目次
グローバルリーダーのための新型センチュリー
トヨタが新型センチュリーを発表した。
あらためて整理すれば、新型センチュリーはフロントに3.5L V6エンジンを横置きに積み、フロントはハイブリッド駆動、リヤはモーター駆動となるプラグインハイブリッド車。見ての通り、そのスタイルはSUV的な背の高い2BOXとなっている。
そして、新型センチュリーの登場はフルモデルチェンジではない。従来からのV8ハイブリッドを積むセンチュリーは、「センチュリーセダン」として継続販売されるとアナウンスされた。
2つのセンチュリーが存在するのは、従来からの価値観に基づくショーファーカーと、新しい世代の価値観に合ったショーファーカーに対応するには異なるスタイルを用意する必要があるというわけだ。
では、新型センチュリーがターゲットとしているのは、どのようなユーザー像なのだろうか。
トヨタの発表内容を整理すると、新型センチュリーは『グローバル社会で活躍する リーダーの価値観を映し出す、日本の伝統的な美を織り込み、唯一無二のおもてなしの心を備えたショーファーカー』であるという。
ポイントとなるのはグローバルリーダーという部分で、従来からのセンチュリーセダンがドメスティックなニーズを徹底的に追求していたのに対して、ある意味で視野が広がっているといえる。
美しい乗降所作から生まれたSUVフォルム
ところで、新型センチュリーは厳密にいえばSUVとは言い難い部分もある。
たしかに全体のフォルムはSUV的だが、じつは後席と荷室は区切られているのだ。それも単に壁を作ったというレベルではなく、リヤ・サスペンションの取り付け部分に「ラゲッジルームセパレーター骨格」を結合、そこにガラス窓を入れるボディ設計になっている。ラゲッジがセパレートされているという点ではセダンの新しいカタチといえるのかもしれない。
なぜゆえに新型センチュリーがSUV的なフォルムになったのか。
その理由は「グローバルリーダーにふさわしい乗降所作」を追求した結果だ。
背筋を伸ばしたままスッと乗車できること、凛とした姿勢で降車できることをドア開口やシート位置などから考えたのだという。
さらにいえば、出迎えや見送りの際に、目線がちょうどいい塩梅になることも考慮した結果、このパッケージにたどり着いたというわけだ。
こうした狙いからは、新型センチュリーのユーザー層としては、従来よりもパワフルなリーダーを想定しているといえそうだ。
月販基準台数は30台、センチュリーセダンの3倍
従来からの古典的ショーファーカーとしてのセンチュリーセダン、若々しい感性を持つグローバルリーダー向けの新型センチュリーといった住み分けが、国内向けのユーザー像となるだろうか。
さらに注目したいのは新型センチュリーは、海外市場も意識したグローバルモデルであるという点。
実際、トヨタが発表した月販基準台数は30台となっている。従来からのセンチュリーセダンの実績と比べると、おおよそ3倍といえる規模感を目指している。国内でのショーファーカー市場が拡大することは考えづらいので、海外でのセールスが新型センチュリーの成否を左右するといえるだろう。
しかしながら、海外とくに欧州ではトヨタというブランドがロールスロイスに代表される伝統的なショーファーカー・ブランドとがっぷり四つの勝負ができるかといえば疑問もある。
逆にいえば、グローバルにおいてあえて「メイドインジャパン」という価値を求めるユーザーにとっては、定番とは異なる選択肢として新型センチュリーは刺さるのかもしれない。
日本文化をアニメーションが代表するというのは、ショーファーカー市場においては適切な考え方ではないかもしれないが、ワールドプレミアで公開されたGRMNのリヤ・スライドドアの開閉シークエンスは日本のロボットアニメーションを見て育ってきた世代に対する訴求力はあるかもしれない……と感じてしまったのだが、いかがだろうか。