トヨタ・ヤリスクロスのライバルは……ホンダ・WR-V? 日産・キックス? 3車種徹底比較

トヨタ・ヤリスクロスだけの強みはなんだ? ホンダWR-V、日産キックスと価格や装備を比べてみた【国産コンパクトSUVガチンコ比較】

激戦のコンパクトSUV市場でひときわ高い人気を誇るトヨタ・ヤリスクロス。気になるのはライバルの存在だ。e-POWERで対抗する日産・キックスと、2024年3月に登場したホンダ・WR-Vをピックアップし、それぞれのボディサイズとパワートレイン、価格について比較してみた。

【ボディサイズ比較】もっともコンパクトなヤリスクロス! 車内はWR-Vが一番広い

2024年1月の一部改良で、グリルデザインなどが変更されたヤリスクロス。

まずは、取り回しや室内空間に関わるボディサイズについてを比べてみよう。

いずれの車種もコンパクトSUVとして平均的なサイズで、極端に運転しづらいといった不満は出ないだろう。室内空間についても、すべての座席で必要十分なスペースが確保されている。

ホンダ WR-V
日産 キックス

そのなかでも飛び抜けて車内が広いのはWR-Vだ。ヤリスクロスとキックスの後席空間は同じくらいだが、WR-Vは同社のヴェゼルより広い後席空間を実現している。

車種名ヤリスクロスWR-Vキックス
ボディサイズ
mm
4185×1765×15904325×1790×16504290×1760×1605
ホイールベース
mm
256026502620
室内寸法
mm
1845×1430×1205 1945×1460×12801920×1420×1250
荷室容量
リットル
3904582WD:423
4WD:276
最低地上高
mm
170195170
最小回転半径
mm
5.35.25.1

荷室容量もWR-Vがもっとも大きく、次点が僅差でキックスだ。5名乗車時の荷室長はキックスがWR-Vを上回るが、4WDモデルはドライブトレーンが荷室空間を大きく圧迫するため、荷室容量の順位はヤリスクロスと入れ替わる。

荷室の使い勝手に関しては、数々の工夫が凝らされたヤリスクロスがもっともユーザーフレンドリーだ。

WR-Vとキックスのリアシートはオーソドックスな6:4分割可倒式であるのに対し、4:2:4分割式を採用するヤリスクロスは長物が積みやすいように配慮されている。また、荷室床面高を左右独立2段階で切り替えられる機構も備わり、用途や荷物に応じて限られたスペースを有効利用しやすい。

また、パワーバックドアや荷室にAC電源口がオプションで追加できるのは3台のなかでヤリスクロスだけだ。

【パワートレイン比較】燃費はヤリスクロスの圧勝! 静粛性はe-POWERのキックス

燃費性能がよく二酸化炭素排出量が少ないヤリスクロスは、欧州でも高い人気を誇る。

ヤリスクロスはモーターとエンジンを協調動作させるパラレルハイブリッドモデルと、純ガソリンエンジンモデルの2種類がラインナップする。

キックスには、エンジンで発電しモーターで走行するシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」が搭載され、WR-Vは純ガソリンエンジンのFWDのみとパワートレインは三者三様だ。

車種名ヤリスクロス
(ハイブリッド)
ヤリスクロス
(ガソリン)
WR-Vキックス
エンジン1.5L直列3気筒1.5L直列3気筒1.5L直列4気筒1.2L直列3気筒
トランスミッション電気式無段階変CVTCVT
エンジン最高出力
kW(ps)/rpm
67(91)/550088(120) / 660087(118)/6,60060(82)/6000
エンジン最大トルク
Nm(kgf)/rpm
120(12.2)/3800〜4800145(14.8) / 4800〜5200142(14.5)/4300103(10.5)/4800
モーター最高出力
kW(ps)
前:59(80)後:3.9(5.3)前:100(136)
後:50(68)
モーター最大トルク
Nm(kgf)
前:141(14.4)後:52(5.3)前:280(28.6)
後:100(10.2)
WLTC燃費
km/L
2WD:27.8〜30.84WD:26.0〜28.72WD:18.3〜19.84WD:17.1〜18.42WD:
16.2〜16.4
2WD:23.0 4WD:19.2

いずれの車種も過不足ない動力性能が与えられているが、パワートレインの違いで乗り味はずいぶんと異なる。とりわけ走行時の静粛性や振動に大きな違いが感じられるだろう。

ヤリスクロスはエンジンとモーターがそれぞれの効率よく動作するため燃費性能に優れ、どのような状況での走行でもそつなくこなしてくれる。しかし、エンジンの音や振動が車内に伝わりやすく、とくにハイブリッドモデルはモーター走行時の静粛性が高いだけにエンジンの稼働音が気になりやすい。

WR-Vはガソリンエンジン+前輪駆動のみと割り切ったパワートレインが特徴。そのぶん価格も安い。

WR-Vとヤリスクロスのガソリンエンジンを比べてみても、3気筒エンジンのヤリスクロスよりも4気筒エンジンを搭載するWR-Vのほうが振動は小さい。

3台のなかで静粛性がもっとも優れるのはキックスだ。

キックスは2022年のマイナーチェンジで4WDが追加されるとともに、最新の第2世代e-POWERに刷新。モーター出力の強化に加えて充電タイミングが見直され、周囲の音に紛れ込ませてエンジンを稼働させるためエンジン音が気になりづらくなった。

舗装路でも後輪の駆動力を制御して高い走行安定性を保つキックス4WD。

強力なモーターによる加速と運転疲労を軽減するワンペダルドライブが相まって、キックスは電気自動車のような運転感覚だ。

【価格・総合比較】トータルバランスが秀逸なヤリスクロス

ヤリスクロスは曲面を多様した独特なインパネデザインが特徴。価格を含めたトータルバランスの高さでライバルを寄せ付けない。

最後に価格を含めた総合的な評価を比較して総括としよう。

車種名価格
ヤリスクロス(ハイブリッド)229万5000〜315万6000円
ヤリスクロス(ガソリン)190万7000〜278万2000円
WR-V209万8800〜248万9300円
キックス299万8600〜348万1500円

ヤリスクロスのもっとも大きな特徴はトータルバランスの高さだ。ガソリンモデルとハイブリッドモデルのどちらも燃費がもっともよく、価格が手頃なうえ機能性の高さでライバルに差をつけている。

直線的なWR-Vのインパネ。電動パーキングブレーキが備わらないため25km/h未満になるとACCが自動解除されてしまう。

WR-VはガソリンエンジンのFWDしか選べない点に加え、レバー式サイドブレーキが採用されるなど、装備面ではヤリスクロスには一歩譲る。しかし室内空間やシャシー性能といったクルマの本質的な部分では、ヤリスクロスと同等かそれ以上のまとまりを見せる。

キックスは、価格が高いだけあって内装の質感がもっとも高く、e-POWERによる滑らかな走行フィールと静粛性は頭一つ抜け出ている。室内空間はヤリスクロスとおおむね同等だが、機能や利便性ではやや及ばない。

内装デザインはキックスがもっとも高級感に溢れている。マイナーチェンジで安全装備も強化された。

トータルバランスに優れるヤリスクロスは、どのような用途であっても一定以上の満足度が得られるだろう。それに対して、ライバルはそれぞれ突出した性能を持っていると言える。

広い後席や荷室空間を第一に望むなら、価格が安いWR-Vがもっともコストパフォーマンスが高い。電気自動車のように走行できるe-POWERのキックスは高い費用を払ってでも乗る価値のあるクルマだ。

いずれの車種もコンパクトSUVとして十分な性能が備わっているが、個性的とも言えるほどに得意とする分野が異なる。実際に試乗して用途に適したクルマを見極めるとよいだろう。

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