華麗な走りはダンスの如く「日産フェアレディZ」【最新スポーツカー 車種別解説 NISSAN FAIRLADY Z】

ハイパフォーマンスカーとして目指したのは原点とも言える“操る楽しさ"を極めること。22年夏にフルモデルチェンジを果たした「日産フェアレディZ」はドライバーの好みによってベースグレード、スポーツモデルのS、ツアラー志向のT、最上級グレードのST、そしてNISMOモデルの5グレードを用意した。それぞれ乗り味を明確にしつつ、どのグレードにもコンセプト通りの踊るような楽しさが保証されている。
REPORT:石井昌道(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽

14年ぶりに登場した新型が重視したのは”操る楽しさ”

2022年夏に発売となった新型フェアレディZ。6代目は08年デビューなので14年ぶりに新型の登場となったが、プラットフォームはキャリーオーバーされ、型式もZ34からRZ34と数字が変わらないため、厳密にはビッグマイナーチェンジだと言われる。

エクステリア

伝統のロングノーズ&ショートデッキを採用し、初代Zを彷彿とさせる長方形のフロントグリル、Z32の現代的解釈といえるLEDリヤコンビランプが印象的。2024年モデルでは「432オレンジ」という新ボディ色が加わった。
405㎰/475Nmを誇る3.0ℓ V6エンジン。小径ターボや水冷式インタークーラー、電動の可変バルブタイミング機構により低速域からレスポンスに優れる。車内で聞こえるエンジン音の質を高めるアクティブ・サウンド・コントロールはZ専用チューンで、気分を盛り上げる。
写真は新開発トレッドゴム、Zに合わせたパターンと骨格を採用したブリヂストン・ポテンザS007。「S」、「ST」はレイズ製19インチアルミホイール、アルミキャリパー対向ピストンブレーキを装備。
大開口ではあるが、荷室手前側の深さは約200㎜しかなく、高さのある荷物には不向きだ。ホイールハウスの張り出しが大きいため、避けながら積載することになる。奥行きは長く、約870㎜に達する。

しかし、フルモデルチェンジでもプラットフォームを引き継ぐ例はいくらでもあるし、80%の部品は新しいそうなので、Z35にはならなかったが、7代目と呼んでいいのだろう。むしろ型式を新しくすることに伴う認証のやり直し等のコストが抑えられたことを歓迎するべきだ。そんな新型フェアレディZのコンセプトは〝ダンスパートナー〞。同社のGT-Rは同じハイパフォーマンスカーでもサーキットのラップタイムを重視したレーシーなイメージであるのに対して、操る楽しさに力点を置いているということだ。

インテリア

伝統の3連メーターがZらしさを主張。「NissanConnectナビ」搭載の9インチディスプレイが新しさを感じさせる一方で、インテリアの質感はもう一歩という印象だ。ナビやエアコンダイヤルなどの操作性は良好そのもの。なお、2024年モデルではブルーの特別内装色が追加された。
腰まわりのフィット感に優れる一方で、肩まわりに適度な余裕があるため大柄な人でも窮屈ではないはず。運転席はサイサポート、前後別々に上下するハイト機構付き。ステアリングのチルト&テレスコピック調整も可能なので運転姿勢も決めやすい。
12.3インチの液晶メーターは、中央に回転計を表示するほか、ナビやオーディオを大きく表示することも可能。
6速MTはスムーズに変速できる一方で、ストロークは長め。
足元は広く、3ペダルの配置も適正。クラッチはやや軽い。

エンジンは従来のV6 3.7 ℓNAからV6 3.0ℓツインターボへ換装。基本的にはスカイライン400Rと同様で、ターボ回転センサーを用いて限界まで回転を引き上げることで405㎰を達成した。フェアレディZでは、最大トルクの発生回転数もより高回転まで引き上げられている。トランスミッションは6速MTを残してくれたことがうれしいが、新開発の9速ATも目新しい。グレードはベースモデルに、スポーツ志向のバージョンS、ツアラー志向のバージョンT、最上級のバージョンSTとNISMOの5つとなる。

懐の深いサスペンションと官能的なターボエンジン

ワインディングロードで感心するるのが、サスペンションがしなやかなことだ。FRとしては限界に近いパワーを得ていて、なおかつショートホイールベース、さらに新型はフロントのトレッドおよびタイヤ幅を拡げて俊敏性を高めているのだから、さぞかしロールやピッチングを抑えた硬い足まわりなのかと思いきや、逆なのだ。これはストロークを活かしてタイヤを路面に押しつけていく特性にしようという意志の表れ。意外なほどボディは動くが、ストロークしていくほどに粘りが増していくので安心感がある。硬い足まわりだとグリップの限界を超えたときの動きが早くなるが、フェアレディZはコントローラブルなのだ。ダンスパートナーと呼ぶ意味が即座に理解できた。

うれしい装備

オペレーターサービス、「AppleCarPlay」、「Android Auto」などのスマホ連携に対応。
「シンクロレブコントロール」オンでシフトダウン時に自動でエンジン回転数を合わせてくれる。
「ST」と「T」は、運転席と助手席にハイ/ロー2段切替式のシートヒーターを備える。
リッド付きセンターコンソールボックスのほか、シート後方にトレーを用意。

400Rでもパワーとレスポンスが感動的だったエンジンはさらに洗練されている。特に高回転が伸びやか、かつアクティブ・サウンド・コントロールの効果も手伝って官能的なサウンドが味わえる。パワーも相当なもので、トラクションコントロールを解除してアクセルを踏みつければ容易にホイールスピンが発生するほどだ。それでも懐の深いサスペンションのおかげで、リヤタイヤの限界と相談しながら走らせるのが楽しい。6速MTにプリミティブな楽しさがあるのはもちろんだが、9速ATはダイレクト感があって、クロスレシオでテンポ良くシフトしていくのが気持ちいい。トランスミッションのチョイスが悩ましいモデルなのだ。

Country   Japan
Debut     2022年1月(24年モデル発表:23年8月)
車両本体価格  539万8800円~920万400円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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