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20年以上続くランチアオーナーの集い
ゴールデンウイーク前の日曜日、ランチア・デルタを中心としたグループにお誘いを受け、房総半島へのツーリングに参加させていただくことになった。
当日参加した車両はランチアが「デルタHFインテグラーレ16V」「デルタHFエボルツィオーネⅡジアラ」が2台と「ラリー037」。さらにルノー「5ターボⅡ」という顔ぶれ。1980年代のラリーシーンを彷彿とさせるクルマが連なって走る姿は注目の的。コンビニで休憩していると、まるで撮影会のように周囲に人だかりができてしまった。
ちなみにこのグループ、まだインターネットも今ほどには普及していない1999年ごろに、情報交換のために某掲示板サイトに書き込んでいたオーナーが集まり、そこからオーナーズクラブに発展したもの。しかし、メンバーが一人二人とクルマを乗り換え、オーナーズクラブとしては解散。しかし、今も乗り続けているオーナーやその仲間たちが集まってツーリングなどのイベントを行っている、という集まりなのだ。
みなさんイタリア車に長年乗り続けているだけあって、筋金入りのクルマオタクばかり(褒め言葉です)。
1991年式 ランチア デルタHFインテグラーレ16V
今回のツーリングを企画したのは、赤いインテグラーレ16Vを駆る氷室豊さん。氷室さんがデルタに乗るきっかけとなったのは、なんとあの名作ゲームだった。
SEGAがアーケード用に発売した『セガラリーチャンピオンシップ』通称「セガラリー」はWRCをモチーフとしたアーケード用レースゲームで、ナムコの『リッジレーサー』やSEGAの『バーチャレーシング』『デイトナUSA』に続いて1995年からゲームセンターで稼働。複数台のバケットシートが備えられた筐体でタイムアタックを行うゲームで、3Dと2Dを融合したゲーム画面とリアルなクルマの挙動で人気を博していた。ランチアとトヨタに使用許諾を得て、ゲームにはデルタHFインテグラーレとセリカGT-FOUR(ST205)が登場している。
このゲームにハマったことがきっかけではあるものの、その時にはすでに流面系セリカこと、ST162に乗っていたことから、元々ラリー好きだったことがうかがえる。
このデルタを購入したのは1999年。とある日曜日に競馬場へ行った帰り道、ショップに展示されていた真っ赤なデルタにひと目惚れ。その日の競馬で勝っていたこともあり、勢いでそのまま契約してしまったのだとか。勢いって大切ですね(笑)
グループAそのままの形のクルマに乗れるのが嬉しかったという氷室さん。1989年に登場した16Vモデルはエンジンの出力向上とともに大型バンパーやブリスターフェンダーが装着され、ラリーカーとほぼ同じスタイルが与えられている。
洗練されているとは言えない200psエンジンは、ラグのあるピーキーなドッカンターボ。それを乗りこなすのも楽しいのだとか。
重整備以外はほとんど自分で行うという氷室さん。パーツも自分で海外から個人輸入している。希少車両を維持していくには、オーナー同士のネットワークが重要なようだ。
ランチア デルタHFインテグラーレ16V(1991年式) Spec ifications 全長×全幅×全高:3900mm×1690mm×1360mm ホイールベース:2480mm 車両重量:1250kg エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボ 総排気量:1995cc 最高出力:200ps/5500rpm 最大トルク:31.0kg/3000rpm
1982年式 ランチア ラリー 037
20歳の頃に見たWRCの映像に衝撃を受け、いつか必ず手に入れると心に決めていたというabrse037さん。今から15年前、知り合いからラリー037を手放す人がいることを聞き、前オーナーからこの車両を譲り受けることができた。しかし、当時としても超希少車で値段はかなりの高額だったはず。多少の迷いはあったものの、ここで決めなければ夢は叶わないかもしれないと思い、購入を決意したのだとか。ここ数年で大幅に流通価格が高騰しているので、その決断は大正解だったと言えるだろう。
購入して驚いたのは、作りがかなり雑なこと。ホモロゲーション獲得のために150台のみロードカーとして作られた(残りはコンペティション用)車両とは言え、ボディパネルの取り付けや配線の処理、補機類の固定位置など、市販車では考えられないような部分多く、かなり手直しをして乗り続けているそうだ。
古い上に現存台数が少ない車両だけに、パーツの手配が大変。エンジン自体は多くのFIAT(フィアット)に採用されているユニット、通称「ランプレディ・ユニット」だが、スーパーチャージャーなど補機類は専用のものも多く、ZF製のトランスミッションも他車種でも使われているものではあるが、内部のパーツは専用のものも多く、壊してしまったら代わりを手に入れるのは非常に困難だ。
クルマを動かす時には常に目に見える部分をチェックし、耳を澄まして異音を聞き分け、匂いの変化を気にしているのだとか。手がかかるクルマではあるものの、戦うために生み出されたラリーカー、そのヒストリーは最大の魅力。機能的なトラスフレームを眺めているだけでも、ランチアマニアにとってはこの上ない至福の時だろう。
ランチア ラリー037(1982年式) Spec ifications 全長×全幅×全高:3915mm×1850mm×1254mm ホイールベース:2440mm 車両重量:1170kg エンジン形式:水冷直列4気筒DOHCスーパーチャージャー 総排気量:1995cc 最高出力:205ps/7000rpm 最大トルク:23.0kg/5000rpm