EV試験装置やEV用エレクトリック・ドライブユニットの製造、EVシステム・テストセルなど、EVの迅速な試験を可能にする革新的テクノロジーを導入。来年にはBEVの「レンジローバー」が発売予定
英国コベントリー郊外のホイットリーにあるエンジニアリングセンターに新設した、32万3000平方フィート(約3万平方メートル)の敷地面積を誇るこの施設には、4000万ポンド(約72億7000万円)超をかけて、EV試験装置やEV用エレクトリック・ドライブユニット(EDU)の製造、EVシステム・テストセルなど、EVの迅速な試験を可能にする革新的テクノロジーを導入。ここには、-40度から最大55度までの最も過酷で極端な条件をシミュレートできる気候室も含まれている。
「フューチャー・エナジー・ラボ」の新設は、今後5年間で人材および施設に約150億ポンド(約2兆7300億円)を投資するというJLRのコミットメントの一環であり、試験開発能力を大幅に向上させる。これによりJLRは、次世代EV開発を持続的に拡大させることができるようになる。そして、開発プロセスにおいて世界各地に存在する他の試験施設間を移動させる必要性が減る。JLRは、自社のEV試験能力を増強させることで、試験評価のために世界中にプロトタイプを輸送することに伴うコストと二酸化炭素排出量を最小限に抑える方針だ。
この施設では、すでに200名を超えるEVエンジニアが従事しているが、さらに150名の新規雇用を創出し、地域経済に大きな雇用を促す。なお、JLRは来年、コベントリーの施設の改修のため、さらに2200万ポンド(約40億円)相当の投資を計画している。
JLRのプロダクト・エンジニアリング担当エグゼクティブディレクター、トーマス・ミューラー氏は、次のように述べている。
「私たちの車両は、EVの未来の最前線にあり、今後もそうあり続けます。この施設は、私たちの『REIMAGINE』戦略の中核をなすものであり、私たちが誇りを持って開発している最新のモダンラグジュアリーなクルマの性能と信頼性の構築要件である、高度な試験能力を提供するために不可欠なものです」
そして、JLRのパワートレイン・テスト・オペレーション担当チーフエンジニアであるオリバー・ボークス氏はこのように述べている。
「ホイットリーにおける私たちの事業は、JLRにおいて中心的な役割を果たしており、地域社会のビジネスをリードしています。今回の投資は、ビジネスと地域経済にとって特筆すべきものだと言えます。」
JLRの次期EVであるモダンラグジュアリーな「レンジローバー」の BEVモデルは、これらの施設で数十万時間の試験が行われているモデルのひとつであり、そのEDUは、ホイットリーのエンジニアたちたちが設計、開発、検証をしている。なお、「レンジローバー」のBEVモデルは、来年発売予定だ。
この拠点は、電動化に向けたJLRの「REIMAGINE」戦略を実現するための新たなマイルストーンとなる。JLRは、EDUの設計と開発を自社で行うことで、サプライチェーンの管理体制を強化すると同時に、独自のEDUをより柔軟に変更できるようになる。
ウエスト・ミッドランズのアンディ・ストリート市長は、次のようにコメントしている。
「私たちは、この地域を、卓越した自動車の開発およびEV生産への移行の両面において、最前線の拠点にすることを目指してきました。JLRによって発表されたこの素晴しいニュースは、私たちの目標が現実のものとなることを示しています。エンジニアリング施設に数百万ポンドの投資を行ったコベントリーの新しい『フューチャー・エナジー・ラボ』の開設により、JLRは今後数カ月から数年間にわたり、電動化への取り組みを大幅に強化されていくでしょう。今回の発表は、地元の人々が、この分野で成功するために必要なスキルを習得し、それに見合った雇用機会が創出され、多大な恩恵を受けることになるのです」
JLRの「REIMAGINE」戦略は、デザインによるモダンラグジュアリーというサステナビリティに富んだビジョンを実現するもの。2039年までにサプライチェーン、製品、オペレーションのすべてを通じて排出ガス量実質ゼロにするという目標に向け、JLRは事業の変革に取り組んでいる。承認された科学的根拠に基づく目標を通じて、2030年までに事業とバリューチェーン全体で排出量を削減するためのロードマップを策定。この戦略の中核をなすのは電動化だ。10年以内に「レンジローバー」「ディスカバリー」「ディフェンダー」 の3つのファミリーにそれぞれBEVを取り揃え、ジャガーはすべての車種がBEVとなる。