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ミシュランがGKNドライブジャパンで開催した「サステナブル試乗会」で、今回用意された試乗メニューは以下の通り。
・コースの両側にあるバンクを使った高速周回路での「快適性およびハンドリング性能」
・ウェット路面での「ハンドリング比較」
・ウェット路面を使った「ブレーキング比較」
最初に『e・PRIMACY(イー・プライマシー)』を純正装着したクラウンクロスオーバーと『PILOT SPORT EV(パイロットスポーツEV)』を純正装着したヒョンデ・アイオニック5(IONIQ5)による周回路走行。続いて日産サクラにオプションサイズのeプライマシーを装着した「ウェットハンドリングテスト」を行なった。
テストカーは日産サクラに標準サイズのe・PRIMACYを装着
最後のセッションはウェット路面を使った「ブレーキング比較」についてご紹介しよう。
車両は「ウェットハンドリングテスト」から引き続き、日産サクラとe・プライマシーの組み合わせだ。しかし今回はサイズが標準仕様の155/65R14となり、さらにこれを新品と残り溝2mmで比較した。
また同様にその指標として、同サイズの他社タイヤを新品および残り溝2mmで走らせた。
e・PRIMACYの制動距離は純正タイヤより短く
摩耗状態ではその差はさらに大きくなる
計測は時速70km/hからのフル制動で、レースロジック社の計測機器を使うことでその制動距離とGのピーク値、そして平均値が得られた。
新品のe・プライマシーで得た制動距離は、一番良かった数値が22.6m。制動Gのピーク値は0.9Gで、アベレージは0.8Gという結果だ。
対して残り溝2mmの状態だと制動距離は4m伸びたが、制動Gのピーク値は0.9Gと変わらず、アベレージも0.7Gと肉薄した。
対して他社タイヤは新品時で制動距離が、e・PRIMACYよりも2割以上長く、よって制動Gもピーク値/平均値ともにわずかに下回った。
残り溝2mmでの比較は、新品時に対して制動距離が2割弱増えた。そしてe・PRIMACYに対しては、新品時同様2割以上の差が付いた。制動Gのピーク値および平均値共も同様だ。
まとめるとe・プライマシーは残り溝2mmとなったとき、サクラ一車身分以上制動距離が伸びた。対して他社タイヤは新品同士の時点で1.7車身ほどの差が付いていて、これが摩耗すると2車身を超えたということになる。
注:上記4点の制動位置の写真は計測時と異なる走行時のもので、表の数字とは厳密には異なります。
残り溝が2mmの状態でもe・PRIMACYの落ち幅が相対的に少なかったのは、シンプルにタイヤの性能が高かったからだ。
そしてこうした摩耗時の性能確保こそミシュランにとっての、サステナビリティへの回答のひとつだと言える。なるべくタイヤの買い換えサイクルを長くすることで、直接的に資源を節約するのが彼らの狙いというわけだ。
とはいえあと0.4mmでスリップサインが出る領域になると、その制動距離は一車身以上伸びてしまうということは覚えておくべきだ。
トライ&エラーによる着実な進歩
ちなみにプライマシーシリーズの前身となる「Premier LTX」でミシュランはその主溝に、プラットフォームに対して溝が台形となる「エクスパンディング・レイングルーヴ」を採用していた。
このレイングルーヴはタイヤが減ったときでも溝面積を確保できる画期的な手法だったが、トレッド面のムービングが起こりやすくなる。ということでプライマシーシリーズからは、オーソドックスな垂直方向のU字グルーヴを採用している。
それでもウェットグリップが低下しなかったのは、その排水性とコンパウンド性能が、Premier LTXよりもさらに引き上げられたからだろう。
常に目標設定に対して、ハードで真摯なトライ&エラーを続けているわけである。
転がり抵抗の差は一目瞭然……総合性能はバリューフォーマネー
e・PRIMACYの評価ポイントは、単にウェット性能が高いということではない。これはウェットハンドリング性能でも述べたが、低燃費タイヤとして転がり抵抗「AA」という性能を確保した上で、ウェット性能を両立しているところにある。
というわけで午後のアトラクションでは、e・PRIMACYの転がり抵抗をエナジーセイバー4と比較した。
方法はローダーの傾斜を使い、トランスミッションはニュートラル状態で、スロープから車体をリリースして進んだ距離を測る。ドライバーはミシュランのエンジニア氏が担当した。
結果は、エナジーセイバー4に対してeプライマシーが約10mほどの差を付けた。繰り返しておくと前者の185/60R16インチサイズにおける転がり抵抗係数は「A」であり、後者のそれは「AA」だ。
ミシュランは市場価格が高いとよく言われる。しかし残り溝2mmといえば、スリップサインまであとわずかに0.4mmの減り具合だ。「そろそろ買い換えなきゃ」と考える頃まで安全性を高く保ってくれるのだから、それはコストパフォーマンスが高いタイヤだと言えるのではないだろうか。何度も言うがタイヤ選びはイニシャルコストだけではなく、トータルパフォーマンスで選んで欲しい。