“革靴を履いた猫足”プジョー408 1.2L直3ターボ+8ATは足の長さも走りもいい

プジョー408GT 車両本体価格:499万円
2023年、プジョーからリリースされたイチ推しモデルの408は、170mmのたっぷりとしたロードクリアランスを持つSUV機能と、伸びのあるクーペフォルムを融合させたクロスオーバーモデルとして実に興味深い。その408GTでロングドライブにでかけた。
TEXT & PHOTO:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)

SUVの使い勝手の良さとクーペの美しさを併せ持つ

全長×全幅×全高:4700mm×1850mm×1500mmホイールベース:2790mm

新しいコンセプトの408は、足元にゆとりがあるおかげで、駐車場への進入や輪留めの高さに神経を削られることが少ないし、1500mmに抑えられた全高によって、タワーパーキング利用への心配も無用だ。その上、ベースとなった308よりも110m延長された2790mmというホイールベースによって前後シート間のフロアも余裕たっぷり。見た目はしっかりと都会派を装っているにもかかわらず、中身は遠慮がいらないフットワークの良さと広さがあって、実用性も高い。

使い勝手の良い4ドアクーペモデルとしてのコンセプトは、とにかく乗って楽しんでこそ、その魅力に近づけるってものである。

今回は試乗会で乗ったモデルと同じ、1.2L3気筒エンジンを積むGTでロングドライブに出ることにした。

シャシーの出来の良さに脱帽

エンジン形式:直列3筒DOHC直噴ターボ型式:PureTech1.2排気量:1199ccボア×ストローク:75.0×90.5mm圧縮比:10.5最高出力:130ps(96kW)/5500rpm最大トルク:230Nm/1750rpm

1.2Lと聞くとどうしても頼りない印象を持ってしまうが、130ps/230Nmのスペックは実用面での不満は少ない。確かに発進加速の初期にパワーの波があるのか、反応が鈍く感じられるときや、粗めに反応するアイドリングストップのオンオフ時に振動が感じられるが、タイヤが転がりさえすれば滑らかに転じる。トコトコと3気筒特有の音は耳に届くものの、振動はしっかりと抑えられているし、エンジン自体の揺れもなく、速度を増していく。

フロント:ストラット、リヤ:トーションビームアクスルのサスペンションはFFモデルとしてはごく一般的な仕様にもかかわらず、加速中の姿勢は落ち着いているし、速度変化による荷重変化も少ない。ロングホイールベースゆえの安定感に加えて、フロントの接地性が高いことで、駆動力変化の影響を受けづらく落ち着いている。

このあたり、正直言って日本車が良くなってきたとはいえ、欧州勢に分があることは確か。FFにもかかわらずパワーを積極的にかけていってもグイグイと進路を定めて加速していってくれるし、旋回トラクションも良い。前回2008でロングドライブに出たときにも4WDの必要性を感じたのは極めて悪条件となった高速での豪雨時くらいで、ほとんどのシーンでFFによる不満は出ない。いや、むしろ駆動システムがシンプルな分だけ軽く仕上げられていて、1.2Lエンジンでもスムーズで快適に走らせてくれる。

ミシュランe-PRIMACYを履く。タイヤサイズ:205/55RF19

特にシャシーの出来が良い。いつも通り乗り降りにはちょっと足が干渉するときがあるが、フロアの左右前後に伸びるフレームは高さと幅があって、強靱なボディの基礎を成す。フロントからリヤにかけて一体感があり、リヤゲートを持ちながらも、ガチッとした剛性感がある。

これに猫足なる伸縮性の高いサスペンションが組み合わされ、路面の動きを正確に受け止め旋回、加速方向に最大限の仕事をしてくれている。もっともタイヤは堅い。前後方向から受ける入力やカドのある上下方向の動きでは敏感に反応。サスペンションが動き始める前のショックだけは、昔のような猫足のイメージとは違う。革靴を履いた猫足だ。

路面をしっかりとキャッチしていることでパワーは常に正確に伝達される。なかでも高速直進安定性の良さはなかなか真似できない。踏んでいくほどにステアリングが締まっていき、外乱に気後れすることなく直進姿勢を保つ。もっともそれ故に保舵力は重めで、少し角度を付けた状態をキープするときには小さなステアリングにギュッと力が入る。

高速領域に入るとエンジンの良さが見えてくる。100km/h巡航だとDレンジでは7速をキープし、120km/hでようやく8速へとアップする。第二東名のフラット路面であれば8速に入れても十分な粘り強さがあって、パドルシフトでさっさとシフトアップするに限る。ロックアップした状態だと1700rpmをキープし、少し踏み込むと1900rpmくらいに回転が上昇し、トルク感をじんわり高めてくる。路面のアップダウンにも十分に対応する粘りをもつ。

プジョーと言えばi-Cockpit

3気筒1.2Lエンジンながら、意外にも回転で稼ぐのではなく、低中速域でトルクをジワッと絞り出す技を持っていて、少なくとも2.0L自然吸気ガソリンユニット以上のトルク感はある。もそのトルク感は例えて言うなら、葛湯のような粘り強さで大排気量車のような太さはない。掻き回しているうちに粘りが出てきて滑らかなうちに加速を終わらせる。

一方、一気に加速させたいときには、コンパクトユニットゆえの柔軟さがあって、100km/h+α程度までは8速から一足飛びにキックダウンを行ない、ケースによっては3速まで落ちる。直後に4速、5速へと5000rpm強あたりでリレーされ、柔軟かつ切れ味良い加速も見せてくれる。このあたり、長く乗るほどに使い勝手の良さがわかり、粘りと軽さを使い分けると期待通りの走りを味わえる。

後席足元の余裕は大きい
シートはかつてのフランス車のフィールとは違うが出来はいい
ラゲッジスペースは536L リヤシートを倒せば1611Lになる。

そんな遠慮のない走りにもかかわらず、燃費は終始安定していて、3日間の移動期間で常に13km/L台をキープ。トータルで初日も最終日も13.6km/Lのデータとなった。673km走って給油したガソリン量は47.77L。金額にして8790円。ディーゼルの2008では1kmあたり10円を切ったが、こちらは高いハイオクのために13円。何よりストレスなく高速ドライブができて街乗りでも遠慮のいらないうえでのこのパフォーマンスの高さは魅力。1430kgという車重を持つ408を気持ちよく経済的に走らせてくれた、このエンジン見上げたものである。しかも、無給油で673kmを走り、なお105kmの走行可能距離を残していたから、精神的にも楽。BEVがどれだけ長く走れるようになったとはいえ、いまだエンジン車の足の長さは手強い。ディーゼルならなお、距離も経済性もアップするから、これからもやっぱりエンジン車がいい。

673km走って燃費は13.6km/Lだった。モード燃費はWLTCモード:16.7km /L
プジョー408GT
全長×全幅×全高:4700mm×1850mm×1500mm
ホイールベース:2790mm
車重:1430kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 
駆動方式:前輪駆動
エンジン形式:直列3筒DOHC直噴ターボ
型式:PureTech1.2
排気量:1199cc
ボア×ストローク:75.0×90.5mm
圧縮比:10.5
最高出力:130ps(96kW)/5500rpm
最大トルク:230Nm/1750rpm
燃料:プレミアム燃料タンク:52L
燃費:WLTCモード燃費:16.7km /L 
 市街地モード13.2km/L 
 郊外モード16.4km/L 
 高速道路モード19.1km/L 
最小回転半径:5.6m変速比・
車両本体価格:499万円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…