速さを生み出す秘密は軽さにアリ!【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

軽くて速い、スズキ・アルトワークス|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.8

現行スズキ・アルトワークスのカタログ
現行である5代目アルトワークスのカタログ(第一版)※一部画像はターボRS
現行の5代目アルトワークスが販売されて早5年以上。ターボRS、そして36ワークスが完成したのも、優れたアルト系のプラットフォームがあってこそだ。今回はそのボディの骨格となる各部の特徴と、それが36ワークスのキャラクターにどう活かされているのかを探っていこう。
人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第8回。

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

今回はVol.7からの続きで、現行である5代目アルトワークスについて探っていこう。今回はボディ・安全装備編。

アルトワークスのカタログと広報資料メモ

15年の沈黙を破り5代目スズキ・アルトワークスが帰ってきた|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.7

2015年12月24日、アルトでのワークスの名が復活。4代目の販売終了から15年余り、突如5代目ワークスが発表され、その日から早くも5年以上が経った。ここで改めてスズキが5代目に籠めた(もう、あえて“籠めた”を使いたい!)WORKSの魂を見ていこう。 人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第7回。 TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)

ホイールベースは2460mm、広~い室内

36ワークスの車両寸法は平成10年10月施行、新規格と称される現行の軽自動車規格に沿ってつくられている。車両の基部は、最新の軽量高剛性プラットフォームHEARTECT(ハーテクト)と、新軽量衝撃吸収ボディ・テクトで成り立っている。スポーツ性、快適性、安全性の3要素を満たす骨格である。フォルムは、Aピラーが後方へ湾曲しながら傾斜する。ドアが大きい。

そして目立つのは4つのタイヤの置かれかた。36ワークスでは全長3395mm、全幅1475mm、全高1500mmが車両寸法の最大値になる。そのなかで全長はホイールベースが2460mmを占め、4代目ワークスより100mm長い。
2代目ワークスでの手法よろしく、限りなく四隅にタイヤを配置し、室内空間がいっぱいに確保されているのだ。そのぶんオーバーハングが強度に短く、フロントマスクは切り立つような精悍な顔つきとなっている。うん、空気の壁を威圧で押しのけ力強く推進する、36ワークスの走りっぷりが浮かんでくるね。

タイヤの中心はドライブシャフトの位置。ドライブシャフトはミッション後部から左右に伸びる。エンジンは車両前方に載り、エンジンルームも最小のスペースだ。※一部画像はターボRS

FFの車重はライバル車より100kg以上も軽い

カタログ初版の第一キャッチは、「いま、マニュアルに乗る」。第二が「速さを生み出す秘密は、軽さにあった」。
このキャッチに誇張はなく、FFの5MTは車重が670kgである。これは4代目、3代目の車重と等しい。4WDの5MTは720kgで、これも先代までと大差ナシ。5AGSではFFが690kg、4WDが740kgだ。ともにまったく重くない。

36ワークスに限らずだが、現行のアルト系は軽量化が徹底されている。ボディ、エンジン、駆動系の至る箇所、そして樹脂部品の多様など。たとえばフロントフェンダー、エンジンのカムカバーとインマニは樹脂製だ。ちなみに標準車のアルト系では、最軽量が610kg。
そんなわけで36ワークスは、国産軽自動車のスポーティモデルのなかでは車重が断然軽い。S660、コペン、N-ONE RSとの比較は性格の違い、車両の構造差から異論もあるかもしれないが、世のカテゴリー上は同種といえるだろう。搭載されるターボエンジンの特性も似る。
そう考えれば、とくにFFの5MT・5AGSはライバル車より百数十キロも軽い。競争すれば、絶対の強みになる。弾丸加速を見せつける1台なのだ。

エンジンは低回転から力強く、専用5MT・5AGSの特性も相まって、軽量ボディゆえの速さが実感できる。高速巡行もエンジン回転数はやや高まるが、結構走りはスイスイだ

ボディカラーは入れ替わりながら4色展開

最新だけに予防安全の支援装備が充実

現行の5代目アルトワークスは、最新モデルだけに予防安全の支援装備が充実する。

5MTと5AGSの共通項目が、ESP®車両走行安定補助システムだ。トラクションコントロール、ABS、横滑り防止装置等を統合する機能である。走行状況に応じて、繊細な電式制御を利かせる。
たとえばスタビリティ制御。カーブを曲がるクルマの動きが不安定な場合に、進路を修正する。左カーブの旋回がアンダーステアの傾向にあれば、運転者はハンドルを切った状態だから、制御がエンジントルクを下げながら内輪のリヤ(左後輪)に自動ブレーキ、アクティブブレーキをかけ、フロントが旋回方向を目指すようにする。逆にオーバーステアではスピンなどの抑制に、フロントの外輪(右前輪)にアクティブブレーキをかけ、フロントの向きを外側へ徐々にずらす。

頼もしい機能だが、あくまで日常域での安全運転の手助け。ドラテク向上装置じゃないので、そこはよく理解しよう。

5AGS車はセーフティサポートシステムが多数。2018年12月の一部仕様変更(右)でデュアルセンサーブレーキサポート、車線のはみだし予防、先行車発進お知らせなど機能を拡充
現行5代目/HA36Sアルト ワークス 2015年12月~
仕様・諸元(一部)
 

  駆動方式:2WD(FF)
      :フルタイム4WD
  型式(FF):DBA-HA36S(2015年12月~2020年10月)/4BA-HA36S(2020年10月~)
    (4WD):DBA-HA36S(2015年12月~2020年10月)/4BA-HA36S(2020年10月~)
  エンジン:R06A型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
  ボア×ストローク:64.0mm×68.2mm
  総排気量:658cc
  トランスミッション:5MT/5AGS
  全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1500mm 
  ホイールベース:2460mm
  トレッド:フロント1295mm/リヤ1300mm(4WD 1290mm)
  車両重量:2WD 5MT 670㎏/2WD 5AGS 690㎏/4WD 5MT 720㎏/4WD 5AGS 740㎏の間隔調整?
  乗車定員:4名
  タイヤ:165/55R15
  車両規格:平成10年10月施行 現行新規格
  ※各数値はHA36S初期モデルを掲載。2WD(FF)の5AGSは新車販売を終了
現行スズキ アルトワークスのエンジンルーム

現行スズキ・アルトワークスに積まれるエンジンは、ドコが凄い?|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.9

現行のアルト ツインカムターボワークス。DOHC4バルブ3気筒ターボエンジンの搭載は、初代から続く伝統だ。5代目は既存の改良型R06Aにチューニングを加えて専用化。トランスミッションにも専用チューンを施し、スズキの誇るエンジン特性と見事に連携させた。 人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第9回。 TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI) PHOTO:REV SPEED / SWIFT MAGAZINE with ALTO WORKS

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著者プロフィール

スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…