FWDのスバルってどう? スバル・クロストレック クロスオーバーの良いところを佐渡島で体験

SUBARU クロストレック Touring(FWD)
現行型クロストレックのラインアップにはFWDモデルがある。先代に当たるXVはAWDのみの設定だった。2022年12月〜23年7月までの販売実績では25%がFWDだった。スバルといえばAWD……という先入観があるが、クロストレックのFWDはどうか? スバル・レヴォーグレイバックの試乗で訪れた佐渡島でドライブした。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota) PHOTO:Motor-Fan.jp

FWDのスバルってどう?

SUBARU クロストレック Touring

スバル・クロストレックで佐渡島をドライブした。クロストレックにはAWD(常時全輪駆動)とFWD(前輪駆動)の2タイプが設定されている。ドライブのパートナーはFWDだった。先代にあたるXVはAWDのみの設定であり、FWDは新型クロストレックから設定されている。

パワーユニットは駆動方式に関係なく1種類のみ。e-BOXERと呼ぶ2.0L水平対向4気筒自然吸気エンジン(FB20型)とモーターの組み合わせだ。これに、リニアトロニックと呼ぶチェーン式CVT(無段変速機)を組み合わせる。エンジンの最高出力は145ps(107kW)/6000rpm、最大トルクは188Nm/4000rpm。モーターの最高出力は10kW、最大トルクは65Nmである。

エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター 型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000pm 最大トルク:188Nm/4000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48ℓ モーター:MA1型交流同期モーター 最高出力:13.6ps(10kW) 最大トルク:65Nm

出発地は佐渡島のほぼ中央に位置する「佐渡うどん蒼囲」だった。用意された試乗時間は3時間30分。推奨ルートは3タイプ用意されており、1つは佐渡金山などの史跡を巡るコース。2つめはたらい舟を体験し、歴史ある街並みを体験するコース。3つめはトキに関する施設を巡るコースだ。要するに、金山、たらい舟、トキの三択である。

佐渡島は北側に大佐渡があり、南側に小佐渡がある。サツマイモを並べたような2つの山の間を土砂が埋めることで地続きになり、間は平野になっている。佐渡うどん蒼囲があるのは平野の中央よりやや南西寄りだ。そこから数キロ南西に走ればもう海岸線である。海に至る道路沿いには全国チェーンの衣料品店やドラッグストアに本屋、飲食店が並んでいる。

海岸線に出てしまえば山の緑と海の青の世界である。信号はほとんどないし、先行車も後続車も稀で、中速域で淡々と走る状況が続く。平均燃費計は15.0km/Lを超える数字を表示していた。タイヤのグリップ限界の範囲内で走行しているからだろうが(それも限界のずいぶん内側で。試乗日は晴天で、路面はドライだった)、FWDであることにまるで痛痒を感じない。

全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1580mm ホイールベース:2670mm 車重:1540kg ルーフレールは5万5000円のオプション
トレッド:F1560mm/R1570mm 最小回転半径:5.4m
最低地上高:200mm
室内長×幅×高:1930mm×1505mm×1200mm 11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム+本革巻シフトレバー/ピアノブラック調シフトパネル、シフトブーツ、シャークフィンアンテナ、ドライバーモニタリングシステム、コンテクティッドサービス、リヤビューカメラのセットで17万6000円のオプション

佐渡金山にクロストレックで登る

佐渡金山は大佐渡側の西の端にある。佐渡うどん蒼囲からは16km程度だ。途中、岬をショートカットする格好で山道に入り、最後はなかなかの急勾配に転ずる。2名乗車プラス手荷物での移動だったが、エンジンの動力性能に関しては何ら不足を感じず、回転数をいたずらに高める必要なく、頼もしく駆け上がっていく。

センターラインがあるとはいえ道幅はタイトだが、クロストレックはコンパクトな車両サイズのため余計な気を使う必要がない。ちなみに全長×全幅×全高は4480mm×1800mm×1575mm、ホイールベースは2670mmだ。最低地上高が200mmあるSUVなのでアイポイントが高いのも、取り回しのしやすさに結びついている印象だ。

佐渡金山にて。

お目当ての佐渡金山には9時に着いた(4-10月は8:00〜17:30、11-3月は8:30〜17:00の営業)。大まかに分類すると江戸時代の掘削状況を見学するコースと、明治から平成元年の操業停止まで使用された坑道を見学するコースがある。筆者は後者の「明治官営鉱山コース」(大人1000円)を選択した。所要時間は約40分とある。

「道遊坑」という名の坑道に入る直前、「坑内の気温が低いので上着の着用をおすすめします」という旨の注意書きが視界に入った気がするが、時すでに遅しで(そもそもクルマに戻っても上着は置いてない)、暗い坑内に突入した。想像以上に寒かった。それもそのはずで10℃程度らしい。佐渡金山の坑内、夏でも寒いです。

佐渡金山の「明治官営鉱山コース」。坑道は外気温が35℃でも中は10℃!

佐渡にある天空の城ラピュタ(北沢浮遊選鉱場跡)

北沢浮遊選鉱場跡 佐渡島の「天空の城ラピュタ」として最近注目を集めているスポットだ。

見どころたっぷりだったので1時間半はゆうに見学できる自信はあったが(なんなら一日いてもいい)、きっかり40分で切り上げて次の目的地に向かった。北沢浮遊選鉱場跡である。恥ずかしながら、今回の佐渡訪問で初めて知った史跡である。有用な鉱物と不用な鉱物を選別する施設で、水と不純物を分離する直径50mのシックナーとともに、東洋一と謳われた施設群は国の史跡に指定されている。

佐渡金山から北沢浮遊選鉱場跡までは山を下る。ステアリングギヤ比は13.5:1
タイヤは225/60R17サイズのオールシーズンタイヤを履く。銘柄はヨコハマ GEOLANDAR G91 ブレーキは前後ともベンチレーテッドディスク
リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式
AWDでは電子制御式カップリングユニットが入るところが空いていることからもFWDモデルであることがわかる。

佐渡金山から北沢浮遊選鉱場跡までは山を下る格好で、2kmちょっとだ。山登りの際もそうだったが、クロストレックはステアリング操作に対して特段シャープでもなく、反対にダルでもなく、ちょうどいい間合いでラインをトレースしてくれるので、ストレスがない。つまり、気分良く運転ができる。それに、ちょっと乗っては降り、を繰り返すような使い方をする際、腰の上げ下ろしがあまり必要のないのもいい。観光地でこれを何度も繰り返していると、次第に「よっこらしょ」の声を思わず漏らしたくなるが、そういったストレスとは無縁だった。

北沢浮遊選鉱場跡から1kmちょっと、海岸沿いにある弁慶の挟み岩で小休止したあとは、時間が許す限り海岸線を北上し、帰着時間を見込んで折り返した。海岸線の地形に合わせてランダムにカーブが現れる。クロストレックはときに緩く、ときにきついカーブを、凪いでいる海のやさしい波をいなすように軽やかにクリアしていく。時間が許すことなら佐渡島を1周したいところだったがそうはいかず(1周200km超あるのだそう)、出発地に戻った。

佐渡うどんも捨てがたい。

佐渡で採れたぎばさ(海藻)を練り込んだ名物が佐渡うどん。美味しかった。
SUBARU クロストレック Touring
全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1540kg
サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:水平対向4気筒DOHC+モーター
型式:FB20
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:12.5
最高出力:145ps(107kW)/6000pm
最大トルク:188Nm/4000rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:48ℓ
モーター:MA1型交流同期モーター
最高出力:13.6ps(10kW)
最大トルク:65Nm
トランスミッション:リニアトロニックCVT
燃費:WLTCモード 16.4m/ℓ
 市街地モード13.6km/ℓ
 郊外モード:16.6km/ℓ
 高速道路:17.9km/ℓ
車両本体価格:266万2000円(メーカーオプション56万1000円)計322万3000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…