ステップワゴン・モデューロX 走りの質感の高さには脱帽だがベース車由来の弱点は覆せず。わくわくゲートが不要なら“待ち”

モデル末期のホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロXは“買い”か“待ち”か?

ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX
ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX
近々の販売終了またはフルモデルチェンジが確実視されている、モデル末期の車種をピックアップ。その車種がいま“買い”か“待ち”かを検証する。

今回採り上げるのは、ホンダの5ナンバーサイズ背高ミニバン「ステップワゴン」をホンダアクセスがトータルチューンしたコンプリートモデル「モデューロX」のe:HEV(2モーターハイブリッド)・FF車。テスト車両は2020年1月の一部改良前のモデルで、オプションの「10インチプレミアムインターナビ」(35万5300円)などを装着していた。

ホンダアクセス本社のある埼玉県新座市から東京湾アクアラインを経て千葉県木更津市までを往復する約300kmのルートで試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業、ホンダアクセス
ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX
ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX

ここまでは辛めの評価が続いていたが、実際に走り出すと、その印象は一変する。ホンダアクセス本社周辺の荒れに荒れた一般道でも、大小問わず凹凸をキレイにいなし、車体の姿勢変化をすぐに収束させるため、乗り心地は絶品だ。

テスト車両は205/60R16 92Hのグッドイヤー・エフィシェントグリップを装着
テスト車両は205/60R16 92Hのグッドイヤー・エフィシェントグリップを装着

だがヒビ割れた路面ではロードノイズが大きくなり、e:HEVの静けさも相まってその盛大さが際立ってしまう。それを初めて体感した際、「家族や友達を乗せて長距離ドライブに出掛けた時、このうるささはちょっと辛いかもしれない」と、ふと思わずにはいられなかった。


フロントサスペンションはストラット式。白のダンパーと赤のスプリングがモデューロサスペンションの証
フロントサスペンションはストラット式。白のダンパーと赤のスプリングがモデューロサスペンションの証
FF車のリヤサスペンションはトーションビーム式。ガソリンターボ車にのみ設定される4WD車はド・ディオン式
FF車のリヤサスペンションはトーションビーム式。ガソリンターボ車にのみ設定される4WD車はド・ディオン式

やがて首都高速道路に入ると、いよいよその本領を発揮し始める。低中速コーナーが続くセクションでは、ステアリングの操作に対してリニアかつ粘るように車体がロールする。それでいて操舵レスポンスはクイックで、とはいえ轍に簡単に進路を乱されるようなシビアさは微塵もない。

空気の流れを真っ直ぐに整えるフィンを備えた専用フロントバンパー
空気の流れを真っ直ぐに整えるフィンを備えた専用フロントバンパー

モデューロX専用のリアロアーディフューザーを装着
モデューロX専用のリアロアーディフューザーを装着

テールゲートスポイラーもモデューロX専用形状
テールゲートスポイラーもモデューロX専用形状

そして湾岸線から東京湾アクアラインにかけての、ほぼ直線で速度域が高いものの海風が直撃するため背の高いクルマに厳しい区間でも、多少の風はものともせず、まさに矢のように直進し続けてくれる。

だから、全幅より全高の方が高い腰高なプロポーションであることを全く感じさせず、常に安心して走り続けられるのだ。このしなやかさと絶大な安心感こそ、モデューロXならではの「実効空力」と、それを前提としたサスペンションセッティングの妙だろう。


LFA型2.0L直4エンジンと2モーター式ハイブリッドシステムを搭載
LFA型2.0L直4エンジンと2モーター式ハイブリッドシステムを搭載

オデッセイと共通のLFA型2.0L直4エンジンと2モーター式ハイブリッドシステムは、オデッセイより100kg軽い1830kgの車重に対して全く不足なく、アクアラインで向かい風に見舞われても問題なく加速できる力強さを備えている。そして、高速道路を中心に約300km走行した後の燃費は16.4km/Lと、荒天続きだった今回の走行環境を考慮すれば充分に満足できる結果だった。

だが、「モデル末期のホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロXは“買い”か“待ち”か?」、その答えは残念ながら“待ち”となる。

ことハンドリングや乗り心地、安定性に関しては申し分ないものの、内装の質感や操作性に関しては、最新のモデューロXと比べると少なからず見劣りする。またベース車に由来する静粛性の低さやシートのフィット感の悪さに関しては如何ともし難く、これがわくわくゲートに匹敵する、競合他車に販売台数で大差を付けられている理由の一つだろうと推察せざるを得なかった。

そしてこのステップワゴンモデューロX、ホンダアクセス広報によれば、モデューロXシリーズとしては累計販売台数が最も多いとのこと。となれば六代目となる新型ステップワゴンにもモデルライフ途中で設定される可能性が高く、それを楽しみに待ちたい所だ。

しかしわくわくゲート、あるいはFF車で1840mmもの高い全高がもたらす広い室内高がどうしても必要であれば、話は変わってくる。

現行五代目ステップワゴンは2021年末に予定されている埼玉製作所狭山完成車工場の閉鎖に伴い生産を終了する見込みだが、2022年5月デビューが有力視されている六代目では、生産拠点は埼玉製作所寄居完成車工場に移管されるため、かつての三代目のように全高が再び下げられる模様。またわくわくゲートが廃止され、通常の縦開きバックドアのみとなる可能性が濃厚だ。

となれば、新車が欲しいなら現行五代目のうちに注文するより他にない。しかも、9月27日時点でガソリンターボ車の受注はストップしており、e:HEVを残すのみとなっている。フルモデルチェンジはまだ少し先だが、現行五代目を新車で買える期間はごくわずかだろう。


ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX
■ホンダ・ステップワゴンe:HEVモデューロX(FF)
全長×全幅×全高:4760×1695×1840mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:1830kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1993cc
エンジン最高出力:107kW(145ps)/7000rpm
エンジン最大トルク:175Nm/4000rpm
モーター最高出力:135kW(184ps)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315Nm/0-2000rpm
トランスミッション:--
サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:205/60R16 92H
乗車定員:7名
WLTCモード燃費:20.0km/L
市街地モード燃費:18.8km/L
郊外モード燃費:21.7km/L
高速道路モード燃費:19.5km/L
車両価格:409万4200円

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著者プロフィール

遠藤正賢 近影

遠藤正賢

1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。2001年早稲田大学商学部卒業後、自動車ディーラー営業、国産新車誌編…