「SUVだが、土の香りがしない」レヴォーグ・レイバックは単なる背高レヴォーグではない仕上がりだ

新型スバル・レヴォーグ・レイバック
スバルは9月7日、レヴォーグ・レイバック(以下レイバック)を発表した。ネーミングから伝わるようにレヴォーグの派生車種であり、外観写真が伝えるように、レヴォーグに対して背が高くなっている。レイバック(LAYBACK)は「くつろぐ」「ゆったり」「リラックスできる」との意味を持つ「Laid Back」を語源にした造語である。スバルは、「ゆとりある豊かな時間や空間を大切にする気持ちをネーミングに込めた」と説明する。そのファーストインプレッションをお届けする。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Motor-Fan

目指したのは「都市型SUV」

スバル・レヴォーグ レイバックLimited EX(プロトタイプ) 全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm ホイールベース:2670mm
サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク

スバルにはインプレッサから派生したクロストレックやフォレスター、レガシィから派生したレガシィ・アウトバックがある。レイバックもその系譜に連なるSUVかというと、スバルはこれを明確に否定する。クロストレックやフォレスター、アウトバックがオフロード寄りの商品であるのに対し、レイバックは「都市型SUV」を標榜する。開発責任者の小林正明氏は「SUVだが、土の香りがしないことを意識した」と説明する。

クロストレックやフォレスター、アウトバックしかり、世の中には土の香りがプンプンするSUVがはびこっている。そういう香りを好むユーザーがいるのは事実だ。いっぽうで、SUVが欲しいけれども、「土の香りが強すぎるのはどうも……」と難色を示す人たちもいる。スバルはそう読んだ。だからレイバックは、都会的なイメージを持つSUVをコンセプトに企画・開発が進められた。受け入れられるかどうかは、売ってみなければわからない。だから、「相当なチャレンジ」だと認識している。

最低地上高が200mm(レヴォーグから+55mmアップ)したのが、レイバックの最大の特徴だ。

全長×全幅×全高は4770×1820×1570mmだ。レヴォーグGT-Hに対して全長は15mm、全幅は25mm、全高は70mm伸びている。全長の延長分はフロントバンパーで10mm、リヤバンパーが5mmだ。フロントバンパーの延長分は、SUVらしいボリューム感を出すためにグリルを大型化した影響。レヴォーグはヘキサゴン(六角形)グリルを中心にそれぞれの角を起点にシャープなラインが伸びるデザインだが、レイバックは六連星のバッジからヘッドライトに侵食するようにサテンメッキのウイングが伸びる。良くも悪くも目を引くポイントだ。

レヴォーグとレイバックの外観の違い。最低地上高アップとともなって、実物を見ると、かなり印象が違って見える。

全幅の拡大分は前後のホイールアーチに施したクラッディング(樹脂製の縁取り)の影響。全高はSUVを名乗るにふさわしい程度に最低地上高を上げた影響だ。最低地上高は200mm(レヴォーグ比+55mm)で、クロストレックと同じ。レヴォーグ(GT-H)の225/45R18対し、大径の225/55R18サイズのタイヤを装着したのに加え、サスペンションメンバーと車体の間にスペーサーを入れて車高を上げている。インプレッサをベースにクロストレックを仕立てたのと同じ手法だ。

インテリアもレヴォーグとはひと味違う。

インテリアも土の香りがしないよう、「上質さ」をコンセプトにまとめられている。シートはブラックとアッシュカラーのツートンとし、カッパーステッチのアクセントを入れている。シートはフロアが高くなったSUV化に合わせて乗降性に配慮しながらもホールド性を確保すべく、座面の土手高さを最適化した。広い荷室空間はレヴォーグ譲りだ(寸法・容量は同一)。

エンジンはCB18型、1.8L水平対向4気筒直噴ターボを積む。最高出力は130kW/5200-5600rpm、最大トルクは300Nm/1600-3600rpmを発生。トランスミッションはリニアトロニック(チェーン式CVT)を組み合わせる。駆動方式はAWD(常時全輪駆動)だ。

エンジン 型式:CB18 形式:水平対向4気筒DOHCターボ 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm 圧縮比:10.4 最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm 最大トルク:300Nm/1600-3600rpm 燃料供給方式:筒内直接噴射 使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 燃料タンク容量:63L

走りに自信あり!動きがしなやかだ

佐渡島の大佐渡スカイラインの一部を閉鎖したステージで試乗を行なった。

レイバックのプロトタイプに試乗した。走行ステージは佐渡島(新潟県)の大佐渡スカイラインである。標高約850mの交流センター白雲台を起点に、約7km先の展望台でUターン。このルートを2往復した。白雲台から展望台までは登り基調で、タイトなコーナーが連続する。路面は比較的スムーズだが、ところどころでザラザラと荒れていたり、かまぼこ状の突起があったりする。

路面は適度に荒れており、「リアルワールド」でのクルマの挙動を知ることができた。

都市型SUVを走らせるにしては過酷なステージだが、スバルがあえてここを舞台に選んだということは、走りに相当自信があるということだろう。レイバックはレヴォーグに大径タイヤを履かせ、スペーサーをかまして車高を上げただけのクルマではないということだ。

実際そのとおりなのは、走らせてみるとすぐにわかる。動きは全般にしなやかで、操作に対するクルマの動きはスムーズかつ、つながりがいい。車高を上げると重心が高くなり、揺れが大きく出がちだ。それを抑えようとするとサスペンションは硬くなりがち。硬くするとサスペンションのストロークを使い切れなくなるが、レイバックはそんなことはない。路面のザラザラした凹凸やうねりに対してきれいに追従し、入力をしなやかに減衰して姿勢をフラットに保とうとする。

聞けば、ダンパーとコイルスプリングはレイバック専用とのこと。スプリング(ばね)はレートを落としているという。ダンパーはマンホールや道路の継ぎ目、石畳が連続した路面などを通過した際にコンコンという突き上げが生じないよう、中高速域のピストンスピードを意識してチューニングした。具体的には、中高速域で減衰力を上げすぎない飽和型のピストンバルブを持つダンパーを適用している。上質な乗り味の実現に貢献する功労者だ。

いっぽうで、コーナーの進入でダンパーがゆっくり縮まったり伸びたりするシーンでは、グラッと揺れて不安をあおるような動きは見せず、ジワッと腰を落として乗り手を安心させる。これは、リバウンドスプリングの効果もありそう。デュアルピニオンアシスト式の電動パワーステアリング(EPS)はレイバックを仕立てるにあたって定数をチューニング。車体の動きと同様に「しなやか」と表現するのがぴったりな操作フィーリングである。

フロントサスペンションはマクファーソンストラット式
リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式。スペーサーを用いて車高を上げている。

高い静粛性の理由は

室内の静粛性は高い。前後席の会話明瞭性がいいのは、このクラスのクルマでは重要だ。

エンジン音が控え目になる勾配が緩やかな区間では静粛性の高さが印象に残ったが、吸音材・遮音材は追加していないという。「では、なぜ?」と質問すると、ひとつには、車高を上げて路面とフロアの空間が広くなったこと。さらに、タイヤとホイールハウスの隙間が広くなったことで音がこもらずに逃げ、静粛性の向上に寄与しているとのこと。

レイバックのタイヤサイズ:225/55/R18(705.2,mm) レヴォーグは225/45/R18(660.2mm)でタイヤ自体で45mm大径化
オールシーズンタイヤ(FALKEN ZIEX ZE001A A/S) を履く

もうひとつ大きな理由があって、それはタイヤだ。実は、225/55R18サイズのタイヤはクロストレックとまったく同じで、FALKEN ZIEX ZE001A A/Sのオールシーズンタイヤである。クロストレックの開発の際に「性能とロードノイズのバランスがいい」ことがわかったのでレイバックに履かせてみたところ相性が良く、「すごくいい」ことがわかったという。

確かに、すごくいい。オールシーズンタイヤと聞くとスタッドレスタイヤのイメージに引きずられてドライ路面でのグリップは弱いのでは?応答性に欠けるのでは?と想像しがちだが、まったくそんなことはない。多少のスポーティな走りに対して音を上げることはないし、操舵に対する応答性もサマータイヤと変わらない。なにより静かだし、万が一の雪の際に頼もしい味方になってくれる。都市部や非降雪地域で生活するユーザーにとっては万能のツールだ。

ハーマンカードンのオーディオを装着する。

レイバックを初めてみたとき、正直どう捉えていいのかピンと来なかったのは事実。しかし、リアルワールドで走らせてみて印象は一変した。乗ってみると良さがわかる類のクルマである。肩の力が抜けたレヴォーグと表現すればいいだろうか。

最小回転半径:5.4m トレッド:F1560mm/R1570mm
スバル・レヴォーグ レイバックLimited EX(プロトタイプ)
全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1600kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:63ℓ
エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:63L
トランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)
駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…