ピックアップトラックも電動化の時代? GMCシエラEVがゴツすぎる

北米で絶大な人気を誇る小型(でかいけど)トラック……通称ピックアップ。V8エンジンを積み、タフで強いアメリカを象徴する存在とも言えるこのカテゴリーにも、しかし電動化の波は押し寄せている。とはいえ2024年に登場するGMCシエラEVは、これまでのBEVのイメージを根底から覆し、アメリカらしさ全開のイカつい風貌。もはやエコなのかなんなのかよくわからない最新ピックアップBEVに注目せよ。

アメリカといえばピックアップだ。車高の低いスポーツカーが大好きな記者も、ピックアップだけは別腹。軽トラから大型トレーラーまで、トラックはタフな男の象徴であり、いつか手に入れたいと思っているのだが、そのなかでも最も男らしさを体現しているのがアメリカンピックアップだろう。

そのエンジンは昔からV8と決まっている。普段はドロドロ言わせながら悠然と歩を進め、いざガスペダルを踏み込めばズドドドドっと巨体を猛然と加速させる。これぞ強きアメリカ。最近は6気筒、そして4気筒もちらほら出てきているようだが、まぁアメリカ人にもいろいろいるわけで、選択肢が増えるのは悪いことではない。

しかし話はここからだ。ここへきて、ついにこのピックアップにも電動化の波が押し寄せてきたのだ。そして「エンジンはV8に限る」などと呑気なことをいっている無責任な好事家と違ってメーカーの動きは速かった。すでに数々のメーカーからBEVのピックアップが発表されているが、そのなかでも決定版になりそうなのが、2024年に発売予定のGMCシエラEVだ。

何をもって決定版と言っているのか? それはデザイン、パフォーマンス、どちらをとっても、従来の価値観からまったく抜け出していないこと! まずは見てほしい、このエクステリアを。

このゴツさ! デカさ! ディティールのデザイン処理こそ現代的だが、相変わらずマッチョな、それもボクサー的ではなくアメフト選手的とでも言うべきか、パンプアップした筋肉はまさに古き佳きアメリカそのもの! 間違いなくジェイソン・ステイサムよりもドゥエイン・ジョンソンのほうが似合う。

新しい価値観を創造する……みたいな陳腐な謳い文句が蔓延る昨今、シエラEVの逞しさにこそむしろ新鮮さを感じてしまう。

動力スペックも圧巻で、最高出力は754ps、最大トルクは1064Nm、最大牽引能力は4309kg(!)だという。これだけのパフォーマンスを発揮するために、いったいどれだけの電力を使うというのか? 航続距離は640kmで、こちらもいったいどれだけ重いバッテリーを積むというのか? もはやこれはエコでもなんでもない。

でもね、いいじゃない、これはこれで。本当にピックアップが必要な郊外の人々はICE版を買うんだろうし、都市部でファッションとしてピックアップに乗りたい人にはこっちの方がいいかも、って話。とりあえずその場では排気ガスを出さないんだし、ガソリンスタンドに行かなくてすむし、静かだし、なんだか存在そのものが面白いし。「こんな馬鹿でかいクルマで都市部を走られたら迷惑じゃないか」という声も聞こえてきそうですが、まぁ国土も道路も広いアメリカさんでの話ですから。いろいろ選択肢があるのはいいことだし、どれが自分にとって正解かを決めるのは我々消費者ということだ。

「世界の自動車オールアルバム 2023年」好評発売中

世界のすべてのクルマがこの一冊に!

海外専用モデルも、日本未導入ブランドも、少量生産車もすべて網羅。

定価:2200円(本体2000円+税10%)

購入はコチラから

キーワードで検索する

著者プロフィール

小泉 建治 近影

小泉 建治

 小学2年生の頃から自動車専門誌を読み始め、4年生からは近所の書店にカー アンド ドライバーを毎号取り…