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公式キャラ「デリ丸。」も話題のデリカミニをストリート試乗
2023年5月25日、三菱の新型・軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」の発売がはじまった。そして、今回ようやくナンバーがついたデリカミニと初対面、公道での走りを確認する機会に恵まれた。
思い返せば、デリカミニが初公開されたのは2023年1月に開催された東京オートサロンだった。非常にインパクトがあり、デリカミニというネーミングにピッタリすぎるスタイリングから、ひと目で「売れる!」と感じたクルマ好きは多いのではないだろうか。
市場で売れ筋となっている軽スーパーハイトワゴンのニューモデルというのではなく、”かっこかわいい相棒”という独自のポジションでユーザーへアピールすることのできる、まったく新しいモデルの誕生と感じたのは自分だけではないだろう。
その後、何度も取材する機会があり、あらためて個性的なスタイリングを眺めていると「なんだかキャラクターみたいな目(ヘッドライト)だなあ」と感じていた。
そして、いざデリカミニの発売となり、テレビCMがはじまると、まさに『デリ丸。』という公式キャラクターが設定されるという展開に驚いてみたり、我が意を得たりを感じてみたり、というのが試乗の前段階の個人的な印象だった。
そんなデリカミニを、ついに公道試乗できるなればワクワクは止まらない。4WDターボの上級グレード「T Premium」が用意された相棒だ。
デリカという名前にふさわしい走りを求め、4WDだけは大径タイヤを与えられ、また4WD制御もデリカ・ファミリーらしい仕上げになっているという。はたして、軽スーパーハイトワゴンでも”デリカらしい”走りは実現できているのか。
まずはジャリが敷き詰められたキャンプ場の連絡路で乗ってみることにした。写真からもわかるように試乗当日は雨で路面は濡れている状態。非常に滑りやすいジャリ道で、デリカミニの4WDターボは、どんな走りを見せてくれるのだろうか。
オフロードでの気持ちよさには専用4WD制御が貢献
正直に第一印象からいうと「どこか頼りない」というものだった。それもそのはず、タイヤがオフロード仕様ではなかったのだ。
デリカミニといっても現代的な燃費性能や静粛性は重要なわけで、大径タイヤの銘柄はダンロップ・エナセーブEC300+が選ばれていた。オフロード走行を意識したタイプよりも、濡れたジャリ道で滑りやすいのは当然で、このタイヤ銘柄ではオフロード的な走りは期待できない…と一瞬思ってしまったが、アクセルを軽く踏み込んでみると印象はガラリと変わる。
デリカミニに合わせて見直したという4WD制御は、通常の軽4WDのスタンバイタイプに比べて、後輪へのトルク配分がわずかながら積極的になっている。つまりアクセル操作により後輪の蹴り出し力が感じられる仕上げになっている。
結果としてクロスオーバーSUV的な世界観、ワイルドな走り味を実現している。サスペンションについても、4WDは専用ショックアブソーバーを与えられているため、ガツンとなりそうな段差を受け止める能力も高い。
そうした面に気付くと、急に安心感、信頼性が生まれてくる。デリカミニは、軽スーパーハイトワゴンでありながら、デリカという名前にふさわしい走りのキャラクターを持っているのだ。
最低地上高は上がったが安定感は失っていない
一般論として、オフロード性能を重視したモデルでは、サスペンションが伸び縮みするストローク性能を高め、また地面とのクリアランスを稼ぐために最低地上高を確保する傾向にある。
デリカミニでも4WDは専用ショックアブソーバーを採用しているし、大径タイヤの採用などにより最低地上高は160mmと、FFグレードが155mmなのに対して、わずかながらクリアランスを増やしている。
ただし、最低地上高を稼ぎ、ストロークの長い脚というのは、ロールが大きくなってしまい、オンロード(舗装路)での走りを犠牲にしてしまう傾向にもある。はたして、デリカミニのオンロード走行はどうなのだろうか。
結論からいえば、デリカミニの4WDはオンロードでの走りも気持ちよかった。
大径タイヤはエアボリュームが増えるために、基本的な支える能力が高まる。そのため横Gがずっと外輪にかかるような長いコーナーであってもタイヤはしっかりと1tを超えるボディを支え続けてくれる。さらにストロークを確保したサスペンションのおかげでイン側のタイヤ接地感も高く、いわゆる背高クルマにありがちなフラフラとする感覚は皆無。総じてスタビリティの高さを実感できるフィールに仕上がっていた。
今回の試乗では高速道路を走ることはできなかったが、このフィーリングからすると横風にも強そうで、遠くのキャンプ場まで高速移動するような使い方であっても、往復のストレスが高まるということはなさそうだ。デリカミニの上級グレードには、高速道路の同一車線運転支援機能「MI-PILOT(マイパイロット)」が標準装備されているので、なおさら高速道路が気持ちよく走れるだろう。
なお、タイヤサイズの大径化により、フロントタイヤのステアリング切れ角を抑制する必要が出てきたという。最小回転半径のカタログスペックをみると、FFのNAエンジン車が4.5m、FFターボ車が4.8mとなっているのに対して、4WDは全車が4.9mとなっている。
数字だけ見ると、軽自動車としては小回りが利かないと思ってしまうが、そもそもボディサイズが小さいこともあって、今回の試乗では小回り性の悪さが気になるシーンはなかった。
雨の中での静粛性も十分で、ウィークポイントは見つからなかったというのが現時点での正直な感想だ。今回チェックすることができなかった高速巡行性や燃費性能などについては、あらためてロングの試乗をする機会があれば、お伝えしたいと思う。
グレード構成&ボディカラー
デリカミニのグレード構成は、エンジンがターボとNAの2タイプで、いずれもマイルドハイブリッド仕様。トランスミッションはCVTとなり、全グレードにFFと4WDの駆動方式が用意される。グレード構成と、各メーカー希望小売価格は次のようになっている。
T Premium:FF 207万4600円/4WD 223万8500円
T:FF 188万1000円/4WD 209万2200円
G Premium:FF 198万5500円/4WD 214万9400円
G:FF 180万4000円/4WD 201万5200円
「T」がターボエンジン、「G」が自然吸気エンジンとなり、「Premium」が付くグレードには前述した高速道路の同一車線運転支援機能「MI-PILOT(マイパイロット)」や、両側電動スライドドアを標準装備としているのが、装備差として目立つところだ。
初期受注では、「T Premium」が65%を占め、さらに全体として過半数が4WDを選んでいるという。デリカらしい力強い走りや豪華装備を求めているオーナーが多いといえそうだ。
ボディカラーは、2トーン6色、モノトーン6色の全12色をラインナップ。その構成は以下の通りで、軽スーパーハイトワゴンのスタンダードというよりも、レジャーシーンに似合いそうな「デリカらしい」色味が中心となる。デリカミニのコンセプトに合わせて、新色アッシュグリーンメタリックを新開発するなどボディカラーにもこだわっている。
2トーン(6色)
・アッシュグリーンメタリック/ブラックマイカ
・ナチュラルアイボリーメタリック/ブラックマイカ
・ホワイトパール/ブラックマイカ
・サンシャインオレンジメタリック/ブラックマイカ
・レッドメタリック/ブラックマイカ
・ライトニングブルーマイカ/ブラックマイカ
モノトーン(6色)
・アッシュグリーンメタリック
・ナチュラルアイボリーメタリック
・ホワイトパール
・ブラックマイカ
・チタニウムグレーメタリック
・ミストブルーパール
車両スペック
デリカミニ「T Premium」(4WD) 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1830mm ホイールベース:2495mm 車両重量:1060kg 排気量:659cc エンジン:直列3気筒DOHCガソリンターボ 最高出力:64PS(47kW)/5600rpm 最大トルク:100Nm/2400~4000rpm モーター:交流同期電動機 モーター最高出力:2.0kW モーター最大トルク:40Nm 駆動方式:4WD トランスミッション:CVT WLTCモード燃費:17.5km/L 最小回転半径:4.9m タイヤサイズ:165/60R15 乗車定員:4名 メーカー希望小売価格:223万8500円