モノだけでなく、電気も届けられる新時代の商用車へ

小型商用EV “ELEMO”(エレモ)を7月24日より販売開始!

EVの一般化によって新たな動きとなるのが、聞いたことがないような新規の車が登場してくることだ。それだけ参入の自由度も増したということになるのだが、さらに機敏に新しい発想を提案できることにもなってくる。ここに紹介するELEMOもそんな1台だ。
発表されたELEMO。荷台の仕様によって3種類を設定。手前がボックス、奥がピックアップ。

HW ELECTRO(HWE)社(東京都江東区)は2021年7月24日より小型商用EVのエレモの販売を開始すると発表した。このエレモは北米のセントロ(CENNTRO)社のメトロ(Metro) を日本向けに改良した電気トラックだ。

注目は、L3910〜3925mm、W1380〜1450mm、H1905mmというサイズだ。日本の規格からすると軽自動車より細くて長い。このコンパクトなボディで完全EVという点が魅力だ。しかし全長が軽自動車の規格を超えることから、小型商用車としての登録となる。しかし、現在このモデルを改良した軽商用自動車バージョンを開発中で、年内には日本市場に投入できる予定であるという。

キャビンはフラットベッド、ピックアップ、ボックスの3種類のボディを用意。これらの荷台は、任意に取り外したり交換することもできるという。ボルトによる固定式で、4人の作業員により10分以内での脱着が可能という簡便さも魅力だ。

こちらはフラットベッド仕様。いずれもリヤエンドが樹脂製バンパーとなり、独特の表情を見せる。

仕様はバッテリーの容量によって200と120の2種類が用意される。数字はそれぞれ一充電あたりの空荷での想定航続可能距離(km)と符合している。

もともとメトロはシティデリバリー用として位置付けられており、サイズによってメトロと少し大きいメトロIIがある。エレモはコンパクト版のメトロをベースとしたもので、日本仕様として右ハンドルとするだけでなく1本式ワイパーの作動軸の位置も右ハンドル用に変更されている。さらにHWEのロゴをバッジとしてフロントセンターに据えている。

愛らしいフェイスとHWEの大きなロゴが印象的。

デザイン的にも魅力的で、商用車の印象を変えるようなおっとりとした表情がいい。ウインドウから延長されるフロントパネル内にヘッドランプとウインカー、デイライトを収めるレイアウトがポイント。ルーフもブラックアウトとされることから、ウインドウ面の大きな印象となり見た目の開放感がある。

先端中央が突出したスタイル。寸法にシビアな日本ではありえない造形が面白い。
価格 ELEMO 200:275-330万円/ELEMO 120:218.9-273.9万円(税込) 

 さらに日本の軽や小型トラックでは絶対ありえないのが、フロントバンパーの中央が突出した形。サイズに厳しい日本では生まれてこないような、個性的な顔立ちだ。またこのバンパーもブラックとなるが、リヤデッキ後方の大きなバンパーとともに全体を引き締めることに加え、デッキの一体感が生まれている。

 動力とバッテリーなど動力部分は床下のホイールベース部分に集約され、サイドパネルで覆われる。こうしたサイドカバーも日本のトラックにあまりないつくりでもある。

荷台下をボディスキンでカバーすることで、日本の軽トラとは違う「クルマ感」が醸し出されている。

そして今回は、発表会とともに限られた場所ではあるが試乗することができたので、その印象もまとめておきたい。

ドア、ボディパネルは樹脂製となるためか、ドアの開閉はやや力がいるもので、特に閉める時は普通の車のように手を離してバン! と閉めるというよりは、手を添えてぎゅっと押し込んで閉める作法が必要だ。

座面&アイポイントは日本の軽トラと同じ程度の高さ。ウインカーは輸入車同様に左側となる。

運転席は確かに軽自動車よりも左右幅が狭い印象ながら、操作はシンプル。ただしレバーに関しては、ウインカーが左でワイパーは右と輸入車と同じだ。

ブレーキペダルを踏んでキーを回してONにし、センターコンソールのダイヤルをDに回す。あとはサイドブレーキを解除してアクセルを踏むだけ。

加速は最大トルク120Nmのポテンシャルが効いて、発進時から重さは感じさせない。積載状態でも、かなり楽な印象はあるものと思われる。しかし、現状ではブレーキが少し重い印象で、開発側もこの点は理解しており調整中とのこと。

ステアリングはパワーアシスト付きなので、重いという印象はないが少しゆるさが感じられる。日本には軽自動車という高度に発展したスモールカーが存在するが、それらと比較しては少しかわいそうかもしれない。あくまでもシティデリバリーのためのトランスポーテーションという位置付けのものであると理解したいところだ。

さて最後に、このエレモの最大の特徴について触れておきたいのだが、それは荷物の運搬とともに電気を運べるという点だ。

その機能としては、冷蔵、冷凍庫を自らのバッテリーで稼働させることができる。また調理に使うことも可能で、移動屋台の可能性も大きい。食材は冷やしておけるという点でも利便性は高い。さらに理髪設備に用いることも視野に入れられるという。そうなれば、それ以外に給湯による風呂の提供も可能だろう。

電気を持ち運ぶという点から、さらなるエレモの新たな可能性が見えてくる。

こうしてみると、災害時の食事、生活に関わる多くをいくつかのエレモが派遣されることで担当できる可能性も増えてくる。これまで内燃機関では難しかった点が、大きな可能性として提案できる。また、2022年後半には、ラダーフレームをベースとしたオリジナルモデル(軽トラ、軽バン)を市場投入の予定ということで、より日本市場に合致したモデルが登場するだろう。

HWE 蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)社長(右)とJFTD花キューピット澤田將信
会長。花キューピットではエレモを用いた生花通信配達の実証実験を行なう。生花
の管理にはボックス内の正確な温度、湿度の管理が欠かせない。その点でもIoTに
紐づくEVのメリットが活かせる。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…