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復活ラリーアート『アジアクロスカントリーラリー』で優勝
2022年に7年ぶりに復活した「ラリーアート」が、モータースポーツ復帰初戦に選んだのがタイで開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)だった。三菱自動車のメインマーケットであるアセアン諸国での宣伝効果を睨み、同地域で人気のトライトン(先代)を投入して挑み見事勝利を飾った。
その実績をもとに、連覇を目指しAXCR2023に参戦することが2023年7月26日の新型トライトンのワールドプレミアとともに発表された。
AXCR2023参戦体制発表では、アジアパシフィックラリーや全日本ダートトライアルでチャンピオンを獲得している“ランエボ使い”の田口勝彦選手とそのナビゲーターを務める保井隆宏選手の加入が伝えられ、合わせて参戦車両である新型トライトンラリーについても紹介された。
2023年は8月開催となったAXCR2023
AXCRはタイを主な舞台としたFIA(国際自動車連盟)公認クロスカントリーラリーで、東南アジア特有の高温多湿な気候と狭くツイスティなジャングル、険しい山岳や泥濘路などを変化に富んだコースを走るハードなラリー。コースは観光地としても有名なパッタヤーから始まり、カンボジア国境からラオスと続き、走行距離は2000km、競技区間だけでも1000kmを超えるという。
2022年は11月に開催されたが、2023年の開催期間は8月13日〜19日。この時期は雨季にあたり、激しい雨はもちろんかなりマディなコンディションが予想されている。昨年と異なるコンディションに、ベースモデルからしてデビューしたばかりのニューモデル。はたしてどのようなラリーマシンに仕上がっているのだろうか?
T1(改造クロスカントリー車)クラスにエントリー
新型トライトンがエントリーするのは昨年に続きT1クラス。改造クロスカントリー車で、トライトンはディーゼル4WDクラスになる。このクラスはAXCRにおける一番の花形クラスであり、トヨタ・ハイラックス(Revo)、トヨタ・4ランナー、いすゞD-MAXがトライトンの主なライバルだ。
参戦車両のベースは新型トライトンのダブルキャブ車。これにT1規定に沿った改造が施されるのだが、発表されたばかりの市販車ということもあり市販改造パーツはあまり使われおらず、ほぼマスプロダクション状態だという。
サイズ的には先代より大きくなったものの、新開発のラダーフレームやサスペンションにより優れた運動性を発揮。テスト走行でもタイトなコースでの取り回しは良好だという評価を受けているそうだ。
ボディサイズ(先代比) | 全長:5320mm(+15mm) 全幅:1865mm(+50mm) 全高:1795mm(±0mm) |
ホイールベース | 3130mm(+130mm) |
荷台長 | 1555mm(+35mm) |
トレッド | 2570mm(+50mm) |
エンジン型式 | 4N16型2.4ℓ直列4気筒DOHC16バルブ インタークーラーターボディーゼル |
排気量(ボア×ストローク) | 2442cc(86.0mm×105.1mm) |
圧縮比 | 15.2:1 |
最高出力 | 150kW(204ps)/3500rpm |
最大トルク | 470Nm(47.92kgm)/1500-2750rpm |
燃料噴射装置 | コモンレール式燃料噴射装置 |
トランスミッション | 6速MT |
4WDシステム | スーパーセレクト4WD-II |
サスペンション(F/R) | ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング/リジッド式リーフスプリング |
デフ | フロント:アクティブヨーコントロール(AYC) リヤ:電子制御LSD |
エンジンはT1規定に従い軽量化などのチューニングが施される一方で39φのエアリストリクターが装着される。ターボチャージャーは三菱重工&ターボチャージャ製で、HKS製の低圧損マフラーを装着し、公称出力はは市販状態と同様の204ps/47.92kgmとなっている。エンジンオイルはENEOS(エネオス)がサポート。
トランスミッションは市販車の6速MTを軽量化。前後のLSDはCUSCO(クスコ)が開発からサポートした機械式LSDを組み込んでおり、サスペンションも前後ともCUSCO製を採用。ツインダンパー仕様で、油圧バンプストッパーも装備された。
ブレーキはリヤブレーキをディスク化するとともに、キャリパーをENDLESS製モノブロックタイプに変更。ブレーキパッドパッドもENDLESS製で、ブレーキフルードはレース用クーラントと合わせてFORTEC(フォルテック)がサポートする。
タイヤは昨年に続き横浜ゴムのサポートを受け、「GEOLANDAR(ジオランダー) M/T G003」マッドテレーンタイヤをWORK製「CRAG T-GRABIC II」に装着する。ただし、マディなコンディションを見越し、接地面圧を高めるべくサイズを265/70R17から235/80R17に変更した。
他にも前後ドアやボンネット、フェンダー、荷台をCFRP化して軽量化を図っている。リヤゲートも取り外して軽量化とともに、荷台へのアクセス性を高める狙いだ。
その荷台には2本のスペアタイヤやジャッキ、ウインチと牽引バーを搭載している。ウインチは泥濘路でスタックした際の脱出用を想定しており、車体前後のどちらにも設置できる作りだそうだ。
マッドフラップやアンダーガードといったラリーカーの定番が装着されるほか、川渡りを想定したシュノーケルも装備。ロールケージ、バケットシート、シートベルトなどはFIAの安全規定に対応したものが装着されている。
助手席にはラリー用のナビゲーションも用意する。
テスト走行ではトラブルフリー! 増岡総監督も連覇に期待
チーム三菱ラリーアートの増岡浩総監督は、市販車のテスト走行でも新型トライトンのポテンシャルに自信をのぞかせている。新開発のラダーフレームがもたらす高剛性はもちろんのこと、トレッドが広がったことで操縦安定性と直進性が向上。サスジオメトリーが最適化され、運動性やハンドリングも良くなっているという。
チームは6月19日〜23日にタイ中央部のカオヤイ国立公園周辺のオフロードコースで本番を想定した高負荷耐久テストを実施。本番以上にハードなコース設定で5日間に800kmを大きなトラブルもなく走破してその走行性能と信頼性、耐久性が確認された。新加入で初のクロスカントリーラリー出場となる田口勝彦選手も350kmを走り、好感触を得たという。
増岡浩総監督は新型トライトンラリーの仕上がりに満足している一方、ライバルに対してパワー面では不利である点を指摘。軽さとハンドリングを活かした勝負にするべく、雨のラリーが望ましいと語った。
連覇に向けて期待が高まるチーム三菱ラリーアートと新型トライトンラリーのAXCRスタートは目前に迫っている。