「軽さは正義」を体現した「マツダ・ロードスター」【最新スポーツカー 車種別解説 MAZDA ROADSTER】

1989年の登場で世界に新たな潮流を作り出した「マツダ・ロードスター」。現行4代目は初代への原点回帰と言えるモデル。1.5ℓのエンジンに1tに満たない車重のバランスはベストマッチで、ハンドリングの軽さと挙動の安定性は高いレベルにあり、クルマを操る心地よさは爽快だ。高回転域の伸びのある排気音を聞きながらのオープンドライブはロードスターの大きな魅力のひとつだ。
REPORT:岡島裕二(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:神村 聖

あえての排気量ダウンで原点回帰の軽量化

2シーターオープンモデルとしては世界最多の販売台数を誇り、ギネスブックにも認定されているマツダのロードスター。1989年に発売された初代モデルから世界的に大ヒットとなり、欧州メーカーからも次々に小型オープンカーがリリースされるほどの影響力をもたらした。

エクステリア

コンパクトサイズでも存在感のあるグラマラスなフォルム。閉じた状態でもダークブルーの幌がチラリと見える「990S」は、特別塗装色の「スノーフレイクホワイトパールマイカ」とのコントラストが鮮やかで、目を惹く。
エンジンに専用セッティングが施される特別仕様車の「990S」。ハイオクを指定する1.5ℓ直列4気筒は、最高出力132㎰/7000rpm、最大トルク152Nm/4500rpmという数値。驚くほどパワフルではないが、スペック以上に軽々と加速させるのは、990㎏という軽量級ボディならでは。
「990S」は、鍛造16インチアルミホイール「RAYS ZE40 RS」を履き、1本あたり800gの軽量化を実現。ブレーキは、ブレンボ社製の15インチベンチレーテッドディスクと対向4ピストンキャリパーを備える。
リモコンキーもしくは、電磁式トランクオープナーで開けられる。55×40×22㎝の機内持ち込み可のスーツケースがふたつ収まる。ふたりでの1泊2日程度の小旅行であれば不足ない容量を確保する。

キープコンセプトの2代目の後に登場した3代目ではボディサイズや排気量を拡大したが、歴代モデルユーザーからの評価が芳しくはなかった。そこで現行モデルとなる4代目では原点回帰を行ない、全長を初代よりも短くし、エンジンの排気量も歴代最小となる1.5ℓ(海外では2.0ℓもある)に設定。排気量を減らしたことで失われた出力をカバーするために、徹底した軽量化を施し、車両重量をほぼ1tに抑えている。フロントマスクのスタイリングこそ、切れ長のLEDヘッドライトを採用して近代的なデザインとなっているが、引き締まったコンパクトなボディは、まさに初代ロードスターを思わせてくれる。

インテリア

マニュアルエアコン、セグメント液晶オーディオディスプレイが標準の990Sは、カップホルダーもひとつのみで、軽量化を徹底。「L e a t h e rPackage」や「Brown Top」、「RS」は、合成皮革のセンターコンソールボックスになる。
腰まわりのフィット感に優れたシートは、肩まわりはタイト過ぎず、乗降性と座り心地のバランスにも配慮している。運転席は座面前側のシートチルトが可能で、チルト&テレスコピックにより運転姿勢の調整にも対応。「990S」は3本のストライプが入るクロスで、「RS」はレカロシートになる。
中央に回転計を配置した三眼メーターは、エンジン回転数の把握もしやすい。
トランスミッションの内製にこだわり、MTの操作感は適度な剛性感が得られる。
オフセットのないペダル配置も魅力で、アクセルはオルガン式。

インテリアもステアリングとシフトノブの位置が近く、素早いシフト操作が可能。ペダルも自然に足を延ばした位置に適切に配置されており、運転に集中できる空間につくり上げられている。ソフトトップは手動式だが簡単に開閉することができ、慣れてしまえば運転席に座ったまま、信号待ちの短時間でも開閉できる。ソフトトップを開ければ、適度に風を感じながらの心地良いドライブが楽しめる。

エンジンを使い切る快感 比類無き意のまま感の走り

初めて現行型ロードスターに乗った際には先代との比較で「もう少しエンジンにパンチ力が欲しいな」と感じたが、今ではこの1.5ℓエンジンがベストだと思っている。実際に132㎰/152Nmというスペックは、スポーツカーとしては物足りないし、加速も強烈ではない。だが、そのぶんアクセルを踏み切って走ることができる爽快感が味わえるのだ。ちょっとした直線や高速道路の流入時でもアクセルを踏み込んで高回転域を試せるし、山道で2速や3速を使いながら高回転を維持して走れば、思いのほか俊敏な加速を体感できる。高回転域の伸びのある排気音を聞きながらのオープンドライブは、ロードスターでしか味わえない快感だ。

うれしい装備

車線逸脱警報やパーキングセンサーなどの解除スイッチをインパネ右下に配置する。
貴重な収納であるキー付きリヤコンソールボックスは、財布やメガネなどの小物に向く。 
脱着式のカップホルダーは、「S」系と「NR-A」がひとつでそれ以外はふたつ標準装備する。
リヤストレージボックスは、シートを前にスライドさせて使う。下にETC車載器を配置。

ボディの軽さはハンドリングにも活きている。ステアリングを切った瞬間にクルマが反応し、その後はステアリング操作とスロットルワークによって狙ったラインを的確にトレースすることができる。曲がりくねった山道で左右に素早くステアリングを切り返した場合でも追従性が良く、多少コーナーの進入をミスしたときでも、操縦性の高さがそれをカバーしてくれる。さらに現在はキネマティック・ポスチャー・コントロールが装備され、コーナリング時にリヤの内輪に微小な制動を掛けてロールを抑制してくるから、より挙動が安定するようになった。RFの余裕のある走りも魅力的だが、やはりロードスターはソフトトップの軽快な走りが真骨頂だ。

Country       Japan 
Debut        2015年5月(商品改良:21年12月)
車両本体価格     268万9500円~342万2100円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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