スバル初のスペシャルティカーがネオクラシックブームで人気再燃!? 極レアな「アルシオーネ」を3台所有! 希少車のさらに希少カラーを手に入れて日常使いに!

スバル初のスペシャルティカーは1980年代らしいシャープな直線基調のデザイン。この特徴的なフォルムとSFチックなコックピットから“宇宙船”などと称されることもあった。
2023年7月29日(土)、群馬サイクルスポーツセンター(群馬県利根郡みなかみ町)で開催された走って遊べる『群サイBIGMEET』。多数の来場者を集め大いに盛り上がったこのイベントだが、走行会はもちろんミーティングもあり、実に多彩なクルマがオーナーと共に集まった。そんな参加者の中から気になるクルマを取材してみた。まずは、近年再評価されるスバル初の“スペシャルティカー”『アルシオーネ』をピックアップ!
REPORT&PHOTO:橘 祐一(TACHIBANA Yuichi)

スバルのアルシオーネってどんなクルマ?

「アルシオーネ」というクルマをご存知だろうか。 株式会社SUBARU(スバル)の社名の由来にもなっている「すばる」は、牡牛座のプレアデス星団の和名である「昴」から命名されている。このプレアデス星団の中で最も明るい星「Alcyone」(日本名ではアルキオネ)から命名されたのが、1985年にスバル(当時の社名は富士重工業株式会社)初のスペシャルティカーとして誕生した「アルシオーネ」だ。現在のスバルのエンブレムに描かれている6つの星の中で、左上に大きく描かれているのがこのアルキオネで、スバルを代表するフラグシップとなるべく想いが込められている。

1985年にリリースされたスバル・アルシオーネ。同社初のスペシャルティカーとして、基幹車種であるレオーネのコンポーネンツを利用して開発された。当時流行のリトラクタブルヘッドライトを採用したクーペボディにスバル得意の4WDを組み合わせた。エクステリア、インテリアともに意欲的なデザインだったが、メカニズムはレオーネと共通するところが多くスペック的には意外とコンサバティブ。

1985年1月に開催されたデトロイト・モーターショーで「XT」として発表され、三代目レオーネをベースとしたパーソナルクーペとして、同年2月に発売された。6月には日本でも「アルシオーネ」の名前で発売されている。
プラットフォームはレオーネとほぼ共通で、エンジンはEA82型1.8L水平対向4気筒SOHCターボを搭載。フロントガラス、リヤガラスともに28度の傾斜角とするなど、フロントからリヤに向けて傾斜したシャープなウエッジシェイプフォルムや、国産車として初めてCd値(空気抵抗係数)が0.3を下回る0.29(FFモデル)を記録するなど話題を集めたものの、初年度の国内登録台数は3315台と不調であった。

1987年に追加された2.7L水平対向6気筒SOHCエンジン搭載モデル。日本初の量産型水平対向6気筒エンジンは、E82型1.8L水平対向4気筒に2気筒追加したもので、そのスムーズなエンジンフィールは高く評価されたものの、パワーウォーズが盛り上がる時代の中ではスペック的に見劣りしたのは否めなかった。

1987年にはER27型2.7L水平対向6気筒SOHCエンジン搭載モデルを追加したり、前期型ではパートタイムだった4WDをフルタイム化するほか、外観もブラッシュアップした後期型にマイナーチェンジするものの人気の回復には至らず、1991年にアルシオーネ・SVXにモデルチェンジする形で販売を終了している。

国内登録台数は200台超? そのうちの3台を所有するマニアックオーナー

フロントからリヤに向かって跳ね上がるラインはまさに楔形のウエッジシェイプ。フロント、リヤガラスは前後ともに28度という傾斜角を持つ。

この独特なフォルムを持つアルシオーネにはいまだファンが多く、日本国内でもまだ200台以上が登録されているというが、1986年式の1800VRに乗る鳴海さんもその一人。このスタイルに惚れ込んで、現在では3台も所有しているという変態、いや失礼、マニアだ。

ヘッドライトはスバル初のリトラクタブルを採用。ちなみに、これ以降の採用はないのでスバル唯一となった。
リヤエンドが少しだけ跳ね上がっているのが特徴。ボディサイズは4450×1690×1335mmとコンパクトながら数値以上の存在感がある。

比較的よく見かける(と言っても8000台しか国内販売されていない希少車だが)ホワイトではなく、数の少ないミディアム・グレーメタリックだったことから1年前に購入。不調だったエアサスをTEINの車高調に交換して、なんと普段の足にも使用しているのだとか。

左右非対称の2本スポークステアリングを採用。センターパッドの右側にはクルーズコントロールのスイッチが配置されている。スバルのトップモデルだけに、上級グレードのVRターボには最新の豪華装備が奢られていた。
メーターの両サイドにはサテライトスイッチを配置。ウインカー以外は、ヘッドライトやワイパー、パッシングもこのスイッチで行う。1980年代のインテリアで流行したスタイルだ。
オプション設定されていた液晶デジタルメーター「エレクトリック・インストルメントパネル」を装備。カラー液晶の採用は日本初だった。
空調系のスイッチを左のサテライトスイッチに配置するため、センターコンソールの吹き出し口は大きく、その下に時計やオーディオ類(カセットとラジオ)が占める。シフトレバーは飛行機の操縦桿をモチーフにしたガングリップタイプだ。
空調の温度と風量のコントロールパネルはセンターコンソールのサイドブレーキ横に配されている。ちなみに現在エアコンは故障中とのこと。

基本的には三代目のレオーネと共用パーツが多いので、消耗部品は問題なく手に入るという。とはいえ、三代目レオーネも生産終了から20年以上が経過しているし、内外装のパーツは専用品が多いので、このクルマを普段の足に使っているのはなかなかのツワモノだろう。

エンジンはレオーネのトップグレード(「GTターボ」)と共通のEA82型1781cc水平対向4気筒SOHCターボ。最高出力は120ps(ネット値)を発生。アルシオーネはボンネットを低くなったため、レオーネではエンジンルームに置いていたスペアタイヤはトランクに移された。
上段のキー右側部分がドアハンドルで、下側のパネルを奥に倒すとドアハンドルが引けるようになるという初見殺しのギミックになっている。ボディをなるべくフラッシュサーフェイス化して空力性能を向上させるための工夫だ。
パナスポーツ製のアルミホイールは5.5JJの13インチ。当時のスバル車はPCD140というかなり特殊なサイズだったため、今やホイールも貴重だ。タイヤは185/60R13サイズの横浜ゴム「A539」を装着。
4WDモデル(「VRターボ」)はオートセルフ・レベリングつきエアサスペンション「EP-S(エレクトロニューマチックサスペンション)」を採用していたが、部品在庫もなく、故障したらスプリングサスペンションへの置換が必須。
「4WDアバンギャルド」というキャッチフレーズが付けられていたが、2WDのFFモデル(「VSターボ」)もラインナップしていた。トランスミッションは5速MTと3速ATが用意され、FFはMTのみで途中からATを追加。マイナーチェンジでATは4速ATに進化した。
■主要諸元
全長×全幅×全高:4450mm×1690mm×1335mm
ホイールベース:2465mm
車両重量:1180kg
エンジン形式:EA82T
エンジン種類:水冷水平対向4気筒SOHCターボ
総排気量:1781cc
最高出力(ネット):120ps/5200rpm
最大トルク(ネット):18.2kgm/2400rpm
当時の新車価格:213.3万円

EJ20エンジン搭載アルシオーネ計画進行中!

他に所有している2台のアルシオーネは、シルバーの個体はノーマルの状態を維持しながら乗っているが、もう一台はWRブルーへ塗装してラリーカー風にドレスアップされている。しかもインプレッサWRX(GC8)を手に入れ、このエンジンや足回りをごっそり移植するという計画なのだとか。すでに計画は進行中なので、まもなくモンスターのアルシオーネが誕生することになるわけだ。

アルシオーネやオーナーの鳴海さんに興味が湧いた読者は、X(旧Twitter)で鳴海さんが情報発信しているので、覗いてみてはいかがだろうか?

鳴海さんの「X」。今回取材したアルシオーネ以外の個体も見ることができる。

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著者プロフィール

橘祐一 近影

橘祐一

神奈川県川崎市出身。雑誌編集者からフリーランスカメラマンを経て、現在はライター業がメイン。360ccの軽…