三菱ミラージュ・サイボーグはエンジンとトランスミッションを載せ換え&17インチホイールで走りもスタイルも磨きをかける!!

2023年7月29日(土)、群馬サイクルスポーツセンター(群馬県利根郡みなかみ町)で開催された走って遊べる『群サイBIGMEET』。多数の来場者を集め大いに盛り上がったこのイベントだが、走行会はもちろんミーティングもあり、実に多彩なクルマがオーナーと共に集まった。そんな参加者の中から気になるクルマを取材してみた。今回はオーナーが32年間所有しているという三菱ミラージュ・サイボーグ!
REPORT&PHOTO:橘 祐一(TACHIBANA Yuichi)

オシャレモデルからスパルタンモデルまで
豊富なグレードを展開した三代目ミラージュ

現行モデルで六代目となるミラージュだが、2012年日本発売以来10年のモデルライフを終えることになる。

今年3月、惜しまれつつ日本国内での販売を終了した三菱ミラージュ。その誕生は今から45年前、1978年まで遡る。軽自動車のミニカとランサーの間を埋めるコンパクトカーとして開発され、三菱自動車として初となるFFを採用している。当時は各社からドアハッチバックの小型車が登場していたが、北米での販売を意識したフラッシュサーフェースのデザインは先進的で、インテリアもコラムスイッチを廃するなど凝ったデザインが施され、これまでの国産車とは違った雰囲気を醸し出していた。

初代ミラージュ(1978年〜1983年)
三菱初のFF車であり、4速MT車には2速の副変速機を備える「スーパーシフト」を採用して話題となった。エンジンは1.2L、1.4L、1.6L、ボディは3ドア/5ドアのハッチバックと、後にセダンも追加された。

1983年には二代目にフルモデルチェンジ。初期型のプラットフォームを引き継ぎながらもひとまわり大きなボディが与えられていた。ちなみに、マイナーチェンジした1984年のCMで「エリマキトカゲ」が登場し、日本中でエリマキトカゲ・ブームが起きた。

二代目ミラージュ(1983年〜1987年)
エンジンは1.3L、1.5L、1.6Lターボ、1.8L(ワゴンのみ)、1.8Lディーゼルとややスープアップ。ボディは先代から続く3ドア/5ドアのハッチバックとセダンに加え、1985年にバン/ワゴンも加わった。バン/ワゴンは三代目へのモデルチェンジ後も1992年までリベロに切り替わるまで併売された。

三代目のミラージュが登場したのは1987年。
1980年代に入ると日本車の性能は飛躍的に向上して輸出台数も大幅に増え、日米経済摩擦で問題となるほどに。F1をはじめとするモータースポーツも人気を集め、当時の若者は次々と発表される新型車に注目していた、そんな時代。先代までのスクエアなフォルムから一新したボディデザインは、曲線を多用しながらも、シャープな印象を与えるスタイリッシュな雰囲気になり、CMやカタログなどには「社交性動物。ミラージュ変新。」というコピーがつけられた。

三代目ミラージュ(1987年〜1991年)
3ドアハッチバックと4ドアセダンがあり、3ドアハッチバックはベーシックグレードの「スイフト」、ラグジュアリーグレードの「ファビオ」、スポーツグレードの「サイボーグ」に加え、クォーターウインドーをパネルで塞いだ2シーターの「ザイビクス」というユニークなモデルもラインナップされていた。搭載されるエンジンは全て4気筒で、1.3L、 1.5L、1.6L、1.6Lターボのガソリンエンジンと1.8Lディーゼルが用意されていた。

ちなみに、その後には「スイフトと彼は、A型です」という、それぞれのグレードと血液型をかけたフレーズが添えられていた。CMではモデルチェンジされる1991年まで、全てのモデルで松任谷由実の曲が使用され、ミラージュといえばユーミンというイメージが定着している人も多いかもしれない。

お姉さんの愛車を受け継ぎ、免許取得以来32年間乗り続けるオーナー

ボディカラーはランサーエボリューションⅦの純正色にオールペイント。フロントはワンオフ加工の車高調、リヤはクスコのランサーエボⅠ用の車高調でローダウンしている。

この三代目ミラージュを32年間乗り続けている@まーくんさんは、このクルマが免許を取って初めて所有したクルマだという。
1989年式のサイボーグ4WDで、4G61型の1595cc4気筒DOHCターボ、通称サイクロンエンジンを搭載。ちなみに三菱の市販車用DOHCエンジンは1972年に生産を終了したギャランGTO・MR以来の採用となった。TD04ターボユニットを搭載し、最高出力は当時クラス最大の145psを発生する。インタークーラーを装着した後期型は160psに出力アップしている。

元々は130psのNAエンジンだったが、後期型インタークーラーターボの160psエンジンに積み替えられている。併せて5速MTにも変更して公認を取得している。
ヘッドカバーもブルーにペイント。プラグホールのカバーはギャランAMG(4G63)用のものを装着している。わずか500台しか販売されなかった希少なクルマのパーツだ。

このミラージュは@まーくんさんが二人目のオーナー。最初に購入したのは実の姉なのだそう。
当時、松任谷由実の大ファンだったお姉さんが選んだのがこのミラージュ・サイボーグ。あの頃は毎日のようにTVのCMでミラージュの映像のバックにはユーミンの曲が流れていたのは、ファンでなくても印象に残っているほど。「SWEET DREAMS」や「リフレインが叫んでる」を聴くとミラージュを思い出すというクルマ好きも多いはずだ。

C50系ミラージュのハッチバックは3ドアのみ。当時は5ドアの需要は少なかったというのが理由らしいが、現在の日本とは真逆の状況だったのがわかる。今では3ドアハッチバック車はほぼ絶滅。

パーツの調達に苦労しながらも他車種流用でカスタム!

@まーくんさんも免許取得後にはよく借りて乗っていたミラージュだったが、お姉さんがクルマを買い替えることになり、そのタイミングで譲ってくれたのだという。以来32年間にわたって乗り続けている。

コックピットはレカロのフルバケットシート「SP-G」を装着し、キャロッセの6点式ロールケージも組み込まれている。追加メーターにOMPのレザーステアリング、アルミペダルと実にレーシーに仕上がっている。なお、国産車初採用のホワイトメーターはライト点灯で色が変わる通称「カメレオン機構メーター」だ。

最初はお下がりのクルマだったミラージュにも愛着が湧き、エンジンはNAから後期型のインタークーラーターボに積み替え、オートマチックだったミッションは5速マニュアル変更して公認を取得。傷んだボディはオールペイントも施している。

ヘッドライトには英国三菱純正のアルビオン社製アクリルヘッドランプカバーが装着されている。デッドストックの純正オプションパーツをイギリスから輸入して装着した。
C50系ミラージュのモデルカーもコレクションしている。ヨーロッパでも人気のあった車種なので、探せば見つかるのだとか。左手前はハンドメイドで自車に似せて製作している。

いまではマニアと言えるほどミラージュに関する知識も豊富だ。貴重なオプションパーツや他社種の流用パーツなどが組み込まれ、詳しい人だけがニヤリとしてしまうようなカスタマイズも楽しい。すでに生産終了から30年以上が経過しているので、メーカーから入手できる補修パーツはごくわずか。当時はあれほど人気があったのに現存台数は少ないので中古パーツの流通も少なく、部品の調達が一番苦労するのだとか。

17インチのBBS-RGⅡにファルケンFK452(215/40R17)を装着。当時もBBSは憧れの存在だったが扁平タイヤが少なくこのクラスに17インチを装着することは難しかったので、今だからこそできるスタイルだ。
マフラーはフジツボのRM-01ステンレスマフラーをセレクトしているが、実はミラージュセダン(C73)用を短縮加工したもの。ちょっと音が大きいのでインナーサイレンサーも装着している。

ハイパワーなコンパクトハッチは通勤でも楽しい!

さりげなくRALLYARTのロゴが入ったフロントグリル。

今見ても古さを感じさせないスタイリッシュなデザインのコンパクトハッチバックに、パワフルなエンジンを搭載したミラージュは、あの頃の元気な三菱を象徴する存在かもしれない。

リヤゲートスポイラーもスポーティ。
ブラック塗装のボンネットがまたレーシーな雰囲気。

@まーくんさんはこのミラージュを毎日通勤に使っているのだそう。これからも維持する苦労はあると思いますが、大切に乗り続けて欲しい1台だ。

三菱ミラージュ・サイボーグ DOHC16Vターボ 4WD(1989年式)
■主要諸元(カタログ値)
全長×全幅×全高:3950mm×1670mm×1400mm
ホイールベース:2385mm
車両重量:1130kg
エンジン型式:4G61
エンジン種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボ
総排気量:1595cc
最高出力:160ps/6000rpm
最大トルク:22.5kg/2500rpm
サスペンション形式:(前)マクファーソンストラット/(後)5リンクリジッド
当時の新車価格:171.1万円

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著者プロフィール

橘祐一 近影

橘祐一

神奈川県川崎市出身。雑誌編集者からフリーランスカメラマンを経て、現在はライター業がメイン。360ccの軽…