モリゾウが一番気に入ったクルマは意外にもアレだった! 最終日は「マツコデラックス×豊田章男の大反省会」で大団円【ジャパンモビリティショー2023】

10月28日から一般公開が始まったジャパンモビリティショー2023も、11月5日で閉幕。最終日には、トヨタ自動車の会長であり、自動車工業会の会長でもある豊田章男氏と、タレントのマツコデラックスさんによる「ジャパンモビリティショー大反省会」が開催された。ショーの名称を変えた理由や、今後の自動車産業のあり方を語ったりと真面目な話が展開される一方、豊田会長がショーで最も気に入ったクルマを明かすなど、人気者ふたりのトークに観客は耳をダンボにして聞き入っていた。

マツコデラックスさんと豊田章男 自工会会長は、一体何を反省した!?

大反省会
ジャパンモビリティショー2023の「ジャパンフューチャーセッション」のトークショー会場で開催された大反省会。YouTube でも生配信された。

本日(11月5日)にいよいよ千秋楽を迎えたジャパンモビリティショー2023。その締めくくりとして、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長とタレントのマツコデラックスさんによる「ジャパンモビリティショー大反省会」が行なわれた。会場は超満員! マツコさんの「反省しろって言われたら私、いっぱいあるよ反省すること。何を反省すんのよ」という言葉でトークショーはスタート。まずは、ジャパンモビリティショーへと名称が変わったことに関する話が展開された。

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豊田章男 自工会会長
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マツコデラックスさん

「日本で100万人を集めるイベントというのは、日本でふたつしかないんですよ」と豊田会長。「これ、さっき聞いたんだけど、ビックリしちゃったわよ」とマツコさん。そのイベントとは、夏の甲子園とモーターショーだという。

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1日あたりの来場者数。今回のジャパンモビリティショーはトータル100万人の来場者数が目標だ。

ジャパンモビリティショーの前身である東京モーターショーは1954年から開催がスタートし、モータリゼーションの発展とともに順調に回を重ねてきた。しかし、クルマを取り巻く環境が激変してきたこともあり、世界中でモーターショーの来場者数が右肩下がりなのが最近の傾向だ。そんなふうにモーターショーの地盤沈下が進む中、「とにかく人をたくさん集めてみようよ」ということで、豊田会長が音頭を取って新しい試みにチャレンジしたのが2019年に開催された前回の東京モーターショーだった。結果、来場者数は130万人を超える大成功に終わった。

それから新型コロナの影響で開催が中止になった2021年を挟み、今回はさらなる大ナタが振るわれた。「ジャパンモビリティショー」に名前を変え、自動車業界の枠を超え、あらゆるモビリティに関連する企業も参加することとなったのだ。出展社数は過去最高の475社にのぼる。

マツコさん「名前変わったんだもんね。すごいわよね」
豊田会長「名前変えただけでしょ、みたいな(風に思った?)」
マツコさん「ちょっとそういう感じもあったけど、結構内容も変わったわよね。もうクルマだけにはとどまらなくってきたのよね」
豊田会長「クルマっていうと、良い話もあるけれど、交通渋滞や交通事故など悪い話もある。その悪い話を少なくして、良い話を増やしていきながら、一緒にモビリティを作っていきましょうよ、という『この指止まれ』大会だったのが、今回のモビリティショーだったんじゃないのかな」

スタートアップ企業も含む過去最高の475社が参加

ジャパンモビリティショー2023では、スタートアップ企業の参加も促され、その育成を狙って大企業とのマッチングする場も設けられた(スタートアップフューチャーファクトリー)。その狙いを豊田会長は次のように語った。

豊田会長「今までのモーターショーは、世界に先駆けて新車が発表されたりっていうことはありましたが、あんまりモノが売れなかったんですよ。例えばタイのバンコクモーターショーだと、クルマを売ってたりするんです。で、ここ(ジャパンモビリティショー)では何を売ろうかと思ったとき、みんなが考えてくれたのが、モビリティの未来をつくっていくには、やっぱり日本で活躍しているスタートアップ企業の方々と投資家の方々とをマッチングして、そこを新しいビジネスへの第一歩としてもらおう、と」

実際、今回の会期中にスタートアップ企業側と大企業側とがもう1回相談したいという話になった件数は、430件以上にもなるという。「日本自動車工業会のお仕事を私もやらせていただくようになってだいぶ経つけど、本当に雰囲気変わりましたよね、今回は。名前が変わっただけじゃない」と、マツコさんも今回のショーには満足しているご様子。

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430社の企業が次の打ち合わせが決定したという。

豊田会長「そうなってくるとね、このマッチングだとかいろいろな技術の展示会だとか(をやるとなると)、2年に1回では…」
マツコさん「遅いわよね。少なくとも毎年やらないと!」
豊田会長「だから、ぜひ、次の自工会会長さんには、1年に1回やっていただくことをご検討いただくといいかな、と」
マツコさん「うわ〜、変な圧を与えるわね〜!」

豊田会長の任期は2024年5月まで。会長職は2年交代が通例だったのだが、豊田会長は18年に就任以来、異例の3期6年間の任期を務めているが、それも来年でお終い。「無理はなさらずに。この規模ではやらなくてもいいから」とマツコさんもフォローしつつ乗り気の様子だが、”毎年開催”というバトン(無茶振り!?)は、自工会の次期会長へと渡されたのだった。

”モビリティ”にしたことで移動手段の選択肢が広がった

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と、ここでスタッフから『未来の東京のエピソード出します』というカンペがマツコさんに出された。

マツコさん「何これ、おもしろいのかしら。抽象的な」
豊田会長「マツコさんがどう感じるか、ちょっと映像を出して」

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三精テクノロジーズ「SR-02」

会場のモニターに映し出されたのは、三精テクノロジーズが出展した巨大4足歩行型ライドの「SR-02」。
マツコさん「(会長も)乗ってるじゃん。どうなの、乗り心地は?」
豊田会長「ラクダみたい」
マツコさん「ラクダに乗ったことないから、よくわかんないけど」

三精テクノロジーズは、舞台装置やエレベーター、ジェットコースターなどを作っている会社だ。
マツコさん「そういう会社の技術が、クルマに役立ってくるかもしれないのね」
豊田会長「モビリティショーとしたが故に、色々な人が参加しやすくなった」
マツコさん「自分たちの会社の技術が、これからのモビリティの中で活かせるって思ってさ、研究している会社がいっぱいあるってことだよね」
豊田会長「それから、研究者の常として、研究室で関係者と一所懸命開発してるってのが普段のお仕事だと思うんですよね。それが、こういうモビリティショーに持ってくると、一般の方の、普通の感覚のフィードバックがもらえる。それがみなさん、非常にありがたいと言ってましたね」
マツコさん「やっぱり毎年やらないと。この規模でやらなくても、どっかでやれそう。やった方がいいと思う」
豊田会長「ホントに」

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メルカリ「ポイモ」

そして、今回のモビリティショーのもうひとつのテーマは「多様化」だと豊田会長は語る。そこでモニターに映し出されたのは、メルカリが開発したソファ型のモビリティ「ポイモ」。ジャパンモビリティショーの会場に訪れたパラアルペンスキーの森井大輝選手が試乗したところ、「これなら横になって休んでいたときにちょっと喉が渇いても、車椅子に乗り換えることなく、冷蔵庫まで取りに行ける」と高評価だったそう。
豊田会長「多様化という中で、ラストワンマイルで乗るモビリティとして、例えば妊婦の方も自由に移動できる。モビリティと名前を変えたことで、多くの選択肢が移動手段に出てくる可能性をものすごく感じましたね、今回は」
マツコさん「50年後って、クルマの形はまったく違うものになってるかもね」

日本の良さって何? 日本の自動車産業はどうなる?

ここから話のスケールは大きくなって、”日本”へ、そして”日本の自動車産業”へと移っていく。
マツコさん「どう会長。これから日本は。配信の人も聞きたがってるだろうから。豊田章男が今、日本をどうみてるのかって」
豊田会長「うん、以前は東京モーターショーって言ってたじゃないですか。で、東京の前は江戸だったわけでしょ。江戸時代も、世界で有数の大都市だったんですよ。道もよく整備されていた。ところがその道が非常に狭くて、雨が降ってきて傘を差すと、傘の雫が相手に当たらないように、お互い寄せて通り過ぎるっていうのがね、江戸の所作だったんです。それに現れているように、日本人の良さは、『ありがとう』を言い合える世界だと思います。ところが、最近は報道とかを見ていると、世の中がすべて、断絶とか対立とか、そういう風になっている。そんななかで、自分のできる範囲でありがとうと言い合える第一歩を大人が示していかないと」

マツコさん「いろんな基幹産業がいっぱいあったけどさ、日本という国が今後、この経済力を維持していくためにはさ、自動車産業なしではあり得ないっていうさ」
豊田会長「自動車関連の人の雇用を数えると550万人くらいなんです。ところが、今回、モビリティショーと言ったことで、多分これが800万人とかっていうくらいの人の生活がかかっている。それを家族単位にすれば、4倍くらいにはなる。そう思うと自動車産業って、移動手段というだけでなくて、それ以上にお役に立っているような気がします」

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真面目な話の次は、みんなが気になるあのテーマが話題に。豊田会長は今回のショーでどのクルマに惹かれたのかということ。マツコさんが、直球で聞いてみた。
マツコさん「会長自身が見て、今日一番いいなと思ったクルマはどれだったのよ。トヨタのクルマでもいいし、他社でもいいし」
豊田会長「うん…トミカかな」
マツコさん「トミカ!? ちょっと、葛飾区は今大騒ぎよ(注:トミカを展開するタカラトミーの本社は葛飾区)」
豊田会長「トミカはやっぱり夢があるでしょ。手に取れないとね。実際のクルマは、お父さん・お母さんのものだから」
マツコさん「自分でこうやって(手でミニカーを走らせる仕草をしながら)遊ぶところから始まるもんね、クルマって」
豊田会長「章男少年がそうだったから」

EVだけが正解じゃない。未来は信頼と共感でつくるもの

そろそろ、大反省会も終わりの時間が迫ってきた。マツコさんは、最近、将来のクルマがEV(電気自動車)一辺倒になりつつあることに疑問を持っているようだ。

マツコさん「このまま本当にEVになるの? 私の知り合いが、海老名(SA)で充電に何時間も待ったって」
豊田会長「これは、最後に市場とお客様が選ぶものなんですよ。そしてだんだんサイレントマジョリティの方が、実際に自分たちが使うことをベースにした声が上がってきていると思いますね」
マツコさん「充電できる場所をもっと増やしていかないと」
豊田会長「うん、それがなきゃ無理だし、やっぱり使い勝手を考えないとね。ZEV(ゼロエミッションビークル)っていうのは、電気であれ水素であれ、インフラができないと。ガソリンスタンドでガソリンを入れるのは3分くらいです。ところが、充電で3時間となると、少なくともガソリンスタンドの何倍もの充電ステーションが必要になってくるわけですよね。そこまで自動車会社がやるのかっていうとね」
マツコさん「誰がやるの!?」
豊田会長「未来のモビリティっていうのは、未来の乗り物だけ作ればできるものじゃなくて、色々な人が協力して、たとえばエネルギーを作る人、運ぶ人、使う人って、みんなが同じゴールに向かって進まないとうまくいかないと思いますね」

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クルマにもかなり詳しいマツコさんだけに、豊田会長へ鋭い質問が飛ぶ。豊田会長も、それに対して真摯に返答。反省することは反省しつつ、未来を見据えた前向きな話が続いた。

マツコさん「なんか、混沌としてるわね。5年先、10年先がどうなるかもわかんないわね」
豊田会長「わかんない。しかも、正解がないわけでしょ。正解がないときは、よくPDCA(プラン・ドゥー・チェック・アクション)っていうけど、”ドゥー”を最初にやった方がいいと思う。まずやってみる。やってみて、チェックしてみて間違えたらやめたらいいし、正解だったら続ければいい。そして継続しているうちに、なんとなく幸せのシェアが上がってきたというサイクルを回した方がいいと思います」
マツコさん「それが電気自動車となると、ドゥーもなかなか一筋縄では…」
豊田会長「だから、100%電気自動車になるというルールは決めないでほしいね。電気自動車も必要だと思います。けど、電気自動車が最適な使い方、使われ方ってのはある」「何年先かはガソリン車はダメっていう規制じゃなくてね、やっぱり未来は信頼と共感でつくる、というふうに私は思うんです」

豊田会長の一番のお気に入りは「カヨイバコ」だった!

…と、ここでYouTubeによる生配信は終了したが、ふたりの反省会はまだ終わらない。会場のお客さんのために、トークはまだまだ続く。マツコさんはまだ、豊田会長のお気に入りが何か、その本音が気になっているようだ。
マツコさん「さっきはほら、世間体的な一番で『トミカ』を発表したけど、みんなが聞きたがっていたのはそうじゃないのよ。こういうなかで何が一番良かったのかっていうのをみんな聞きたいわけよ。会長は何がグッときたの!?」

「本当のことを言っていいんだね」と前置きする豊田会長。会場のモニターには答えを待ち受けるかのごとく、EVスポーツカーの「FT-Se」が映っていた。しかし、実際に豊田会長が挙げた1台は意外(?)な車名だった。

大反省会
トヨタが出展したEVスポーツのコンセプトカー「FT-Se」。来場者からの注目度も高かった1台だが…。

豊田会長「これじゃなくてね、カヨイバコだね」
マツコさん「画面に出せる?」
豊田会長「いや、ないと思うな」
マツコさん「ない?」
豊田会長「だから、やっぱり僕って理解されてないね、会社で。会長=スポーツカーって」
マツコさん「そうそうそう、もうアホみたいにスポーツカー出しときゃ喜ぶだろうみたいな。よくないよそういうの!」

大反省会
豊田会長が選んだのはトヨタのコンセプトEV「カヨイバコ」だった!

このやりとりに会場は大爆笑。カヨイバコはさまざまなニーズに対応するために内外装のアレンジが可能というEVコンセプトカー。箱型のフォルムは魅力的だが、レーシングドライバーの顔も持つ豊田会長のイメージからすると、確かに意外なチョイスと言えそうだ。

こうして真面目な話あり、笑いありの大反省会は幕を閉じることに。豊田会長はYoutube配信の終了時に、次のような挨拶で締めくくった。

豊田会長「初めてのジャパンモビリティショーが終わりますが、私は、これが日本が世界に新たな発信をするスタートであってほしいと思っています。そんな意味では、今回参加いただいた方、来場いただいた方がこの2週間、モビリティというものに興味を持っていただいたら、それがスタートだと思います。モビリティって自分の未来にどう影響するのだろう…そんなことをお考えいただいた2週間であったなら、このモビリティショーは大成功だったと思います」

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15時開始のトークショーのために、朝9時から並んでいたという熱心なファンから花束を受け取ったお二人。

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