日常と非日常の狭間で際立つ走り「アルピーヌ A110」【最新スポーツカー 車種別解説 ALPINE A110 】

誕生から60年の時を経て、リヤドライブ、リア駆動だった初代から、2018年にミッドシップカーとなって復活した2代目「アルピーヌ A110」。衝突安全機能を満たしつつ、かつてWRCチャンプカーとなった初代と同様にワイルドなドライビングにもラリーカーのようにしなやかで乗りやすく、多様なライフスタイルに合うスポーツカーとして現代にマッチしている。レジェンドをリスペクトしながらも新たなキャラクターを際立たせたフォルムはエレガントで軽やかで象徴的だ。
REPORT:石井昌道(本文)/編集部(写真解説) PHOTO:井上 誠 

自由自在なコントロール性は軽量ミッドシップならでは

かつての名車が約40年の時を経て復活。オリジナルはRR(リヤエンジン・リヤ駆動)だったが、新生A110はミッドシップとなった。

エクステリア

かつてのアルピーヌA110のイメージを、現代的に巧みに昇華させたフォルム。ボディサイドのキャラクターラインなど見るほどに先代A110へのオマージュが息づくが、レトロさとは無縁な現代的なスポーツカーとして完成している。
標準モデルと「GT」はフロント205 / 4 0R18 、リヤ235/40R18サイズのタイヤを履くが、写真の「S」と「R」はフロント215/40R18 、リヤ245/40R18とサイズアップする。ちなみに写真のオレンジキャリパーは「S 」だけのアイテムだ。

現代の衝突安全性能等を満たしながら軽量コンパクトに、かつエレガントな装いにするのがテーマであり、車両重量は約100㎏とライトウエイト。エンジンは1.8ℓターボでスタンダードは252㎰、A110SやA110GTは300㎰でいずれも7速DCTと組み合わされる。コンパクトなミッドシップ・スポーツはリヤサスペンションがストラットであることが多いが、A110は四輪ダブルウイッシュボーン。ストロークが深くなってもタイヤの接地性変化が少ないことを活かして、しなやかに路面を捉えていくのが特徴的だ。リヤの限界が高い上にコントローラブルでもあるので、回頭性をシャープにしてもバランスが取れるとあって、ノーズの軽さを最大限に引き出したハンドリングが絶品。ニュートラルステアに近く、この上なく気持ち良く曲がっていく。

インテリア

左右の速度/回転計の間に、小径三眼サブメーターを逆三角形に配置するのは初代A110に倣ったもの。センターディスプレイ下のスイッチやボディ同色のドアインナーパネルも初代A110の流れを汲む。一方でセンターコンソール下の小物置き場など使い勝手も考えられている。
写真の「S」と標準モデルには、サベルト製軽量モノコックバケットシートを搭載。その重量は僅か13.1㎏! 高い剛性感としっかりしたサポート性が頼もしい。
トランスミッションは7速DCT。シフトはレバーではなく、三つの大型ボタンを押して操作する。
ペダルにはフットレストも含めて軽量化と滑り止めを兼ねた穴が空けられているのがスポーツカーらしさを感じる。

スタンダードの足まわりはしなやかさが際立ち、荒れた路面のワインディングロードでも乗りやすく、まるでラリーカーのよう。SやRになると徐々に引き締まっていってサーキット向きになっていく。それでも日常の移動が嫌にならない範囲の乗り心地は確保されているのがアルピーヌのもち味でもある。エレガントな装いも含めて、デイリースポーツカーとして愛でたくなるモデルだ。

Country       France
Debut        2018年12月(A110R追加:22年12月)
車両本体価格      875万円~1550万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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