはり、大きな違いは全長とホイールベース長に表れており、「ジープ・グラディエーター」は全長で730mm、ホイールベースで390mm長くなっている。また、回転半径はラングラーの6.2mに対し、グラディエーターは6.9m、車両総重量はラングラー(Rubicon2.0L)の2,305kgに対し、グラディエーター(Rubicon3.6L)は2,805kgとなっており、ボディサイズに比例して車両スペックも肥大化していることがわかる。
そんな予習をしたうえで、実際に「ジープ・グラディエーター」を走らせてみると、左折時の内輪差だけを注意していれば、ほかは「ジープ・ラングラー」の運転感覚と大差はなく、街中での運転は特にストレスを感じない。また、回転半径は筆者の「ジープ・ラングラー(JK型)」が7.1m、「ジープ・グラディエーター」は6.9mとわずか30cmの違いしかないが、実際に運転してみると、「ジープ・グラディエーター」は回頭性に優れており、取り回しは非常に楽に感じた。
ただし、街中にある一般的な駐車場では、リアのオーバーハングと頭の出っ張り具合を気にしながら停める必要があるだろう。
荷台サイズはハイラックスより、ひとまわり大きく使いやすい
「ジープ・グラディエーター」は、アメリカン・ピックアップトラックといえども全幅が1,894mmと比較的スリムなので、同じようなサイズ/タイプのハイラックスと比較検討されることが多い。とはいえ、「ジープ・グラディエーター」はハイラックスよりも全長で265mm、全幅で75mm、ホイールベースで405mm、全高で50mm大きい。
気になる荷台サイズは、奥行1,531mm、幅最短部1,137mm、幅最長部1,442mm、高さ861mm。ハイラックスより奥行で34mm短いが、横幅は最短部で約30mm、最長部で約60mm長く、高さは381mm高い。注目すべきは高さの違いで、これはクーラーボックスなど、高さのあるものを積むときに大きなアドバンテージになることは確かだ。
気になるリアシートの居住性は想像以上に心地よい
ダブルキャブタイプのピックアップトラックは、ボンネット、キャビン、荷台がシンメトリーな配分になっているので、安定感があってスタイリッシュなフォルムだ。しかも、5名乗車できるので、キャビンスペースは「ジープ・ラングラー」と比べても遜色はない。
ただし、リアシートの背後は荷台との仕切りが迫っているので、背もたれをリクライニングできないところが、ピックアップトラックの唯一のウィークポイント。これはハイラックスでも同じことがいえる。
ところが、「ジープ・グラディエーター」は、レッグスペースがとても広く、座面に角度が付いているので、身長180cmの筆者が乗車しても窮屈な印象は受けない。「ジープ・ラングラー(JK型)」の狭いリアシートと比べると雲泥の差があるのは明白で、リアシートの居住性は想像以上の心地よさだ。
ジープフリークならば、ラングラーとグラディエーターの2台持ちをしたくなる⁉
今回「ジープ・グラディエーター」に接してみて最初に感じたことは、「やはりデカイ!」、そして「カッコイイ!」だ。これは日野さんのクルマがリフトアップされていることもあるが、やはり全長5,600mmのボディサイズは威圧感があり圧倒される。その割に取り回しが楽で、5人乗車+広大な荷台を備えているので、普段使いの使い勝手という点も十分担保されている。
実は、筆者も「ジープ・グラディエーター」が発売されたときは、シンプルに「欲しい!」と思った。もし、このクルマを手に入れられたら、オーバーランドスタイルにしてキャンプなどのアウトドアやオフロード走行を中心に使い、「ジープ・ラングラー(JK型)」は、街乗りや仕事の足としてステーションワゴン的に使う?なんて妄想を抱いてしまった。
やはり、ジープをこよなく愛するジープフリークにとって、「ジープ・ラングラー」と「ジープ・グラディエーター」の2台持ちは究極の夢なのかもしれない。