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ルノー独自のフルハイブリッド=E-TECH
E-TECHフルハイブリッドはルノー独自のハイブリッドシステムだ。エンジンは、ルノーとアライアンスパートナーを組む日産が開発したHR16DE型、1.6L直列4気筒自然吸気ガソリンを搭載。最高出力は69kW/5600rpm、最大トルクは148Nm/3600rpmだ。
Eモーターと呼ぶ走行用モーターは最高出力36kW/1677-6000rpm、最大トルク205Nm/200-1677rpmを発生。HSG(ハイボルテージ・スターター&ジェネレーター)は最高出力15kW/2865-10000rpm、最大トルク50Nm/200-2865rpmを発生する。エンジンとふたつのモーターをつなげるのが、「F1で培ったノウハウを活用し、ルノーが独自で開発した」電子制御ドッグクラッチマルチモードATだ。
AT(オートマチックトランスミッション)なので自動変速であることに違いはないが、E-TECHフルハイブリッドのトランスミッションは一般的なATのようにプラネタリーギヤ(遊星歯車)を用いた構成ではなく、MT(マニュアルトランスミッション)の機構をベースに自動変速化しているのが特徴だ。一般的なMTは変速ショックをやわらげるシンクロナイザー機構(回転同期機構)を用いるが、E-TECHフルハイブリッドはダイレクト感と伝達効率を重視し、レーシングカーで適用例の多いドッグクラッチを採用した。
そのままでは変速時にショックと音が生じてしまうので、HSGで回転を同期させ、ショックレスな変速(つまりスムーズ)を実現している。エンジン側は4速、Eモーターは2速の変速段を持つ。エンジンとEモーター、それぞれ効率のいい領域を使うためだ。燃費と走りのためである。総電力量が1.2kWhという、国産の同カテゴリーのハイブリッド車よりも容量の大きなモーターを搭載するのもE-TECHフルハイブリッドの特徴で、モーターのみによるEV走行頻度の高さに寄与している。
ルノー・ルーテシア E-TECH ENGINEERD
2022年の発売後、E-TECHフルハイブリッドのオーナーを調査したところ、気に入っているポイントの1位はアルカナ、キャプチャー、ルーテシアとも「ハイブリッドシステム」という結果になった。以前は「外観デザイン」が1位の定番だったという(今回の調査では、アルカナ、キャプチャーで2位、ルーテシアは「車のサイズ」に次いで3位だった)。
それほど、ルノー独自のハイブリッドシステムがオーナーに感動を与えているということだろう。アルカナ、キャプチャーE-TECHフルハイブリッドのWLTCモード燃費は22.8km/Lで、輸入車SUVナンバーワン。ルーテシアE-TECHフルハイブリッドのWLTCモード燃費は25.2km/Lで、輸入車全体でナンバーワンの燃費である。筆者は今回の試乗も含めて何度かE-TECHフルハイブリッドに触れているが、とくに気を使わなくてもWLTCモード燃費を上回る数字を叩き出すクルマという実感を抱いている。それに、ドライバーを気持ち良くする術を心得たかのような、絶妙なモーターアシストの使い方が印象的だ。
「エンジニアード」ってなんだ?
ルノー・アルカナ E-TECH ENGINEERD
今回設定された「エンジニアード」は、ルノーのコーポレートカラーであるイエローをモチーフにしたウォームチタニウムカラーの差し色をエクステリアとインテリアの要所に施したのが特徴。アルカナ、ルーテシアとも、F1のフロントウイングに範をとったフロントバンパー、サイドプロテクションモール、エキゾーストフィニッシャーがウォームチタニウムカラーとなっている。ブラックアウトされたフロントグリルや前後エンブレムとの相性が良く、精悍なイメージだ。
インテリアにもウォームチタニウムカラーのラインやステッチが効果的にあしらわれている。アルカナのシートは専用レザー&スエード調で、そこにウォームチタニウムカラーのステッチが入る。ルーテシアのシートは専用ファブリック×レザー調で、やはりウォームチタニウムカラーのステッチがアクセントになっている。
また、アルカナ、ルーテシアともBOSEサウンドシステムを標準で装備するのが特徴。加えてルーテシアは、駐車時に周囲の状況を俯瞰映像で確認できる360度カメラシステムを標準で装備する。
E-TECHフルハイブリッドの走りを味わうのはほぼ1年ぶりだったが、魅力は少しも薄れておらず、相変わらず好印象だった。発進は必ずEV走行になるし、エンジンを始動させずにEV走行で粘る距離/時間は長く、国産のハイブリッド車に比べて電動車味が濃厚なのが印象的だ。走り方によってはエンジンを主体にし、モーターが要所でアシストする走りに転ずるが、加速時のグッと背中を押すモーターのアシストがツボ押しのように効いて気持ちいい。
自動変速化したMTにモーターのアシストを加えた構造ともいえるパワートレーンのおかげで、走りにダイレクト感があり、日常的な走りですらクルマとの対話が楽しい。燃費を意識せずに走っても、「こんなに?」と予想以上の数字を示してくれるのも、E-TECHフルハイブリッドの魅力だ。今回の新種には「エンジニアード」の名称が加わっているが、デザインとムードの良さに技術的な特色と魅力が組み合わさっており、クルマの内容にぴったりなネーミングである。
アルカナにはボディダンパーが
今回の試乗機会ではアルカナにだけ、今夏に発売予定のCOX BODYDAMPERが装着されていた(全国のルノー正規ディーラーで販売予定)。中身はヤマハのパフォーマンスダンパー(PD)で、車両への適合をCOXが行なったということだ。
サスペンションを構成するダンパーが車輪の動きを減衰させるのに対し、BODYDAMPERはボディの振動を減衰させる。そのことにより、走りの“味”が変わる。乗り心地が良くなるし、車内が静かになるし、ステアリングを切ったときの反応が良くなり、修正舵が少なくなる。ウソだと思うかもしれないが、筆者は別の機会に同じクルマでPDのあり・なしを比較試乗しており、タイヤのひと転がりでわかる効果を体感済みだ。
できれば、新車時はBODYDAMPERなしで乗り出し、6ヵ月点検か12ヵ月点検のタイミングでBODYDAMPER装着し、違いを体感してもらいたい。販売店の駐車場から道路に出る際に段差を越えるだけで、効果の大きさに感激するはずだ。BODYDAMPERを設定するなんてルノー・ジャポン、目の付けどころがいいじゃないかと感心しきりである。
ルノー・アルカナ E-TECH ENGINEERDのスペック
ルノー・アルカナ E-TECH ENGINEERD 全長×全幅×全高:4570mm×1820mm×1580mm ホイールベース:2720mm 車重:1470kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:H4M型 排気量:1597cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6 mm 圧縮比: 最高出力:94ps(69kW)/5600pm 最大トルク:148Nm/3600rpm 燃料供給:PFI 燃料:プレミアム 燃料タンク:50ℓ メインモーター:5DH型交流同期モーター 最高出力:49ps(36kW)/1677-6000rpm 最大トルク:205Nm/200-1677rpm サブモーター:3DA型交流同期モーター 最高出力:20ps(15kW)/2865-10000rpm 最大トルク:50Nm/200-2865rpm 燃費:WLTCモード 22.8km/ℓ 市街地モード19.6km/ℓ 郊外モード:24.1km/ℓ 高速道路:23.5km/ℓ トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT 車両本体価格:469万円
ルノー・ルーテシア E-TECH ENGINEERDのスペック
ルノー・ルーテシア E-TECH ENGINEERD 全長×全幅×全高:4075mm×1725mm×1470mm ホイールベース:2585mm 車重:1310kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:H4M型 排気量:1597cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6 mm 圧縮比: 最高出力:91ps(67kW)/5600pm 最大トルク:144Nm/3200rpm 燃料供給:PFI 燃料:プレミアム 燃料タンク:42ℓ メインモーター:5DH型交流同期モーター 最高出力:49ps(36kW)/1677-6000rpm 最大トルク:205Nm/200-1677rpm サブモーター:3DA型交流同期モーター 最高出力:20ps(15kW)/2865-10000rpm 最大トルク:50Nm/200-2865rpm 燃費:WLTCモード 25.2km/ℓ 市街地モード21.9km/ℓ 郊外モード:26.2km/ℓ 高速道路:25.5km/ℓ トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT 車両本体価格:379万円