前回の筑波ラウンドでは、マシン炎上という最悪のアクシデントに見舞われながらも、夜を徹してマシンを修復してなんとか本番を戦い抜いたチーム・ドルーピーのGR86。今回は、およそ二ヶ月のインターバルのエビス戦を迎え、文字どおり“完全復活”することになった。まずは、チーム・ドルーピーの松岡歩監督に話を聞いた。
「筑波ラウンドのあと、配線、配管などすべて一新して2回テストしましたが、お盆前にエンジンに不調が発覚したため、エンジンを載せ替える決断をしました。同時に、トラブルの多いVVT-i(可変バルブタイミング)機構も廃止する仕様へと変更しました。事前に実走テストする時間はなかったので、エビスサーキット入りしてから金曜日にぶっつけ本番での走行となりました。この週末はDOSSやクルマの走らせ方の確認作業に加えて、クルマのセットアップを進めるところからのスタートとなりました」
チーム・ドルーピーにとってはお盆返上でのマシン製作作業となったわけだが、これはエビスへ向けて完璧に準備を完了させたことを意味していた。
「そうですね、結果的にとても良い週末でした。今シーズンはハードラックが続いていました。DOSS採点のポイントを少しずつ修正していき、初日・土曜日の単走2本目でようやく最適なDOSSの攻略が見えてきました。それがとても大きな収穫です」
それでは、石川のエビスでの戦いを振り返ってみよう。
26日(土)第5戦、石川隼也は2本目に97.3点をマークして12番手を獲得してベスト16へ進出。対戦相手は松山北斗(GRスープラ)。1本目は石川が後追いだったが、スタートで少し出遅れたことが最後まで響いて無念にもベスト8進出は叶わなかった。
「追走は今年初めてだったので、松山選手との対戦ではスタートで少し出遅れてしまいました。追っ掛けモードで車速に捕らわれてしまったのが原因です」と松岡監督は分析している。つまり、敗因は分かっており、このあたりを修正して翌日の第6戦に挑むことになった。
27日(日)第6戦、まずは石川が単走に挑む。「97点がベスト16進出のボーダーライン」と見られていたが、その1本目、石川はいきなり97.9点を叩き出し、総合7番手を獲得した。文句なしのベスト16進出を決めた。
まず、ベスト16で対戦したのは、同じGR86で挑む村上満。1本目、2本目ともにほぼ互角の戦いとなったが、トータルで石川201.5vs村上199.5の僅差で石川がベスト8進出を果たすことになった。このあたりは選手とチームの地道かつ綿密なシミュレーション作業が功を奏したのだろう。
ベスト8の対戦相手は藤野秀之、またも「GR86対決」となった。追走1本目。石川は後追いだったが、第2セクターで失速して離されてしまう。石川101vs藤野98。石川は後追いポイント10獲得するも、指定ゾーン不通過の5ポイントマイナスとなった。追走2本目。石川先行で善戦するも、石川97vs藤野108。2本トータルで石川198vs藤野 206となり、ここで石川の第6戦は終わった。
「日曜日(第6戦)は、とにかくスタートで追いつくことに集中し、後追いポイントを狙っていきました。そして、ムリせずDOSSポイントを獲得することを狙っていました。それにしても、藤野選手との後追いは今週一番の走りだったと思います! 結果は負けですが、完璧なスタートを切ることができ、あそこまでビタビタに付いていけたことに手応えを感じています。チームとしても、ダンロップタイヤとしてもD1で経験豊富な藤野選手と当たって互角に戦うことができました。とにかく正確に走って勝ちにいく。その結果、相手との距離感といいスピードといい、我々はトップを戦えるレベルにいることを確認できました」
「いまは次のオートポリス戦がとにかく楽しみです。石川はとても運転技術が高いドライバーですが、いくらポテンシャルが高くても、心は鍛えることができません。チームとしては、とにかく彼に気持ちよく走ってもらえる体制を作り、安心して競技に挑んでほしいと思っています」
大きな手応えを得たエビスラウンドの二戦を終え、チーム・ドルーピーは確実に上昇気流に乗っていることが分かった。これは同時に、D1シリーズ終盤戦へ向けてDUNLOP DIREZZA β02の存在にも熱い視線が注がれていることを意味している。