CMF-Bというルノー・日産・三菱アライアンスのコンパクトカークラスの最新モジュラープラットフォームに第2世代e-POWERを搭載した新型ノートは、日産にとって国内の反転攻勢のための非常に重要なモデルだ。
新型ノートは発売1カ月で2万台を受注(月販目標台数は8000台)し、その後は、
2021年1月:7532台
2月:7246台
3月:13352台
4月:5711台
5月:5962台
6月:7076台
7月:6657台
8月:7157台
9月:6830台
という販売状況だ。すべてのモデルがe-POWERで、ライバルたちが設定する100万円台のノンハイブリッドモデルを用意しないノートはセールス的に不利だ。しかし、トヨタ・ヤリスにはだいぶ差をつけられているが、ホンダ・フィットよりは好調に売れている。
さて、本稿のテーマは、4WDモデルである。
4WDモデルは、北関東以北の降雪地帯では販売上必須だ。どんなに燃費が優れていても4WDがないのは大きなハンデだ。先代ノートe-POWERにも4WDモデルがあった。現行ヤリスHYBRIDにもフィットe:HEVにも4WDモデルがある。
先代ノートe-POWER:リヤアクスルに4.8ps/15Nmのモーター
ヤリスHYBRID:リヤアクスルに5.3ps/52Nmのモーター
フィットe:HEV:カップリング式オンデマンド4WD
先代ノートとヤリスの4WDは、いわゆるモーターアシスト4WDで、滑りやすい路面での走り出しにメリットはあるが、速度が上がるとアシストはキャンセルされて通常のFFになる。ちょこっとだけアシストしてくれる4WDなのだ。
これに対して、新型ノートの電動4WDは、本格電動4WDだ。
リヤアクスルのモーターは
MM48型交流同期モーター
最高出力:68ps(50kW)/4775-10024rpm
最大トルク:100Nm/0-4775rpm
68ps/100Nmと言えば、ほぼ軽自動車のターボモデルのスペックと同じ(将来登場する軽自動車サイズのEVにも使うのだろう)。
せっかくなので、他のリヤモーターのスペックも載せておこう。
■前型日産ノート
N2型直流モーター
最高出力:4.8ps(3.5kW)/4000rpm
最大トルク:15Nm/1200rpm
■トヨタ・ヤリスHYBRID
1MN型交流誘導モーター
最高出力:5.3ps(3.9kW)
最大トルク:52Nm
■トヨタ・プリウスE-Four
1MN型交流誘導モーター
最高出力:7.2ps(5.3kW)
最大トルク:55Nm
※カムリも同じ1MN型
68ps/100Nmがどれほど強力か、これでわかるだろう。匹敵するのは、
■トヨタRAV4 HYBRID
4MN型交流同期モーター
最高出力:54ps(40kW)
最大トルク:121Nmである。
FFモデルと4WDモデル、どちらを選ぶべきか?
燃費の話をすると
WLTCモード燃費:4WD 23.8km/ℓ(FF 28.4km/ℓ)
市街地モード23.1km/ℓ(28.0km/ℓ)
郊外モード25.8km/ℓ(30.7km/ℓ)
高速道路モード22.9km/ℓ(27.2km/ℓ)
と、当然120kg軽いFFモデルの方が良好だ。
いつものように、都内の市街地を走って帰宅した翌日に、三浦半島先端の城ヶ島まで試乗した。
ドライブモードはFFモデルと同じくSPORT/ECO/NORMALで、デフォルトはECOモードだ。ECOモードだと、ほぼアクセルペダルだけでスピードコントロールできる「ワンペダル・ドライブ」ができる。停止まではできないが、通常はほぼワンペダルで済む。これは、やはり楽しい。
FFモデルと違うのは、エネルギーモニターで見ていると、常時後輪に駆動力が配分されていることと、アクセルを緩めて回生ブレーキがかかるときに、4輪で回生していることだ。モニターのなかの前後輪が回生するときは薄いブルーになる。
第2世代のe-POWERの静粛性は大きく上がっているから、エンジンが始動していても気にはならないが、4WDモデルの方がエンジンがかかる頻度が高い気がした。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は、FFも4WDも1.5kWhで同じ。となれば、発電する頻度が高くなるのも頷ける。とはいえ、だからどうということもない。先代(つまり最初のe-POWER)と違って、エンジンがかかってもがっかりするほどの音も振動もないからだ。
ノートで4WDを選ぶ人の多くは、冬季のことを考えてだろう。冬の安心とそれ以外のしっかり感に25万8500円を支払うのは、アリか? もちろんアリだ。前述したように、新しいノート4WDは、常に4WDのメリットを享受できる。前後輪のトルク配分を緻密に制御できるモーター駆動だから、自然で気持ちのいい走りが実現できている。
e-POWER 4WDの専用装備として、
●ヒーター付ドアミラー
●前席ヒーター付シート
●リヤヒーターダクト
●高濃度不凍液
●PTC素子ヒーター
がある。これを見てもわかるように、ターゲットは寒冷地だ。だが、e-POWERが新しいリヤ電動アクスルを手に入れたことで、新しい展開も考えられる。冬以外でも4WDのメリットがあることもそうだが、積極的に走りに振ったモデルも作れるだろう(個人的にはさほど興味はないが、新型ノートe-POWER NISMO 4WDモデルが登場するなら、とても面白いクルマになりそう)。
最後に、燃費の話を。
今回、3日間で走った燃費は
総走行距離314.6kmで22.2km/ℓだった。(平均速度38km/h)
前回、FFモデルを試乗したときの燃費は
総走行距離347.3kmで22.3km/ℓだった(平均速度36km/h)
なんと、燃費はほぼ同じだった。これは、なかなかすごいことだと思う。トルク制御が緻密なことと4輪で回生できることが、おそらくこの燃費の良さの要因だろう。
ライバルたちの4WDグレードの価格を記しておく
■日産ノート
S-FOUR:228万8000円
X-FOUR:244万5300円
■トヨタ・ヤリス
ヤリスHYBRID Xの4WDモデル:224万1000円
ヤリスHYBRID Zの4WDモデル:249万3000円
■ホンダ・フィット
フィットe:HEV HOMEの4WDモデル:226万6000円
フィットe:HEV リュクスの4WDモデル:253万6600円
こうしてみると、差額の25万8500円の負担が大きければ、X-FOURではなくS-FOURを選ぶのがいい。ただし、プロパイロットなどの魅力的なメーカーオプションを付けると、どちらにせよ軽く300万円を超えるというのも、お忘れなく。
日産ノート X FOUR 全長×全幅×全高:4045mm×1695mm×1520mm ホイールベース:2580mm 車重:1220kg サスペンション:Fストラット式 Rトーションビーム式 駆動方式:4WD エンジン形式:直列3気筒DOHC+e-POWER エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000rpm 最大トルク:103Nm/4800rpm 過給機:× 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー フロントモーター:EM47型交流同期モーター 最高出力:116ps(85kW)/2900-10341rpm 最大トルク:280Nm/0-2900rpm リヤモーター:MM48型交流同期モーター 最高出力:68ps(50kW)/4775-10024rpm 最大トルク:100Nm/0-4775rpm
メーカーオプション:77万7700円 42万200円(インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェントルームミラー+USB電源ソケット+ワイヤレス充電機+NISSAN CONNECTナビゲーションシステム地デジ内蔵+NISSAN CONNECT専用車載ユニット+プロパイロット+SOSコール+インテリジェントBSI後側方衝突防止支援システム+BSW+RCTA後退時車両検知警報 2万2000円(クリアビューパッケージ) 33万5500円(185/60R16タイヤ+アルミホイール+LEDヘッドライト+アダプティブLEDヘッドライトシステム+LEDフォグランプ+本革巻ステアリング+ピアノブラック調+リヤセンターアームレスト ディーラーOP:17万5440円 合計すると358万500円