5人家族のファミリーカーだったAE86! 26年乗り続けた完成形! 【第19回まつどクラシックカーフェスティバル2023】

ネオクラ人気が止まらない。1980年代から2000年前後までの古いクルマたちへ年齢層問わないマニアからの支持が集まっている。なかでもハチロクことAE86レビン・トレノは漫画やアニメの影響もあって大人気。だが、長年乗り続けファミリーカーにしていた人もいるのだ。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1985年式トヨタ・スプリンタートレノGT-V。

AE86型カローラレビン/スプリンタートレノは現在、新車価格の倍以上もの中古車が存在するほど相場が高騰している。理由の一つに『頭文字D』などの漫画、アニメで主人公が乗っていたことが挙げられる。主人公と同じ白黒ツートンの「パンダトレノ」は人気の筆頭株で、多くの漫画・アニメファンが憧れる対象だ。10月7日から8日にかけて開催された「まつどクラシックカーフェスティバル」の会場にも、パンダトレノが展示されていた。しかも結構なカスタマイズが施されている。やはり漫画やアニメの影響を受けたオーナーなのだろうかと近くにいた所有者の方に話しかけると、意外な言葉が返ってきた。

3ドアのトレノにこだわって探し出された。

「近所に住んでいた知り合いのお兄さんが新車で買って乗っていた姿に憧れました」という。オーナーの佐田圭民さんは現在50歳だから、35年以上前のことだろう。当時はまだ免許取得年齢に達していなかったものの、お父さんや叔父さんが無類のクルマ好きで、都内の自宅にはサバンナRX-3が長らく置いてあった。そんな環境に育ったので自然とクルマ、特にスポーツカーが好きになったそうだ。

オプションのフォグランプもしっかり実働。

だから18歳で免許を取得したら、すぐさま自分の愛車を手に入れたのかと思いきや、意外なことにクルマを購入するのはずっと先のこと。というのも日頃の移動は公共交通手段で事足りる便利な環境だったから。生まれも育ちも江戸川区なのでクルマを所有する意味があまりない。結婚して子供にも恵まれたが、しばらくは家族で電車やバスに乗っていた。事情が変わるのが3人目の出産。さすがに子供を3人抱えて公共交通手段で移動するのは無理がある。そこでクルマを購入することにしたのだ。

ホイールはRSワタナベのRS8を履く。

長らく近所のお兄さんが乗っていたパンダトレノに憧れてきたから、初めての愛車に選ぶのもパンダトレノだろうと思いきや、またしても異なる返事が。当時すでに『頭文字D』がアニメ化されていてAE86、なかでもパンダトレノの相場は上昇傾向にあった。東京都内で26年ほど前だと月極駐車場を借りるにも数万円単位の金額になる。そこで予算内に収まるAE92レビンを手に入れたのだ。

エンジンスワップによりデカールもカスタム。

AE92レビンながら子供3人と奥様を乗せるファミリーカーとして活躍していたが、やはりモヤモヤした気持ちは収まらず中古車雑誌を眺める日々。我慢の日々が半年ほど続いた頃に一念発起。探しに探してワンオーナーのフルノーマル車を見つけると乗り換えることにされた。ただしワンオーナー車と言っても程度が良かったわけではない。塗装は全体的にくたびれていたので磨き続けることになったが、またも一念発起して全塗装することにした。

AE111用5バルブの4A-GEUに載せ換えた。

全塗装と前後してエンジンにも手を加えている。ハイコンプ仕様のピストンとメタルガスケットを組みつつ、ハイカムシャフトによりレスポンスとパワーを向上された。この仕様でファミリーカーからサーキット走行会まで幅広く活躍していたのだが、長年乗り続けたことでエンジンは寿命を迎える。そこで次なる手段として選んだのが同じ4A-GEU型エンジンながらAE111型レビン・トレノに搭載された5バルブ仕様に載せ換えることにした。

TRDステアリングや追加メーターで室内をアレンジ。

5バルブ4A-Gも以前と同じようにハイコンプピストンとガスケットを変更して高圧縮比としたが、それ以外はノーマルのまま。それでもハイパワー化を実現しており、ノーマルとは明らかに異なる加速力を示してくれるという。ファミリーカーという側面も持つため、あまりに実用性のない仕様にはしたくなかったから落ち着いたチューニング。だが、結果的に長く乗れることにもつながったのだろう。

コラム上にタコメーターを追加。
運転席はフルバケット、助手席はリクライニングのレカロシートへ変更。

当初の頃はチャイルドシートを固定して家族5人でドライブする日が続いたが、現在ではお子さんも運転できる年齢になった。だからと言ってさらなる改造を施すわけでもない。というのも現在の仕様に満足されているからで、すでにサーキット走行会に参加することより旧車イベントに参加することが多くった。このパンダトレノのドアを見れば「〇〇豆腐店」に似せた「昭和の杜博物館」というマグネットシートが貼られている。不思議に思い聞いてみると、ボランティアで博物館のスタッフをされているとのこと。

トヨタ純正オプションのドアスタビライザーはボディ剛性に大きく貢献する。

昭和の杜博物館は「まつどクラシックカーフェスティバル」の主催組織でもある。だから、今回4年ぶりで開催された同イベントへは愛車を展示しつつスタッフも務めている。旧車イベントは常連になる人、運営側に加わってしまう人が意外にも多い。同じ趣味を持つもの同士で意気投合した結果、顔を合わせるのが楽しみになってしまうようだ。クルマ趣味は見て乗って楽しむのが一般的だが、旧車の場合は人と人をつなげてくれるツールにもなるのだろう。

ボンネットやリトラカバーはカーボン製に変更している。

キーワードで検索する

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…