電動ツールにラッシングベルト……思わず欲しくなる! 『TOOL JAPAN』で見つけた気になるアイテムはコレだ!【DIY派はこれを揃えてお工具!特別編】

2023年10月9日(水)~11日(金)、幕張メッセ(千葉県)ホール5・6を会場に日本最大級のプロツール・DIY向け製品の商談展『TOOL JAPAN』が開催された。前回は日本正規販売が明らかとなったグレートスタージャパン株式会社のブースに展示されていたアメリカ製の『SK HAND TOOLS』の工具を紹介したが、今回はクルマ・バイク系工具を中心に、会場で見つけた気になるアイテムを紹介して行くことにする。

プロ仕様の最新工具が揃うDIY派必見の『TOOL JAPAN』に黒船来襲!? SK HAND TOOLS日本上陸!【DIY派はこれを揃えてお工具!特別編】

工具メーカーや整備関係者にとっては毎年秋の風物詩となった感があるプロツール・DIY向け製品の商談展『TOOL JAPAN』。そんな同イベントの会場でアメリカ工具界の古豪・SK HAND TOOLSが革新的なX-FRAME ラチェッティングレンチを提げて日本市場に参入することが明らかとなった。同社は中国企業の傘下に入ってもなお品質を重視して“MADE IN U.S.A”にこだわり続ける。販売開始は2024年を予定しているようだ。

「イチネンアクセス」によるハンダを使った板金作業の実演

大阪に本社を構えるイチネンアクセスは、自動車整備や自動車リース、ケミカル剤、パーキング事業などを展開するイチネンホールディングス傘下の工具メーカーだ。今回の『TOOL JAPAN』では、板金作業にも適した有害な鉛を含まない鉛フリーハンダを展示しており、作業も実演されていた。

イチネンのハンダは鉛フリータイプとなる。鉛を含んだハンダは作業時に気化した鉛入りのガスを吸い込むと健康被害を及ぼすリスクがあり、熱などで万が一鉛が溶け出すと土壌汚染を引き起こす可能性がある。

鉛フリーハンダは板金作業の実演も行われていた。昭和30~40年代まで板金作業で主流だったハンダを使った金属パネルの穴埋めやパネルの切り継ぎ補修の技術は、補修用パテの進化により現在ではすっかり廃れて見かける機会が少なくなった。しかし、ハンダは補修パテのように硬化後にヒケることがないし、同じ金属なのでボディパネルとの相性が良く、補修箇所に水分が侵入してパネルをサビさせることが少ない。

ハンダを使った板金作業。大きな穴を埋める際は金属製のメッシュを貼ってからハンダを盛り付ける。ハンダ が冷えて固まったらヤスリで均して行く。

このようなメリットから使い方次第でまだまだ有効な補修方法に思われる。また、パテ代わりに使わないまでも、凹んだパネルにワッシャーをハンダづけし、スライディングハンマーで引っ張る補修方法は大木の板金工場で広く使用されている補修方法だ。イチネンアクセスの実演はハンダの可能性をあらためて広く紹介する展示となった。

交換作業が速い! 電動インパクト用QCソケット……QCってナニ?

さらに、インパクトレンチにワンタッチで装脱着が可能なQC (クイックチェンジ)ソケットの製品展示もあった。イチネンアクセスのQCソケットは、本来は建築用の工具だが、オートモーティブ系の作業でも充分使えるので紹介する。
このソケットの特徴は電動インパクトレンチのリング穴のソケットに合わせ、リングを引き下げてアンビルのピン穴をリング穴の向きに合わせて差し込み、脱落防止のためリングを元の位置に戻してリングを回して穴をずらすだけ。脱着に必要な時間はわずかに3秒。固定のためにOリングとピンを使う一般的なソケットに比べて圧倒的に早い。

イチネンのQCソケットは電動インパクトの使用を前提にしている。エアインパクトで使用する人もいるが、作業中に固定リングが壊れる可能性があり、使用する場合はあくまでも自己責任となる。

ただし、電動インパクトレンチ用の製品なのでエアインパクトレンチには対応しておらず、最小サイズが17mmからなのでクルマ・バイク用としてはやや使いづらい。できればサイズを拡充し、自動車やバイクのメンテにも適したラインナップを揃えてほしい。

モンキーレンチの「ロブテックス」がハイブランド『JーCRAFT99』を展開

モンキーレンチでお馴染みのロブテックスはハイブランドの『JーCRAFT99(ツーナイン)』シリーズを前面に押し出す展示をしていた。「エビ印」の愛称で知られる同社は、これまで実用性重視の質実剛健なメーカーとのイメージであったが、近年になって洒落たデザインのTシャツを販売したり、ブランドロゴの入ったグッズを展開したりするなど、企業イメージの向上に力を入れている。そうした流れで生まれたのがこの製品なのだろう。

ロブテックスブースの『JーCRAFT99』コーナー。

ベースとなった工具は既存の製品だが、COOLなブラック塗装仕上げとなっており、それに合わせてグリップ部分も黒いものに変更されている。そして、ロブテックスと併記される『JーCRAFT99』のロゴ。これはなかなかカッコイイ。ロブテックスによるとKTCに対するneprosのようなイメージで企画したとのことだが、価格はベースモデルよりも若干上がる程度。ロブテックスのファンならぜひ工具箱に忍ばせておきたいシリーズである。

『JーCRAFT99』のモンキーレンチ。

「RYOBI」 から事業譲渡を受けた「京セラ」のポリッシャーシリーズ

京セラの電動ツール。

2018年に電動ツールから撤退したRYOBI(リョービ)から事業を継承した京セラ。バッテリーの規格や基本設計はリョービの製品を踏襲しており、リョービが担っていた製造・販売・アフターメンテナンスなどのすべての業務は京セラに引き継がれている。そんな京セラは『TOOL JAPAN』会場でも大きなブースを確保し、各種パワーツールを展示していた。

リョービ時代から受け継がれた本体から電源コードを取りはずことができる機構。1本の電源ケーブルを差し替えて、複数のツールに使い回せるのが魅力。

その中でもクルマ・バイク用としてリョービ時代からプロの支持を集めていたのが電源コードが着脱できるポリッシャーシリーズだ。これは電源コードをワンタッチで着脱が可能にしたことにより、安定した研磨が可能な電子シングルアクションポリッシャー、磨き傷の出にくい電子ギアアクションポリッシャー、パワフルな磨きができて回転が止まらない電子ダブルアクションポリッシャーの3タイプを電源の抜き差し抜きで使い分けられるスグレモノである。本体色はリョービ時代のグリーンからグレーに変わったが、性能や使い勝手の良さに変わりはない。

まだまだあるぞ! 気になる電動工具

工業用ブラシのトップメーカー・株式会社KOWAのブースで展示されていたステンレス撚り線ブラシ。1本の芯線に同一径のステンレス材を6本撚り合わせて、さらに全体に波付加工が施すことで、対象物を傷付けにくく錆や塗料のみを落とすことができる。錆の浮いた鉄板の右側が撚り線ブラシを使用した。右側の通常のブラシと比べると表面に入る傷が明らかに少ない。

KOWAのブースで展示されていたステンレス撚り線ブラシとその効果。

リーズナブルな価格で品質の高い工具を提供し続ける『SK11』ブランドを要する藤原産業のブースに展示されていた充電式電動スクリュードライバー。電動と手動をワンタッチで切り替えられ、柄はスリムな形状で握りやすい。スタンダードモデルの他にオートストップ機能を備えた上位モデルも販売される。

『SK11』の充電式電動スクリュードライバー。

電源不要で腰への負担を軽減! 「KURABO」の『着るアシストスーツ CBU』

KURABOの『着るアシストスーツ CBUを装着して実際に重量物を持ち上げるところを実演。

工具から少し離れるが、使い方次第でタイヤ交換や自動車メンテに役立ちそうなアイテムということでKURABOの『着るアシストスーツ CBU(CONDITIONING BRACE WEAR)』を紹介したい。

背中のバックルを2箇所外すとフリー状態になる。

これは専用の作業ズボンとハーネス付きのサポートベストをセットで着ることにより、モーターアシストなしで重い荷物を持ち上げる際の負荷を軽減したり、長時間の屈み作業で腰への負担を大幅に減らすというもの。
作業ズボンは屈み姿勢を取りやすいように随所に工夫が施されており、サポートベストは通気性や動きやすさを追求しているので、装着時に動きにくさを感じたり、夏場の作業でも不快感を感じることがない。また、着たまま休憩する場合も考慮して、背中のバックルをふたつ外すとフリー状態にもなる。

ベストはベルクロになっており、脱着は容易だ。

サイズはSS~5Lまで8種類が用意されており、小柄な女性から長身長・メタボ体型の男性まで幅広い体格にフィットする。もちろん、洗濯も可能でネットを使用すれば洗濯機の使用もOKだ。

ワークウェアもオシャレの時代! 「コンバース」の安全靴に新色追加!

また、ウェア系の展示で気になったのは、2022年の発売以来そのデザイン性から瞬く間に人気となったコンバースの安全靴。デザインは同社の人気アイテム『オールスター』そのままだが、爪先に耐衝撃性や耐圧迫性、表底の剥離抵抗、耐滑性、踵部の衝撃吸収性などの性能に加え、作業において必要となるクッション性や屈曲性など機能を付加している。

コンバースの安全靴は『オールスター』とほとんど変わらないルックスが魅力。カラーラインナップが追加され、よりカジュアルに。

発売当初はカラーはブラックのみだったが、新たにレッドやブルーなどが追加された。また、某飲料メーカーとのコラボレーションも会場で発表された。

バイクや荷物の固定に便利な『ワンタッチ巻取ラッシング』

バイクをトランポに積み込む際やルーフラックに荷物を固定する際の必需品になるラッシングベルト。しかし、長さを調整し、適切なテンションをかける作業はなかなかに面倒なもの。そんなラクに素早くできるのが「ヨロスト」の『ワンタッチ巻取ラッシング』だ。

使い方はとても簡単で対象物に荷掛けフックを通したらバックルの赤いボタンを押して長さを調整し、最後に ベルトを緩めるときはもっと簡単で、ボタンを押してベルトを緩め方向に引っ張るだけで良い。また、テンションを掛けた際にベルトはリール内に自動で巻き取られるので、余ったベルトを結ぶ必要もない。荷掛け作業の煩わしさから解放されるのはなんともありがたい。

荷掛けフックを通したらバックル中央の赤いボタンを押して長さを調整。
ラチェットを数回動かしてテンションをかけるだけだ。

中古工具の買取サービス『もったい9』はご存知?

『もったい9』のブース。

兵庫県三田市に店舗を持つ中古工具の買取会社『もったい9』のブース。同社は店舗への持ち込み、宅配便を利用した送付、出張による引き取りのほか、ホームセンターやイベントに同社のトラックが出向いての買取も行っている。詳しくは同社のホームページを参照にしてほしい。

同時開催された『農業WEEK』ではダイハツとスズキが共同出展

最後に『TOOL JAPAN』と同じ会場で開催されていた『第13回農業WEEK』(第10回国際スマート農業EXPO)に出展されていたスズキとダイハツの共同出展ブースについても紹介しよう。

軽トラファン必見! スズキとダイハツが「第10回国際スマート農業EXPO」に共同出展!「キャリイ」や「ハイゼット トラック」などを展示 

スズキとダイハツはこのほど、2021年、2022年に続き、10月11日(水)~13日(金)に千葉・幕張メッセにて開催される「第13回農業WEEK」における「第10回国際スマート農業EXPO」に共同で出展すると発表した。

Motor-fan.jpの記事でも紹介されているとおり、両社は「農家の『嬉しい』を探してカタチに」をテーマに、スズキ・キャリイ、ダイハツ・ハイゼット トラックの軽商用車に加え、スズキは「軽トラ用ラダー格納パレット」などを、ダイハツは「ドローン搭載ワンオペ化装置」などを展示した。

同時開催された『農業WEEK』のスズキ・ダイハツブースに展示されたスズキ・キャリイ。荷台にはコンバインなどを積載するときに利用するラダーレールを床に収納できる「ラダー格納パレット」を備える。

会場にいたスタッフに話を聞くと「両社はライバル関係にあると見られることが多いのですが、国内で軽トラを作り続ける仲間でもあります。そんな両社が農家のみなさんの目線に立って協力することで、地域社会をより豊かにして行きたいとの思いから『農業WEEK』に共同出展しました」と語る。ひょっとしてキャリィとハイゼット トラックを将来的には生産統合する布石なのでは邪推の言葉を投げかけたところ「それはありません」とキッパリ。

同ブースに展示されていたダイハツ・ハイゼット  トラック。荷台には「ドローン搭載ワンオペ化装置」を備える。ドローンを積む労力が大幅に軽減される機器だ。パーツの一部には軽自動車のハッチゲートに用いるダンパーなどが使用されていた。

キャリィの「ラダー格納パレット」は100kgの耐荷重を想定しているとのことだが、より重い物にも対応できるように改良すればバイクのトランポ需要も満たすことができそうだ。
ハイゼットの「ドローン搭載ワンオペ化装置」は農薬散布などの農業での使用を前提にしており、将来的にはダイハツの販売店でドローンの販売・メンテナンスなども考えているという。ダイハツのネットワークが利用できるとなれば、農業以外の分野でもドローンの活用が期待でき、国内での普及をさらに後押しすることになるだろう。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…