ママチャリとは一味違う「スマチャリ」ってなんだ?ホンダが考える電動自転車はスマホで“繋がる”がコンセプト

ホンダが提案する新しいコンセプトの電動自転車「SmaChari(スマチャリ)」は、スマートフォンアプリと自転車に取り付けた電動アシストユニットが連動して、さまざまな自転車を電動アシスト化・コネクテッド化できるサービスだ。自転車をコネクテッド化することで得られるメリットとは?

後付け電動ユニットをスマホで制御する世界初のシステム

「SmaChari(スマチャリ)」を搭載した初のモデル「RAIL ACTIVE-e」

ホンダが開発した、スポーティな自転車を電動アシスト&コネクテッド化する「SmaChari(スマチャリ)」を搭載した初のモデル「RAIL ACTIVE-e」が、スポーツサイクルショップ「ワイズロード」より発売される。7月21日から全国の同店舗で予約を開始し、発売は2023年10月下旬予定。価格は22万円となっている。

「スマチャリ」は、ホンダの新事業創出プログラム「IGNITION」により実現した社内ベンチャープロジェクトで、既製の自転車にバッテリーと駆動ユニットを後付けして、それをスマートフォンのアプリで制御するという世界初のシステムだ。

ホンダは、スマチャリを搭載した自転車を製造・販売するパートナー企業に対して、各種ライセンスとコネクテッドプラットフォームを有償で提供する。 出典:ホンダ

少々複雑ではあるが、電動自転車や電動ユニットそのものではなく、このシステム&サービスの名称が「スマチャリ」であり、パソコンやスマートフォンのOSやCPUのように、様々なメーカーの自転車に搭載して利用するシステム。というイメージでご理解頂ければいいだろう。

「スマチャリ」はアプリ上で、速度や走行距離、消費カロリーといった走行データを表示・記録することに加え、ホンダのカーナビなどから収集されたデータをもとに、自動車の急ブレーキが多い場所を表示する。要注意スポットに近づくとスマートフォンからアラート音が鳴る仕組みも搭載されている。

搭載される電動パワーユニットの制御はスマートフォンを介して行う。アシストの出力とレスポンスを4段階で調整ができるため、乗り手の好みにあわせたセッティングが可能だ。また、乗り手のペダリング状態や走行状況にあわせて自然なアシスト感が得られる「AIモード」も搭載。予期せぬ急発進を抑制する出力制御が施されているなど、ユーザーに寄り添ったアシスト特性により、安心感のある快適な移動をサポートする。

電動パワーユニットの制御画面。「AIモード」ならオートで最適な出力を判断するため、適切なサポートと電費を両立する。

なぜスポーツタイプの自転車に電動ユニットなのか?

アプリを通じて、走行データ管理から位置情報の共有までコネクテッド機能を活用したさまざまな機能や情報を利用できる。スマートフォンアプリを介した将来的な機能追加にも対応可能。 出典:ホンダ

日本国内の電動アシスト自転車は、いわゆる“ママチャリ”タイプが大半を締めていて、実用的な使われ方が一般的だ。「スマチャリ」を開発した本田技術研究所ソリューションシステム開発センター 野村真成氏によると「欧州ではスポーツタイプの自転車に後付け電動ユニットを追加するカスタムが日本より普及していて、デザインがカッコいい趣味性の高い自転車を電動アシスト化するユーザーも多くいます。スマチャリは『誰もが、好きな自転車を電動化できるようにしたい』という想いのもと当初より開発を進めてきました。

開発を進めるなかで、クルマは安全運転支援システムなど安全技術の進化が進む一方、自転車は何十年たっても安全機能は変わっていない。技術で自転車の安全性向上に貢献できないかを考え、その解決手段としてスマートフォンを活用したコネクテッド化を考え始めました。そして、“電動アシスト化とコネクテッド化” という答えを導き出しました。

電動パワーユニットをスマホで制御できるだけでなく、位置情報をアプリで共有できるため、保護者は子供の現在位置を確認できるし、仲間同士でサイクリングする場合に、集合場所の共有、お互いの位置の確認などにも役立ちます。何よりこのシステムはスマートフォンが鍵になるので、登録されたスマートフォンでないと動力が起動しないので、盗難防止にも一役買います。今後も様々なサービスをアップデートすることで多様な価値を提供することができ、これもコネクテッド化による利点といえます」

あえて製品を開発しないことで低コストを実現

ドリンクホルダー用のネジ穴を使用するため、フレームを傷つけないで装着可能。

前述したように、電動自転車そのものではなく、このシステム&サービスの名称が「スマチャリ」であるため、搭載する電動パワーユニットはホンダで開発したものではないといういう。その分野では既に様々なメーカーが存在しており、後発となるホンダが電動ユニットまで開発するとなると高コストになってしまうためだ。また、日本交通管理技術協会から、電動アシスト自転車の安全性・法規適合性を明らかにする型式認定制度にも対応した技術である承認を得ているため安全面の信頼性も高い。

ホンダは“2050年交通事故死者ゼロ” を目標に掲げている。これまではクルマ側からカメラで自転車や歩行者を探知して安全を担保するシステムだったが、これからは自転車や歩行者側からの情報を組み合わせて安全性を向上させることが可能になるかもしれない。その土台作りのため、「スマチャリ」のシステムを全国に広げ、自転車の走行データを蓄積していくことがプロジェクトの目標でもあるという。自転車の安全と快適性を提供するとともに、協調安全の次なるステップへ導くプロジェクトになるといえるだろう。

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