LIBERTY[リバティ]にSUMO[スモー]って一体どんなクルマ? クロストレックやアウトバックだけじゃない! 日本とは異なるスバルの車名

レガシィはオーストラリアでは「リバティ」の車名で販売された。
スバルに限らず、国内で販売している車種で海外へ輸出しているモデルの中には、国内とは異なる車名を付けているモデルが多数存在する。現在国内でも人気の高いスバル・クロストレックは、実質XVの後継モデルにあたるが、実はGP型XVは海外の名称がサブネームの「XVクロストレック」から2016年モデルから車名が「クロストレック」へとなっていたことをご存じだろうか? 国内ではお馴染みの車名も、海外では覚えづらい名前だったり、既に海外で登録されている名前だったりと理由は様々だが、今回はそんな国内外で名前が異なるスバル車を紹介しよう。

「レガシィ」は戦争を想起させるのでNG!
LIBERTY[リバティ]

オーストラリアで販売された六代目レガシィ=リバティ(BN型)。

スバルのフラッグシップモデルとして、国内では「レガシィ」の名前でお馴染みのモデル。海外ではオーストラリアでレガシィという名前が戦争を想起させるとして、「リバティ(=自由)」という名称を採用した。
BC/BF型と呼ばれる初代モデルからBN型と呼ばれる六代目まで販売されていたが、北米で販売されている七代目レガシィセダンに該当するBW型は豪州では販売されていない。

二代目レガシィ=リバティ(BD型)。もちろんワゴン(BG型)もラインナップされた。
三代目レガシィ=リバティ(BH型)。セダン(BE型)もあり。
四代目レガシィ=リバティ(BL型/BP型)。
五代目レガシィ=リバティ(BM型/BR型)。

国内と同じくオーストラリアもセダン市場縮小に伴い、SUVであるアウトバック(現行BT型)のみが継続して販売されている。ちなみに、国内では「レガシィ・アウトバック」という車名だが、北米やオーストラリアなどの海外では「スバル ・アウトバック」という車名で販売されている。

スバルオーストラリアで販売されるスバル・アウトバックの現行モデル(BT型)。

2008年から2018年まで国内で販売されていたエクシーガも「リバティ・エクシーガ」として、リバティの派生モデルという位置づけでラインアップされていたが、残念ながら現時点ではスバル リバティという車名は完全に消滅している。

オーストラリアではエクシーガもリバティの派生モデルという位置付けで「リバティ・エクシーガ」として販売されていた。
北米で販売される七代目レガシィ(BW型)はオーストラリアでは販売されておらず、リバティの車名は途絶えている。

日本では「グランドワゴン」から「ランカスター」を経て統一
OUTBACK[アウトバック]

1994年に二代目レガシィの派生モデルとして北米エリアで販売されたアウトバックだが、1995年の国内導入に際しては「グランドワゴン」の名称が与えられた。当時の日本は未だワゴンブームの真っ只中にあり、商品展開的に「ワゴン」の名称は外せなかった。ちなみに、インプレッサ・スポーツ「ワゴン」も同様のネーミング理由だとか。

二代目(BD型/BG型)レガシィから設定された、ツーリングワゴンをベースとしたSUVスタイルのモデルがレガシィグランドワゴンだ。年次改良でグランドワゴン ランカスターというサブネームが与えられ、三代目(BH型)レガシィシリーズでは、レガシィ・ランカスターとしてレガシィシリーズの一角を担うようになる。

1997年のマイナーチェンジでサブネームをグランドワゴンから「ランカスター」にチェンジ。
三代目レガシィに設定されたランカスター(BH型)。2000年には6気筒モデルも追加された。

実はこのグランドワゴン、ランカスターは、海外ではアウトバックという名称で販売され、後に国内外統一の車名として四代目レガシィからはアウトバックとなった。ちなみにグランドワゴンはその名の通り、ツーリングワゴンがベースとなっていたのだが、海外では4ドアのアウトバックセダンも販売。呼称がアウトバックとして統一されたBL/BP型まで海外ではセダンが設定されていた。

四代目レガシィ(BL/BP型)から国内外の名称が「アウトバック」に統一された。
海外で販売されたアウトバックのセダンモデル。二代目(BD型)から四代目(BL型)までラインナップされた。写真は三代目(BE型)。

アウトバックは北米や豪州以外にも欧州や中国など様々な国で販売されているグローバル車として展開されているのだが、興味深いのは同じアウトバックでも仕向け地によってエンジンラインナップが大幅に異なる点。特に先代アウトバック(BS型)では、国内はFB25型水平対向4気筒2.5L自然吸気 エンジンのみのラインアップであったのに対し、北米やオーストラリアにはEZ36型水平対向6気筒自然吸気エンジンの設定があったほか、ヨーロッパではEE20型水平対向4気筒ディーゼルターボエンジン、中国仕様にはFA20型水平対向4気筒直噴ターボエンジンが設定され、アウトバックだけで4種類ものパワーユニットが世界中に存在したのだ。もちろんトランスミッションもリニアトロニックだけでなく、国によっては6MT仕様も設定されていた。

インプレッサにもアウトバック? 国内では特別仕様車の「グラベルEX」
OUTBACK SPORT[アウトバックスポーツ]

1995年にインプレッサスポーツワゴンに追加されたSUVテイストモデルが「グラベルEX」。

ちなみに、海外ではインプレッサをベースとしたアウトバックスポーツというモデルも販売されており、初代(GF型)は国内でもグラベルEX(エックス)という名称の特別仕様車として登場したことも覚えている方は多いだろう。
海外では二代目(GG型)、三代目(GH型)と三世代にわたり設定されていたが、GP型からはXV(海外ではXVクロストレック)へとバトンタッチした。

グラベルEXは国内では特別仕様車だったが、海外では「アウトバックスポーツ」の名称でカタログモデルとして販売されていた。
初代(GF型)から二代目(GG型)、三代目(GH型)とラインナップされた。二代目はインプレッサのマイナーチェンジと合わせてライト形状も変わっていく(写真は2001年の丸目)。

インプレッサの派生モデルから「XV」として独立し世界共通名称へ
CROSSTREK[クロストレック]

2022年9月にワールドプレミアされたクロストレックは、現在国内でも人気の高いコンパクトSUVだ。前述のとおり、GP型「SUBARU XV」の輸出名は、当初「XV COSSTREK」であり、改良時に「SUBARU CROSSTREK」となり、二代目SUBARU XVも海外ではCROSSTREKとして販売されていた。

北米仕様のクロストレック(MY2024)。

現行クロストレックが国内登場時に世界共通の名称として統一化が図られたことも話題となった。国内ではSUBARU XV登場前に、三代目インプレッサ5ドアをベースとした「インプレッサXV」が存在したが、この時の国外の名称はアウトバックの章でも紹介した通り、アウトバックスポーツとなっており、独立した車種というよりは、まだ小型のアウトバックといった印象が海外では強かった。

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なぜか頑なに「アルシオーネ」の名前は使わない
XT[エックスティー]/VORTEX[ヴォーテックス]

1985年に国内でスバル初のスペシャルティクーペとして誕生した「アルシオーネ」は、海外では「SUBARU XT(Coupe)」として発売。国内モデルでVRターボと呼ばれたEA82型1.8L水平対向4気筒ターボエンジンに4WDを組み合わせたモデルは「XT(Coupe) 4WD TURBO」の名で販売された。

EA82型1.8L水平対向4気筒SOHCエンジンにパートタイム4WDを組み合わせたアルシオーネVRターボ。1985年発売。

1987年のマイナーチェンジで国内でアルシオーネVXとして設定されたER27型2.7L水平対向6気筒エンジンを搭載したモデルがXT6として登場している。XTというネーミングはアルシオーネの輸出名で初めて使われたものだが、のちに国内仕様のターボエンジンを搭載したSUVモデル(フォレスターXT、レガシィアウトバック2.5XT)として使用されていることの方が耳にした人も多いだろう。なお、1987年のマイナーチェンジで名称からクーペがなくなりXTのみになっている。

ER27型2.7L水平対向SOHC6気筒エンジンを搭載したアルシオーネVX。1987年のマイナーチェンジで追加された。海外ではXT6。

また、オーストラリアとニュージーランドではXTではなく「SUBARU VORTEX(ヴォーテックス)」の名称で販売された。
ちなみに、後継モデルのアルシオーネSVXの輸出名は「SUBARU SVX」となっていた。二世代とも海外では「アルシオーネ」の名称を使っていないのが面白い。

アルシオーネ(XT/VORTEX)の後継モデルでアルシオーネSVXは1991年発売。海外名は「SUBARU SVX」。

早すぎたミニマム7シーター「ドミンゴ」は海外でも売っていた!
SUMO[スモー]/LIBERO[リベロ]/COLUMBUSS[コロンブス]

変わりダネの輸出名といえば、イギリスで販売されていた「SUBARU SUMO(スバル・スモー)」。国内ではドミンゴの名前で知られる、軽自動車のサンバーをベースとした7人乗り1BOXだ。

1983年にサンバーをベースに1.0L直列3気筒エンジンを搭載し、7人名乗車のキャブオーバーワゴンとしてリリースされたドミンゴ。
1986年にマイナーチェンジ。エンジンを1.2Lに拡大したフルタイム4WD車も設定された。サンバーのフルモデルチェンジ後も販売を継続。
1994年に11年ぶりにフルモデルチェンジ。1998年に軽自動車規格のサイズ拡大を受けて生産終了となり、ドミンゴは二代で終了した。

イギリスでは相撲を想起させるSUMOのネーミングが与えられていたが、ヨーロッパの大陸側では「SUBARU LIBERO(リベロ)」、スウェーデンでは「SUBARU COLUMBUSS(コロンブス)」と、様々な名称を得たモデルである。
特にヨーロッパ名(イギリスを除く)のリベロはイタリア語で自由を意味する名前で、冒頭で紹介したリバティと同じ意味合いであることも面白い。

ヨーロッパでSUMOやLIBERO、COLUMBUSSと呼ばれたドミンゴの初代モデル。
初代に続き二代目も引き続きヨーロッパで販売された。国内モデルとは異なり、明るめな色もあるカラーラインナップとなっていた。
ベースの軽自動車とほとんど変わらないボディサイズに、ヨーロッパの人の体格で7人が乗れたのだろうか?

また、当時WRCではライバル関係であった三菱が国内で販売していたステーションワゴン「三菱リベロ」と同じ名称であったことも偶然とはいえ面白いポイントだ。

1992年にミラージュワゴン、ランサーワゴンの後継として登場し、2001年まで販売された。ベースは四代目ランサー/ミラージュ(CD型)で、輸出名は「ランサーコンビ」とランサーの名称を残している。

最近では世界で車名を統一する傾向にあるものの、まだまだ国内外で異なる名前を持つモデルも多く存在する。愛車のルーツをたどる際に、海外事情にも目を向けてみてはいかがだろう。

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著者プロフィール

井元 貴幸 近影

井元 貴幸

母親いわくママと発した次の言葉はパパではなくブーブだったという生まれながらのクルマ好き。中学生の時…