スバルBRZ/GR86の2.4ℓボクサーエンジンをディテールまで掘り下げる

新型トヨタGR86/スバルBRZのエンジンは、「究極の自然吸気水平対向エンジン」を目指したスバル技術陣渾身の作だ

新型トヨタGR86/スバルBRZの搭載エンジンは、2.4ℓ水平対向4気筒である。ターボ過給なしの自然吸気エンジンが目指したのは低重心のパッケージマッチする高回転型ボクサーだ。「究極の自然吸気水平対向エンジン」の開発過程を訊いた。
FA24型を後方から見る。組み合わされるトランスミッションは、6MT、6ATともエンジンの出力アップに合わせてトルク容量をアップしたものを使う。基本形は前型と同じだ。

まずは、ピストンから比べてみよう。

こちらは前型FA20型。ボア径は86.0mm。
新型FA24型。ボア径は94.0mm。当然、ピストンは大きくなった。
前型FA20のピストン冠面
新型FA24のピストン冠面

ピストン冠面のカタチは特別なカタチなんですか?
「そうですね。通常のDIエンジンであれば、丸く、こう燃料噴射がある(トップの位置にインジェクターがある場合)ので、それを阻害しないようなきれいな受け皿形状なんですが、このエンジンは混合させることよりも空気をたくさん吸ってインジェクターの半スプレーといわれる扇型のスプレーがピストン冠面に当たって跳ね返って、点火プラグ近傍に濃い混合気が集まるような、そういう形状にしています」

FA24型のインジェクターはサイドにマウントされている。

「触媒の早期暖機のために、冷間時にイグニッションをオンにしたときに、燃焼しづらい状況で着火性を良くして、かつ、燃焼をよくする。まず着火性のところは、インジェクターでプラグ近傍に集めて点火します。だけど雰囲気はポート噴射を使います。つまり、始動時からポート噴射を使っているんです。このエンジンとしてはポート噴射は、出力としての役割が非常に大きいのですが、排ガス、エミッション制御のところでもポート噴射があることで燃焼は助けられています」

こちらはFA20型のコンロッド。いわゆる斜め割コンロッドである。
こちらが新型FA24型のコンロッド。斜め割ではない。

コンロッドは、新型になって斜め割りではなくなっていますね?

「はいそうです。水平割りに戻りました、EJ型と同じです。FA20エンジンは、シリンダーブロックの下の穴からスタッドボルトを締結できるようにコンロッドを斜めにしています。FA20は、斜め割りなので、受圧面積がどうしても減ってしまう。ピストンが上死点になったときに慣性荷重が、割面が寄っていることで受圧面積が減ってしまう。FA20は、そこが限界まできていました」
とはいえ、コンロッドの重量は新旧で同じ。高強度材を採用することで体格は大きくなったが、重量は同じにできたいう。

FA20型のコンロッド
FA24型のコンロッド

「2.4ℓの60g重くなったピストンだと限界を超えてしまうので、FA24型ではまっすぐの割にしました。こうなると組み立ての手順がFA20とはまったく変わってきます。新型FA24は、EJ型のころに採用していた方法で組み立てます。FA20はFB型がロングストローク化したときに斜め割りになっていました。新型はクランクシャフトが単品のときに、コンロッドを4つ最初につけるんです。それから、ブロックで挟み込んで、ピストンを最後に入れる。そうするとピストンピンが入らないので、サービスホール(隠れて見えませんが)があって、前側の気筒は前から、後ろは後ろからピストンピンを挿します。それから最後サークリップをつけます」

梶川さんが手に持っているのが、新型FA24型が使うサークリップ。「e型」の形状だ。前型FA20のそれは、通常の「C型」をしている。
ピストンピンを止めるのに、ロービスホールから長いラジオペンチ(のようなもの)でクリップ止めるのにつまむ箇所が必要だからe型をしているという。
左がFA20、右が新型FA24のピストン。

ピストンは、ボア径が大きくなったことで、新型は1個あたり約60g重くなっているという。それでも、ピストンを細かく見ると肉盗みをいろいろ行なっていて、軽量に仕上げたことがわかる。高回転まで回すのだからピストンは軽いにこしたことはないのだ。

こちらがFA20型のピストンの裏側。
こちらが新型FA24型のピストン。ボア径が86.0mmから94.0mmに拡大したが、重量増は約60gに抑えた。肉盗みされているのがわかる。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…