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2025年に生産終了予定。これが最後のBクラスになるのでは?
メルセデス・ベンツBクラスとは、同じメルセデスの小型ハッチバック/セダンであるAクラスを基本設計を共有しつつ、室内空間をより広くしたハイトワゴンだ。そんなBクラスとAクラスのマイナーチェンジモデルが、この2023年2月に国内発売された。
あらためて振り返ると、通算4代目となる現行Aクラスは2018年2月に世界初公開されて、同年2018年10月に国内発売された。対して、通算3代目となるBクラスの原稿モデルの世界初公開は2018年10月で、国内発売は翌2019年6月だった。
つまり、両車のデビューや発売の時期には8ヵ月のラグがあったのだが、今回のマイナーチェンジは両車同時。それは日本にかぎったことではなく、地元の欧州でも、2023年モデルという名目で昨2022年10月に同時マイナーチェンジが発表されている。
海外メディアなどで伝えられているところでは、AクラスとBクラスの現行モデルはともに2025年に生産を終了して、直接的な後継モデルの用意はないとされる。メルセデスは「2030年に全車をバッテリー電気自動車(BEV)にする」と公言しているが、それと同時にコンパクトカーのラインナップも縮小していくのだそうだ。
で、メルセデスのコンパクトカーはBEV化しやすく、最近の流行であるSUV系(GLAやGLB)に注力する戦略らしい。……といった諸事情を考えると、今回のマイナーチェンジはAクラスやBクラスの“店じまい?”に向けた最後のテコ入れなのかもしれない。
外装の変更点は少なめ、内装は最新ステアリングを装備
そういうこともあってか、Bクラスのマイナーチェンジ内容はAクラスのそれとよく似る。正直いって、オーナーでもないと変更点に気づかないのでは……というくらい小規模なものである。外装ではホイール、ヘッドランプおよびリヤコンビランプの内部デザインのほか、フロントグリルのメッシュ部、リヤバンパーディフューザーなどが、同社の最新モチーフに準じてアップデートされたのみである。
内装は外装に比べると、もう少し変更点が分かりやすい。ステアリングホイールが最新メルセデスらしいダブルスポークのそれに交換された。そこにはセンターディスプレイ用のコントロール機能も追加となっていることもあり、センターコンソールの手元に鎮座していた操作タッチパッドも姿を消した。その跡地にはリモコンキーや小型財布などが置ける小物トレイも設けられている。
エンジンラインナップも変わっておらず、日本仕様は従来同様に、ルノーグループと挙動開発の1.33リッター直噴ガソリンターボの「B180」と1.95リッターターボディーゼルの「B200d」という2機種が導入されている。で、今回試乗したのは後者のディーゼルだ。
個人的には数年ぶりの試乗となるBクラスだが、「なんとなく乗り心地がよくなったかも?」という熟成感を感じなくはないが、前回試乗の記憶との明確な差を指摘できるわけではない。実際、今回はエンジンを含めたメカニズム的な改良は明言されていない。
立体駐車場にも対応。もちろん乗り心地も悪くない。
Bクラスの標準の全高は1565mmで、日本の一般的な立体駐車場(立駐)だと「ぎりぎりアウト」とされる寸法である。そこで先代では、すべての日本仕様に車高の低いスポーツサスペンションを標準装備して、全高を立駐対応の1550mmにおさえていた。しかし、現行型となってからは1565mmの全高を標準としつつ、車高をローダウンするサスペンションをオプションで用意するようになった。
最新Bクラスでもそれは変わらない。ローダウンサスペンションが基本的に「AMGライン」というパッケージオプションに含まれる点も従来どおりだが、その呼称がマイナーチェンジ前の「スポーツコンフォートサスペンション」から「ローダウンコンフォートサスペンション」に変わったのが新しい。モノとしては従来と同じと思われるが、乗り味からすると、新名称のほうが実態に近い感じである。
今回の試乗車もそのローダウンコンフォートサスペンションが装着されていたが、先代からほぼ同じようなパッケージレイアウトで進化してきたこともあり、乗り心地の落としどころは十分に納得できるものがある。路面が荒れると、他社同クラスより強めに揺すられるのはAクラスも含めたこのシリーズのクセではあるが、フラットな舗装路では、前記のように乗り心地は悪くない。よほど乗り心地にうるさい同乗者でなければ、明確に不平不満が出るケースは少ないだろう。
クラスを問わずにSUVが全盛を迎えている今現在、Bクラスのようなハイトワゴンは国内外を含めて急速にシェアを減らしている。冒頭のBクラス生産終了の話もそれと無関係ではない。ただ、あらためてBクラスに乗ると、こういうクルマこそ、日常では一番使いやすいのに……と思うのも事実だ。