ヒョンデのハイパフォーマンスモデルに冠される「N」は、これまでエラントラ、コナなどに存在していた。今回、電気自動車のIONIQ5にも初のオール電動「Nモデル」が誕生したことになる。
ちなみに、現在WRCに参戦しているマシンは「ヒョンデi20 N Rally1」だ。
IONIQ 5 Nは、標準モデルのE-GMP（Electrified-Global Modular Platform）にNのモータースポーツで培われた技術を組み合わせ、Nの電動化「Rolling Labs」（RM20e、RN22e、N Vision 74など）の専門知識を活用することで、EVの高性能を最大限に引き出した。
Nの3つの性能の柱である「Corner Rascal」、「Racetrack Capability」、「Everyday Sportscar」を満たしている。NブランドはIONIQ 5 Nを皮切りに、ガソリン、電気、水素を問わず、Nの特徴である楽しいドライビング体験を提供することを目指すという。
IONIQ5 Nのボディは、42箇所の追加溶接と2.1mの追加接着剤によって大幅に強化されている。モーターとバッテリーのマウントは強化され、フロントとリヤのサブフレームは横方向の剛性を高めた。WRCにインスパイアされたインテグレーテッド・ドライブ・アクスル（IDA）をフロントとリヤに採用し、21インチ鍛造アルミホイールとともにばね下質量を低減しながら、より強大なモータートルクに耐えられるようにした。
Nモデルはプロポーションの変更により、標準のIONIQ 5との違いを際立たせている。全高は20mm低くなり、ワイドタイヤを装着するために全幅は50mm広くなり、ディフューザーが目立つために全長は80mm長くなった。フロントには、機能的なメッシュとエアカーテン、エアフラップを備えたNマスクのグラフィックが施され、冷却効果を高めている。バンパー下部にはリップ・スポイラーが装着される。ブラックのフロントバンパーカバー下部のEV N専用「ルミナスオレンジ」は、サイドスカートにも続き、IONIQ 5 Nにレーストラック仕様の外観を与えている。
リヤでは、目立つN専用のウィングタイプのスポイラーが、オレンジ色のアクセントが付いたリヤディフューザーとエアアウトレットとともに、空気の流れをコントロールして最適な空力性能をサポートしアグレッシブなスタイリングをさらに際立たせている。スポイラーには、N専用の三角形のHMSLブレーキライトが組み込まれている。リヤハッチの下には、チェッカーフラッグのリフレクターグラフィックが施されたN専用のブラックバンパーカバーが装着されている。
ステアリングレスポンスとフィードバックを向上させるため、IONIQ 5 Nのステアリングコラムを強化し、剛性を向上させた。さらに、ステアリングレシオを高め、トルクフィードバックを向上させた専用チューニングのN R-MDPS（ラックマウント・モーター・ドライブ・パワーステアリング）システムを採用した。
Nペダルは、EV特有の重量とサイズに対応するソリューションとして開発され、同時にi20 N WRCに見られる応答性の高いハンドリング特性を実現を目指している。このインテリジェントなソフトウェア機能は、IONIQ 5 Nに搭載され、ターンイン時の挙動とスロットル感度を向上させるように設計されている。Nペダルは、i-Pedalの回生ブレーキシステムで使用されている同様の技術を応用し、エネルギー効率よりも高速で爽快なコーナリングを優先する。減速力を利用することで、アグレッシブな体重移動が生まれ、よりシャープなコーナー進入を実現する。
Nドリフトオプティマイザーは、リアルタイムの入力に対応する複数の車両制御をバランスさせることで、ドリフトアングルの維持をサポートする。また、トルクキックドリフト機能を搭載し、後輪駆動のICE車のクラッチキック動作をシミュレートすることで、より即座にドリフトを開始することが可能だ。これは高度な電子制御技術の賜物である。N トルク・ディストリビューションは、フロントとリヤのトルク配分を完全に可変とし、以下のように調整できる。
リヤアクスルのe-LSD（電子制御リミテッド・スリップ・デファレンシャル）は、コーナリング性能とコントロール性を最適化。ホイールセンサーの追加と、ダンパーサイズの拡大による幅広い減衰力容量により、電子制御サスペンションの性能の幅が広がっている。
IONIQ 5 Nは、過酷なレーストラック条件下でのサーマルマネージメントに新たな基準を打ち立てた。競合他社に比べ、IONIQ 5 Nは、オーバーヒートによる最大パワーの低下という熱によるパワー劣化に対して高い耐性を誇るという。
バッテリー熱管理システムを強化し、冷却面積を拡大、モーターオイルクーラーとバッテリー冷却器を改良。バッテリーとモーター用に独立したラジエーターは、サーキットでの激しい走行前や走行中の性能低下に対するIONIQ 5 Nの耐性を最大限に高める。
ドライバーは走行前にNバッテリー・プリコンディショニングを利用し、短時間のフルパワー走行が可能な「ドラッグ」モードか、より多くの周回をこなすために可能な限りバッテリー温度を低くする「トラック」モードのいずれかを選択することで、バッテリーセルを最も電力効率の高い温度に最適化することができる。
エブリデイスポーツカーにシフトフィールとエモーショナルな楽しさをもたらす最先端テクノロジー日常的なスポーツカーとして、IONIQ 5 Nは、N e-shiftとN Active Sound +の統合により、魅力的なシフトフィールとエモーショナルなドライビングを実現する。N e-shiftは、パワーデリバリーとシフトフィーリングをコントロールする感覚を提供し、N Active Sound +は、近未来的なEVサウンドだけでなく、ICEライクなエンジンサウンドとエキゾーストサウンドを提供することで、より魅力的な運転体験を提供する。ICE車のような揺れ感やサウンドをシミュレートすることで、ドライビングの楽しさや歓びを高めるという。
多くのパフォーマンス愛好家は、多くのEVのハンドル操作におけるドライバー・フィードバックの不足を口にしてきた。そのため、ヒョンデのNエンジニアは、より大きなドライバー・フィードバック、ひいてはIONIQ 5 Nのより正確なドライバー・コントロールを実現するために、N eshiftとN Active Sound +機能を開発した。
N e-shiftは、内燃機関（ICE）N車の8速DCTをシミュレートする。モーターのトルク出力を制御することで変速をシミュレートし、シフト間の揺れ感をシミュレートする。その結果、従来のEVよりもICEに近い、より正確でインタラクティブな運転体験を提供できるという。
Nアクティブサウンド＋は、N e-shiftと組み合わせることで、ドライバーにより魅力的でエキサイティングな感覚体験をもたらし、EVのドライビング体験を向上させる。10個のスピーカーシステム（内部8個、外部2個）を内蔵し、3つの異なるサウンドテーマを提供する。
「Ignition」はNの2.0Tエンジンのサウンドをシミュレートし、「Evolution」はRN22eにインスパイアされた特徴的な高性能サウンドを提供する。「Supersonic」は、双発戦闘機からインスパイアされたユニークなコンセプトで、コーナリング中に音量を変化させることができる。Nアクティブ・サウンド+の目的は、ドライバーにパワーを測定するための音響的な基準を提供することである。
IONIQ5 N 主要諸元 全長×全幅×全高：4715mm×1940mm×1585mm ホイールベース：3000mm モーター出力 フロント：166kW（226ps） リヤ：282kW（383ps） システム出力：448kW（609ps） バッテリー容量：84kWh 充電速度：10%から80%まで18分 タイヤ：ピレリP-ZERO 275/35R21 ブレーキ：フロント4ピストン400mm リヤ1ピストン360mm 0-100km/h 3.4秒（ブースト） 最高速度：260km/h