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現在、アジア圏の富裕層が求める高級車はかつてのラグジュアリーセダンからラグジュアリーMPV(=ラグジュアリーミニバン)にシフトしている。もちろん、アルファード・ヴェルファイアもその市場をターゲットのひとつとしているが、レクサスブランドではLMをアルファード・ヴェルファイアの兄弟車から差別化を図った。
その一方でアジア圏や新興国でのハイエースの信頼感は群を抜くものがあり、この信頼とラグジュアリーMPV需要が結びついたグランエースが登場したのが2019年2月のこと。ベースとなった300系ハイエースこそ日本市場には投入されていないが、逆にグランエースは2019年12月に国内販売を開始した。
もちろん、ボディサイズはグランエースが大きく上回るが、あえてトヨタの最上級ミニバンとしてグランエースとアルファード・ヴェルファイアを比べてみよう。はたしてトヨタ最高のショーファードリブンはどちらなのか?
エクステリアとボディサイズ……グランエースはひと回り以上大きい
逆台形の大きなフロントグリルこそ共通だが、やはりアルファード・ヴェルファイアの方が新しいこともありスマートでスタイリッシュな造形をしている。グランエースは海外向けハイエース(300系)の上位モデルということもあり、そのフォルムに商用車的なテイストを残している。そのあたりはメルセデベンツのVクラスに近いと言えるだろう。
一方でウェストラインが低く室内の開放感の高さを予感させる。さらに、アルファード・ヴェルファイアでは新意匠に生まれ変わった“アルヴェルピラー”が、グランエースでは逆に角度を立たせた形で残っているのが面白い。
全長4995mm×全幅1850mm×全高1945mm(19インチタイヤ)というアルファード・ヴェルファイアに対し、グランエースは全長5300mm×全幅1970mm×全高1990mmと明らかに1クラス上の大きさだ。ホイールベースも前者が3000mmであるのに対し、後者は3210mmと、約30cmの全長差のうち20cmがホイールベースの長さになっている。さらに+12cmの全幅を考えれば、室内空間もグランエースがかなり広いことが予想される。
このボディサイズはアルファード・ヴェルファイアより大きいレクサスLMをさらに上回る。
もちろん、このボディサイズの大きさは取り回しに影響を及ぼしている……かと思いきや、最小回転半径はアルファード・ヴェルファイアの5.9mに対しグランエースは5.6mと小回りが効く。やはりラダーフレームのFRであることが有利に働いているようだ。
一方で、最低地上高はアルファード・ヴェルファイアは150mmのところグランエースは175mmとやや高くなっている。フロア高もグランエースがやや高いように感じられ、乗降性ではステップボード(ユニバーサルステップ)が用意されるアルファード・ヴェルファイアの方が高そうだ。
ただし、スライドドア開口幅はアルファード・ヴェルファイアが820mmのところ、グランエースは1000mmを確保している。これは全長とホイールベースの長さが功を奏している。
また、ホイールサイズはアルファードは17インチ、18インチ、19インチの3種類、ヴェルファイアが17インチと19インチの2種類用意しているのに対し、グランエースは17インチのワンサイズ設定。
アルファード・ヴェルファイアのハブ/ホイールは新しくPCD120(5穴)になった点が話題になった。グランエースはPCD130の6穴で、実は同じ6穴でも200系ハイエースの139mmとは異なっている。
アルファード | ヴェルファイア | グランエース | |
全長 | 4995mm | 4995mm | 5300mm |
全幅 | 1850mm | 1850mm | 1970mm |
全高 | 1935mm(17インチタイヤ) 1945mm(19インチタイヤ) | 1935mm(17インチタイヤ) 1945mm(19インチタイヤ) | 1990mm |
ホイールベース | 3000mm | 3000mm | 3210mm |
最低地上高 | 150mm(17インチタイヤ) 160mm(19インチタイヤ) | 150mm(17インチタイヤ) 160mm(19インチタイヤ) | 175mm |
最小回転半径 | 5.9m | 5.9m | 5.6m |
タイヤサイズ | 225/55R19 225/60R18 225/65R17 | 225/55R19 225/65R17 | 235/60R17 |
車重 | 2060kg〜2290kg | 2180kg〜2310kg | 2740kg〜2770kg |
パワートレーン……ディーゼルならグランエース
アルファード・ヴェルファイアは何度も取り上げられているようにA25A-FXS型2.5Lエンジンに電気式無段変速機を組み合わせたハイブリッドを用意し、前者には2AR-FE型2.5LエンジンとSuper CVT-i、後者にはT24A-TFS型2.4LターボエンジンにDirect Shift-8ATが設定されている。
一方で、グランエースに用意されているのは1GD-FTV型2.8L直列4気筒インタークーラーターボディーゼルに6Super ECT(6速AT)の組み合わせのみ。アルファード・ヴェルファイアより約500kg前後思いグランエースにはターボディーゼルの極太トルクとそれを支えるトルコンATが必要というわけだ。
車名 | パワートレーン | トランスミッション | 最大出力 | 最大トルク |
アルファード | 2AR-FE型2.5L直列4気筒エンジン | Super CVT-i (CVT) | 182ps/6000rpm | 24.0kgm/4100rpm |
アルファード | A25A-FXS型2.5L直列4気筒エンジン シリーズパラレルハイブリッド | 電気式無段変速機 | 190ps/6000rpm +182ps(モーター) +54ps(E-Four) | 24.1kgm/4300~4500rpm+27.5kgm(モーター)+12.3(E-Four) |
ヴェルファイア | T24A-TFS型2.4L直列4気筒 ターボエンジン | Direct Shift-8AT (8速AT) | 279ps/6000rpm | 43.8kgm/1700~3600rpm |
ヴェルファイア | A25A-FXS型2.5L直列4気筒エンジン シリーズパラレルハイブリッド | 電気式無段変速機 | 190ps/6000rpm +182ps(モーター) +54ps(E-Four) | 24.1kgm/4300~4500rpm+27.5kgm(モーター)+12.3(E-Four) |
グランエース | 1GD-FTV型2.8L直列4気筒 インタークーラーターボディーゼル | 6Super ECT (6速AT) | 177ps/4400rpm | 45.9kgm/1600~2400rpm |
アルファード・ヴェルファイアはハイブリット、ガソリンエンジン車ともに4WDモデル(ハイブリッドはE-Four)を用意しているが、グランエースはFRの2WDのみとなっている。
アルファード・ヴェルファイアのサスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがダブルウィッシュボーンという組み合わせで、ヴェルファイアには専用セッティングが施されているのは何度も述べられている。
グランエースはフロントは同じくマクファーソンストラットで、リヤはトレーリングリンクリジッド(車軸式)を採用している。
加えて、アルファード・ヴェルファイアがボディ剛性を大幅に高めたモノコックシャシーであるのに対し、グランエースはストレートラダー構造のラダーフレームである点が大きく異なっている。
インテリア……グランエースには8名乗車モデルも
モデルとして4年も差があること、またグランエースが商用車ベースであることを考えるとアルファード・ヴェルファイアの現代的スマートさと乗用車的スタイリッシュさが際立つ。グランエースもウッド調パネルを多用するなど高級感を演出しているものの、ダッシュボードのデザインやインパネのレイアウトなどはひと世代古く感じられてしまう。
とはえい、グランエースもスマートフォン連携ディスプレイオーディオなどのユーティリティや、安全装備は充実している。
アルファード・ヴェルファイアは3列目シートを3名乗車とした7名乗車だが、グランエースの3列目シートは2名乗車で定員は6名(「Premium」グレード)。2列目はもちろん、3列目までロングスライド機構やパワー リクライニング機構、パワーオットマン、快適温熱シート、格納式テーブルなどを装備した専用のエクゼクティブパワーシートとなっている。
流石に最新のアルファード・ヴェルファイアのような脱着式マルチオペレーションパネルやオーバーヘッドコンソールこそ無いが、シートの豪華さは引けを取らない。
一方で、グランエースには2名乗車×4列とした8名乗車モデルも設定されている。ただし、8名乗車は3列目はリラックスキャプテンシート、4列目は6 : 4分割チップアップシートとなる。
ボディサイズにかなり差があるため、前後左右の室内空間の広さはグランエースが大きく上回る。エクゼクティブパワーシートがあっても2列目3列目のウォークスルーが可能になっている。
一方でラダーフレームのFRのためフロアが高いので、室内高はアルファード・ヴェルファイアの方が高い。ただし、やはりサイドウインドウ面積はグランエースの方が大きく、開放感という意味ではアルファード・ヴェルファイアを上回りそうだ。
アルファード・ヴェルファイア | グランエース(6名乗車) | グランエース(8名乗車) | |
室内長 | 3005mm | 3290mm | 3365mm |
室内幅 | 1660mm | 1735mm | 1735mm |
室内高 | 1360mm | 1290mm | 1290mm |
グレードと価格……グランエースが意外に安い?
アルファード・ヴェルファイアは先代モデルからの大幅な進化と、明らかな上級移行で540万円〜と最上級ミニバンとして相応の価格設定となっている。特に「Executive Lounge」は共に800万円後半という高級車だ。
グランエースはグレードを6名乗車の「Premium」と8名乗車の「G」に絞り、前者が650万円、後者が620万円という設定。どちらのグレードでもアルファードの中間くらい価格帯だが、サイズを考えるとお得感があるようにも思われる。
そういう意味ではヴェルファイアはがソリエンジン車はターボ仕様でありアルファードのガソリンエンジン車より100万円以上高く、専用の足回りを備えるだけに共通するハイブリッドでも70万円も高くなっている。
グレード | 価格 |
Z(ガソリン/2WD ) | 540万円 |
Z(ガソリン/4WD ) | 559万8000円 |
Z(ハイブリッド/2WD) | 620万円 |
Z(ハイブリッド/E-Four) | 642万円 |
Executive Lounge(ハイブリッド/2WD) | 850万円 |
Executive Lounge(ハイブリッド/E-Four) | 872万円 |
グレード | 価格 |
Z Premier(ガソリン/2WD ) | 655万円 |
Z Premier(ガソリン/4WD ) | 674万8000円 |
Z Premier(ハイブリッド/2WD) | 690万円 |
Z Premier(ハイブリッド/E-Four) | 712万円 |
Executive Lounge(ハイブリッド/2WD) | 870万円 |
Executive Lounge(ハイブリッド/E-Four) | 892万円 |
グレード | 価格 |
G(ディーゼル/2WD ) | 620万円 |
Premium(ディーゼル/2WD ) | 650万円 |