目次
デリカミニ(4WDモデル)の足まわりの専用セッティングは、NMKVで初めて
日産と三菱の軽自動車は、両社によるジョイントベンチャーであるNMKVが商品企画、開発マネジメントを行っている。三菱デリカミニも同様だが、前任者(車)のeKクロス スペースと異なるのは、フロントマスクなど見た目を変えただけではない点だ。三菱自動車は、主にシニア男性からの支持が多く、パジェロやデリカD:5などアウトドアレジャーに向き、高い悪路走破性を評価する声が多いという。デリカD:5やeKクロス スペースの顔つきは、いかにも男性的で、多くの若い女性が乗っているイメージは正直薄い。
こうした状況を打破しようと伝家の宝刀を抜き、デリカの名を与えたデリカミニ。ミニの名はパジェロミニも彷彿とさせるため、三菱らしい絶妙なネーミングといえる。半楕円形のヘッドライトと「ダイナミックシールド」と呼ぶ「X」字を描くクローム加飾の下半分を残し、やんちゃで愛らしさも抱かせる目つきと、力強さを演出している。
筆者が東京オートサロンでエクステリアデザイナーに短時間インタビューした際には、デリカD:5のデザインを小さくしたわけではなく、スケール感に合うデザインを施したと説明。さらに、女性がクルマを選ぶ際、フロントマスクが「かわいいのか、そうではないか」は想像よりも重要という市場調査による分析を披露してくれた。
小学生低学年の男の子がいる母親が「やんちゃだけど、放っておけない」と思わせるような顔つきを狙った、と喩えながら筆者に意図を明かしてくれた。2023年5月24日時点で約1万6000台を受注したという数値は、「デリ丸。」が登場するCM効果もあり、受注台数をさらに重ねているだろう。
【新型デリカミニのココが○】やっぱり、やんちゃで可愛い顔つき!
デリカミニとは、東京オートサロン2023の前に行われたプレス向けの事前撮影会で初めて相対し、東京オートサロン、さらに正式発表前の事前撮影会、公道試乗会と何度も目にしている。三菱らしさや、先述した同社の狙いが巧みに表現されている顔つきは文句なしで「○」だろう。
そのほか、荷室側からワンアクションで後席のスライドができる多彩なシートアレンジをはじめ、3Dパターンの撥水シート生地は夏場でも蒸れにくく、水汚れなども拭き取りやすいなどの利点もある。アウトドアだけでなくてもうれしい装備が多いのも「○」だ。シートアレンジなどの使い勝手は、完成度が高いこともあり、eKクロス スペースから手は入れられていない。
【新型デリカミニのココが△】リヤビューとインパネの印象はあまり変わっていない!?
デザインでやや残念に思えるのは、顔つきほどは変わっていないリヤまわり(車名ロゴやシルバーのリヤバンパーのデザインやカラーなどのディテールはもちろん違うが)と、ほぼ踏襲されているインパネ(インテリア)デザインだろう。eKクロススペースからから買い替えする人には「△」と映るかも。予算もあるだろうが、インパネの加飾などに、もう少しアウトドアテイストが盛り込まれても良かったかもしれない。
また、大きな居住スペースを持つ箱型ということもあり、40〜60km/hという街中での常用域でこもり音、ドラミングがやや大きめに感じられたのも「△」といえるかもしれない。ただし、試乗中はラジオなどのサウンドを消していて、試しに常識的な音量でオンにしたところ、ほとんど気にならないレベルに収まっていた。
【新型デリカミニのココが×】専用チューニングの足まわりに×はない。
デリカミニで「×」と言えるほどの問題点は、短時間の試乗では感じられなかった。NMKV内で初めて専用チューニングのゴーサインが出たという4WDの足まわりは、デリカミニ専用(2WDは従来どおり)。
165/60R15タイヤを履く4WDは、岡崎製作所のクロスカントリー路で入念な走り込みを実施。路面や速度域によっては、少し跳ねるような挙動を示す一方で、タイヤのエアボリュームが増したことで、全体的にフラットライドになり、大きな入力があっても上下動が少ない。
多少、タイヤサイズの大きさを抱かせるシーンもあるが、良好といえる程度に十分に収まっている。背の高い軽スーパーハイトワゴンの中ではハンドリングと乗り心地の両立も見事で、高速域での安定感も高い。
【新型デリカミニを買うなら】4WDを選ぶのがオススメ!キャンプ場や整備された林道、雪上であれば必要十分な走り
デリカミニを購入するのなら、走行安定性の高さも含めて4WDを積極的に選ぶのが、その真価を十分に味わう選択といえるだろう。4WD仕様は、大径化で最小回転半径が4.9mと、2WDの4.5〜4.8m(同じ165/55R15タイヤよりも0.1m拡大)若干大きくなっている。よほどの狭路でない限り、実用上困ることはないはずだ。
大径タイヤを履く4WDは、160mmの最低地上高を確保している。滑りやすい場所での発進性を高める「グリップコントロール」、急な下り坂でも一定速でクリアできる「ヒルディセントコントロール」の全車標準化も頼もしい。