空へ、宇宙へ ホンダの新領域へチャレンジ! eVTOL(電動垂直離着陸機)や小型ロケットの開発を発表!

Honda eVTOLの模型
ホンダが、現在取り組んでいる技術開発の方向性を発信した。それは、クルマだけでなく、空(飛行機)、宇宙(小型ロケット)、そして分身ロボットといった分野である。
ホンダが開発を進めるeVTOL

ホンダは、経営基盤となる「既存事業の盤石化」を図りつつ、「環境負荷ゼロ社会」と「交通事故ゼロ社会」の実現に徹底してこだわり、さらには「新領域へのチャレンジ」にも取り組んでいくと発表した。

現在、ホンダの研究開発を担う本田技術研究所は、環境と安全の先行技術の研究に加え、モビリティの可能性を“3次元”や、時間や空間の制限に縛られない“4次元”、さらには宇宙へと拡大し人々の時間や空間に新たな価値をもたらす独創的な技術研究を進めている。

こうした取り組みを可能とするのが、燃焼・電動・制御・ロボティクス技術といったホンダが培ってきたコア技術だ。

まずは、「空へ」だ。

空の移動を身近にする「Honda eVTOL」(電動垂直離着陸機)

コア技術を活かした「Honda eVTOL」

ホンダは、HondaJetで実現した空の移動をさらに身近なものとするため、さまざまなコア技術を生かして、eVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing:電動垂直離着陸機)の開発に取り組んでいる。

eVTOLは、電動化技術によるクリーン性はもとより、シンプルな構造で推進を分散化することで、民間旅客機同等の安全性を保ちつつ、比較的小径なローターで、街中で離着陸しても騒音とならない静粛性を実現できることから、開発競争が活発化している分野。一方で、オール電化によるeVTOLには、バッテリー容量による航続距離の課題があり、その現実的な稼働範囲は都市内移動に留まっている。

「モビリティエコシステム」イメージ

これに対しホンダは、より航続距離が長く使い勝手の良い都市間移動を実現するため、電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドによるHonda eVTOLの開発に取り組み、市場拡大が見込まれる都市間移動の実現を目指す。

Honda eVTOLには、電動化技術のほかにも、燃焼や空力、制御技術といった、これまでホンダがさまざまな領域で培った技術を活かすという。

Honda eVTOL風洞テスト
Honda eVTOLガスタービンエンジン
Honda eVTOLガスタービンエンジン
Honda eVTOLガスタービンエンジン
Honda eVTOLの模型
Honda eVTOLの模型

宇宙領域への挑戦

空の次は宇宙だ。

ホンダは、宇宙領域をコア技術を生かした“夢”と“可能性”への新たなチャレンジの場ととらえている。燃焼・誘導制御技術、燃料電池技術、ロボティクス技術といったホンダならではのコア技術を生かし、宇宙という究極の環境で新たな価値の創造を目指して技術開発に取り組んでいくという。

月面でのチャレンジ

月面での循環型再生エネルギーシステムのシステム概念図。

人の活動圏を地球外へと拡大する機運が国際的に高まるなか、ホンダは月面における活動や開発の拡大を目指す取り組みを始めている。

月面には水が存在すると言われており、その利用によるさまざまな可能性が注目されている。ホンダはこれまで培ってきた燃料電池技術と高圧水電解技術を生かした月面での循環型再生エネルギーシステムの構築を目指し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を行なっている。

高圧水電解システム
月面での循環型再生エネルギーシステムの活用イメージ図。

ホンダが持つ燃料電池技術と高圧水電解技術を組み合わせ、再生可能エネルギー由来の電力を使い、水を電気分解して水素・酸素として貯蔵し、その水素と酸素から燃料電池技術を用いて発電し、電力の供給が可能となる。また、酸素は月面に滞在する人の居住用としても、水素はロケットの燃料としても、それぞれ活用可能であるなど、ホンダは循環型再生エネルギーシステムの構築により、さまざまな有人活動への貢献を目指している。

また、宇宙飛行士の危険を最小化したり、地球に居ながらにして、月に居るかのような体験を可能としたりする月面での遠隔操作ロボットにおいては、アバターロボットで開発中の多指ハンドや、AIサポート遠隔操縦機能、衝突軽減のための高応答トルク制御技術など、ホンダのコア技術の多くの応用が見込まれる。これらはJAXAの宇宙探査イノベーションハブにおける研究テーマとして採択され、今年2月に共同研究を開始している。

コア技術を応用した再使用型の小型ロケット

JAXAが描く日本の国際宇宙探査ロードマップ(2021年6月14日時点)

ホンダは、さまざまな製品開発を通じて培った燃焼技術や制御技術などのコア技術を生かして小型ロケットを造りたい、という若手技術者の発案をきっかけに、小型ロケットの開発に取り組む。人工衛星は、温暖化や異常気象といった地球環境を観測したり、モビリティのコネクテッド化に有効な広域通信を可能としたりするなど、さまざまな用途に欠かせないものだが、その打ち上げ需要に対してロケットが不足しているのが

現状だ。こうした課題を解決するために、ホンダは、低軌道向け小型人工衛星の打ち上げを目標として小型ロケットの開発を行っている。また、自動運転技術の開発などを通じて培った制御・誘導技術を生かし、打ち上げ後にロケットの一部を着陸させ、再使用することも想定した研究を行なっている。

バーチャルな移動を可能にする「Hondaアバターロボット」(分身ロボ)

Honda アバターロボット 多指ハンド

ホンダは次世代に向けて、時間や空間の制約に縛られず、バーチャルに自己能力を拡張するHondaアバターロボットの実用化に向けた開発を進めている。

人の分身となるアバターロボットの最大のメリットは、リモートでありながら、あたかもその場にいるようにモノを扱えるなど、自身がその場にいなくても作業や体験ができることだ。そうしたアバターロボット実現の核となるのが、ホンダが強みとするロボティクス技術による多指ハンドと独自のAIサポート遠隔操縦機能だ。多指ハンドを通じて人のために作られた道具を使いこなし、AIのサポートにより、複雑な作業をより直感的な操作で早く正確に行なえることを目指している。

Honda アバターロボット 缶のプルタブ開け

これまでのロボティクス研究を通じて長年の課題であった、小さなものをつまむなどの繊細さと、固い蓋を開けるなどの力強さを「人並みに」両立できる手を多指ハンドとして実現する。また、多指ハンドが一連の動作のなかで物をスムーズに把持したり、細やかな力の制御で道具を操ったりできるようにホンダ独自のAIサポート遠隔操縦機能の進化にも取り組む。

ホンダは現在、ハードウェアの小型化とともに「把持する」「操る」といった動作のさらなる精度の向上に取り組んでおり、2030年代の実用化を視野に、2023年度中のHonda アバターロボットの技術実証開始を目指している。

Honda アバターロボット

株式会社本田技術研究所 大津 啓司代表取締役社長のコメント

「今回お伝えした取り組みは、いずれも新領域へのチャレンジとなりますが、技術で人びとの生活を豊かにしたいというHondaの想いは不変です。そして創業以来、こうしたチャレンジの源泉となっているのは、独創的な技術やアイデアを生み出す人材そのものです。今後も新たなモビリティの創造を通じて移動にまつわる価値を変え、社会をより良く変えていくことを目指します」

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