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BMWの「Power of Choice」とは?
BMW X1はCセグメントサイズのプレミアム・コンパクトSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)で、三代目(U11型)になる。2022年6月にドイツで発表され、10月から欧州で販売、中国にはロングホイールベースモデルも用意している。
新型X1は2シリーズのアクティブツアラーと同様にFF用プラットフォームを採用している。駆動方式は、国内は全モデルxDrive(AWD)モデルで展開している。ボディサイズは全長4500mm、全幅1835mm、全高1645mmで、BEVのiX1のみアダプティブMサスペンションを標準装備しているため20mm低く1620mmになっている。ホイールベースは2690mmだ。
パワートレーンは直列4気筒の2.0Lガソリンターボ(B48型)、同じく2.0L直列4気筒のディーゼル(B47型)+マイルドハイブリッド、そして前後に電気駆動モーターを搭載するBEVをラインアップしている。ちなみにMモデルのM35i xDriveは、Mパフォーマンスモデルであり、他のラインアップとは一線を画す位置付けだ。
BMWジャパンでは、パワーユニットの違いは「Power of Choice」という概念で選択して欲しいという。それはユーザーの利用環境や使用方法によって、最適なパワーユニットを選び、環境負荷を可能な範囲で軽減できればと考えているわけだ。
そのためにBMWジャパンでは、パワーユニットが違っても価格に大きな差が生じないような価格設定にしているという。これはX1だけでなく、他のモデルも同様だ。自分の利用環境ではBEVがいいと感じても値段が高いから断念することにならないための施策というわけだ。もっともBEVに関しては国や自治体の補助金が前提となる価格設定ではあるが。
価格を覗いてみると、ガソリンのX1 xDrive 20i M Sportグレードが586万円、ディーゼルのX1 xDrive 20d M Sportが606万円で価格差20万円。そしてBEVのiX1 xDrive 30 M Sportが698万円で、ガソリンとの価格差は112万円、ディーゼルとは92万円で、そこから補助金を差し引けば価格差は50万円程度になる価格設定になっているのだ。
・ガソリン X1 xDrive20i M Sport 586万円
・ディーゼル+48 MHEV X1 xDrive20d M Sport 606万円
・BEV:iX1 xDrive30 M Sport 698万円
BMW X1 xDrive20d M Sport 全長×全幅×全高:4500mm×1835mm×1625mm ホイールベース:2690mm 車重:1740kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式 駆動方式:4WD エンジン 形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCディーゼルターボ 型式:B47型 排気量:1995cc ボア×ストローク:94.0mm×90.0mm 圧縮比: 最高出力:150ps(110kW)/4000pm 最大トルク:360Nm/1500-2500rpm 燃料:軽油 燃料タンク:54L モーター DC0005N0型交流同期モーター 最高出力:10ps(14kW) 最大トルク:55Nm 燃費:WLTCモード 19.5km/ℓ 市街地モード:13.8km/ℓ 郊外モード:20.8km/ℓ 高速道路モード:22.6km/ℓ トランスミッション:7速DCT 車両本体価格:606万円
どのパワートレーンがお勧めか? BEVがベスト?
そうなると、どのモデルがお勧めになるのか。やはり使い方と充電環境を熟慮することになる。BMWジャパンに販売状況からユーザー動向を聞くと、キャンプやサーフィンなどアクティブに活動する人はディーゼルを選択する傾向で、男性が多いと。そしてエンジンへの愛着がある人もそれなりにいて、キビキビ走る性能を楽しむという人も多いという。BEVのiX1に関してはやはり戸建てで自宅での充電環境が整っている人がほとんどということだ。
この3モデルを試乗してみると、ICEモデルのガソリン、ディーゼルのどちらも発進からある速度までの加速時にはエンジン音が聞こえてくるが、一定車速で走行する状況になるとエンジン音はほとんど聞こえなくなり、静かで滑るように走る。
BEVのiX1はさらに静粛性が高く、滑るように走ることができる。風切り音はなく、走行音としては地面からの音が聞こえるレベルだ。
そうなってくると、エンジンへのこだわりは何だろう?という気になってくる。シルキー6(直列6気筒)のような滑らかさやV8のようなサウンドも含めた官能的なフィーリングは別として、4気筒の滑らかで静かなICEとなると、環境さえ整えばBEVがベストセレクトではないかと感じてしまう。ドライバビリティではBEVがもっとも扱いやすく、打てば響くレスポンスだと感じる。
一方で体に伝わってくる官能的なフィーリングはガソリン、ディーゼル、BEVでわずかずつではあるが異なっている。言葉で表現しにくい感性領域の違いだが、とりわけBEVはICEと比べるとタイヤと路面のコンタクトフィールが薄い。ガソリンとディーゼルでは軽快さに違いがあり、ガソリンは気持ちいいのだ。
BEVのiX1を選択するなら
もしBEVを選択するならBEVのネガも正しく理解する必要がある。もっとも気にするのは航続距離と充電環境だろう。iX1 xDrive 30 M Sportは66.5kWhの総電力量のバッテリーを搭載し、465kmの航続距離がWLTCモードでのデータだ。実用的にも400kmは走行可能なので実用性・利便性は十分だ。
またバッテリーの使い方では20%から80%の残量で利用したい(100%のフル充電ではなく)。常に100%でないと不安になるという人もいると思うが、そこはエンジン車の感覚からシフトチェンジしてほしい。80%からの充電には電気が入りにくく、また100%では回生ブレーキが使えないデメリットも出てくる(もちろんメカニカルブレーキで問題なく制動できるが)。そして、残り20%付近になっても50~100km程度は走行できるので、急速充電器を見つけることはできるはずだ。
そして車庫に保管している間の自然放電も気になるレベルにはない。余程の長期間でない限り自然放電はないと考えていい。長期間乗らないという使い方であればBEVは向いていないと考えた方がいい。あるいは所有そのものが疑問になってくる。
ただ自宅で充電する場合、66.5kWhの電力量を持つバッテリーに200Vで何A(アンペア)で充電するかで充電時間が変わってくる。200Vで15Aなら3kW、30Aなら6kWの出力となる。20%(13.3kWh)から80%(53.2kWh)まで充電する場合、3kWなら13.3時間、6kWなら6.65時間となる(あくまでもロスがないと仮定してだが)。また自宅に太陽光パネルなど別な電源があれば。BEV所有にはメリットは大きい。
こうしたことを踏まえ筆者の場合はどのモデルになるかを考えた。BEVを選択したと仮定する。その理由はICEでは絶対にできないBEVレスポンスの良さとパワー、そして静粛性があるからだ。BMWらしい官能フィールはやや薄いものの、レスポンスの良さは別な快感を生み出していると感じられるだろう。さらに普通充電器の設置費用は10万円前後は必要になるものの、ガソリン代がかからないことを考慮すると現実的には魅力だ。
しかし、集合住宅に住んでいることを考えるとBEVのハードルは一気に上がる。その場合は、ディーゼル+マイルドハイブリッドという選択肢に浮上する。ディーゼルターボ+MHEVは、ドライバビリティという点でも不満ない。ガソリン車に比べ、軽快さは鈍るものの、低速域でのレスポンスやトルク感はガソリン車を上回る。また現実的には燃料代の違いが大きく影響してくるからだ(ディーゼルの方が燃料代が安い)。
「Power of Choice」は、一人ひとりで異なる正解が見つかる。これが自動車大変革時代の現在地ということだ。
BMW iX1 xDrive30 全長×全幅×全高:4500mm×1835mm×1620mm ホイールベース:2690mm 車重:2030kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式 駆動方式:4WD モーター フロント:HB001N0型交流同期モーター 定格出力:55kW(75ps) 最高出力:140kW(190ps)/8000rpm 最大トルク:247Nm/0-4900rpm リヤ:HB0002N0型交流同期モーター 定格出力:55kW(75ps) 最高出力:140kW(190ps)/8000rpm 最大トルク:247Nm/0-4900rpm システムトータル最高出力:200kW(272ps) システムトータル最大トルク:494Nm 駆動用バッテリー リチウムイオン電池 総電圧:286.3V 総電力量:66.5kWh 交流電力量消費率WLTCモード:155Wh/km 市街地モード155Wh/km 郊外モード148Wh/km 高速道路モード162Wh/km 一充電航続距離WLTCモード465km 車両本体価格:698万円