後席空間はbZ4Xに劣るも、居住性と乗降性ではアリアが上




新型アリアのフロントフェイスは、リーフのグランドデザインと共通化されて登場した。それにより個性は薄れてしまったものの、クルマの各部から溢れる高級EVらしい佇まいはリーフと一線を画す。
アリアのボディカラーには、オーロラの光をイメージしたプラズマグリーンとミッドナイトブラックを組み合わせた2トーンカラーとなる“翡翠乃光(ヒスイノヒカリ)”を新設定。併せてホイールデザインも刷新されている。
アリアのボディサイズは変わっておらず、室内空間にも変更はない。ボディサイズはbZ4Xの方が全長で100mmほど長いが、後席膝まわり空間はbZ4Xの方がわずかに広い程度でほぼ同等だ。
ただしbZ4Xは後席座面高が低く、膝裏が浮き気味になる傾向がある。アリアも十分とは言えないが、bZ4Xよりは良好な姿勢を保ちやすいはずだ。加えて、リヤドア開口部はアリアのほうが広く確保されている。後席の乗降性と居住性に優れるのは明らかにアリアの方と言えるだろう。
荷室寸法はbZ4Xが長さ985mm×幅967mm×高さ757mmに対して、アリアは973mm×1100mm×682mmだ。荷室空間に決定的な差はなく、どちらも9.5インチのゴルフバッグを3個積み込めるだけの容量を確保している。
両車ともに床下収納が用意されているが、2段階調整可能なラゲッジボードを採用するbZ4Xのほうが融通は利きやすい。また、最小回転半径は5.6mと5.4mでアリアのほうがわずかに小回りが利く。
細部の違いはあるが、ボディサイズに起因する機能面の違いはその程度であり、両車の総合的な使い勝手に大きな差はないと言ってよいだろう。
トヨタ bZ4X Z
ボディサイズ=全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mm
ホイールベース=2850mm
車両重量=1880kg
タイヤサイズ=235/60R18(前後)
日産 アリア B9
ボディサイズ=全長4595mm×全幅1850mm×全高1655mm
ホイールベース=2775mm
車両重量=2060kg
タイヤサイズ=235/55R19(前後)
航続距離ではbZ4Xがアリアを圧倒


今回のマイナーチェンジでアリアのパワートレインスペックに一切の変更はない。モーター出力はアリアのほうが依然として高い数値を誇るものの、一充電走行距離はbZ4Xが746km(Z 2WD)であるのに対し、アリアは640km(B9 2WD)にとどまる。
両車の充電性能はbZ4Xが最大150kWの急速充電に対応し、アリアが最大130kWとなるが、実際問題として最大出力で充電できる時間は限られるため、数値ほど性能差は体感できないだろう。もっとも普及している最大90kWの急速充電器ではなおさらだ。
電費効率の違いにより単位時間充電あたりの走行可能距離はbZ4Xが圧倒的に優れる。しかし、自宅充電を主体とする使い方では、航続距離の違いや充電性能の差は問題になりづらい。
アリアは今回の改良でナビゲーションにGoogleビルトインを搭載した“NissanConnectインフォテインメントシステム”を新採用し、走行ルートに応じてバッテリー温度を自動制御する“ナビリンク バッテリーコンディショニング”機能が備わったことで外出時の充電効率が高められている。
運転支援面ではアクセルペダルを戻すだけで前走車との車間距離を維持するように支援してくれる“インテリジェント ディスタンスコントロール”を新実装。また、新たにV2Lにも対応したことでアリアはアウトドアシーンや災害時に100Vの外部給電が可能になった。
航続距離では明確に劣るものの、それ以外の性能や機能はbZ4Xとおおむね横並びと捉えてよいだろう。
しかし、こうした機能以上に際立つアリアの変更点がサスペンションだ。以前は荒れた路面で露骨に乗り心地が悪くなることがあったが、新型アリアは今回の改良で柔らかめのサスペンションセッティングに変更されたことで突き上げや揺動が軽減されており、とくに後席空間の動的快適性が引き上げられている。
トヨタ bZ4X Z
エンジン形式=交流同期電動機
排気量=-
最高出力=227ps/-rpm
最大トルク=268Nm/-rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
日産 アリア B9
エンジン形式=交流同期電動機
排気量=-
最高出力=242ps/6600-7200rpm
最大トルク=300Nm/0-4392rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
アリアの魅力はbZ4X以上、レクサス RZ未満の“絶妙な高級感”


“bZ4X Z(2WD)”の新車価格は550万円、対する“アリア B9(2WD)”は746万7900円。CEV補助金はbZ4Xが130万円、アリアが129万円だ。他のグレード同士の価格を比較してもアリアの方が200万円前後も高額となる。
2025年10月の改良で航続距離を大幅に延ばしつつ価格を引き下げたことで、国産ミドルサイズEVのゲームチェンジャーとなったbZ4Xに対し、アリアは航続距離と価格の面で苦戦を強いられる展開となっている。
しかし、アリアの真の魅力は高級感にある。前席ベンチレーションやステアリングヒーター、シートヒーターなどの快適装備はbZ4Xと同等だが、遮音ガラスに関してはbZ4Xがフロントとフロントドアに採用しているのに対し、アリアはリアドアガラスにまで遮音ガラスを採用することで徹底した静粛性向上に努めている。
それに加え、ウッド調素材にデジタルインフォメーションを組み込んだアリアのインパネデザインはひときわ特別感が高い。また、bZ4Xのシートは全グレード合成皮革だが、アリアはオプションでレザーシートも選択可能であるうえ、マイナーチェンジでホワイトとグリーンのコーディネートも新たに追加された。
実用性やコストパフォーマンスの観点ではbZ4Xがアリアを大きくリードしている。一方でアリアは高級EVとしての細部をアップデートしてきた。今回のアリアの改良は、bZ4Xとレクサス RZの中間に収まるポジションを守り抜くための堅実かつ戦略的なマイナーチェンジと言えるかもしれない。
車両本体価格
トヨタ bZ4X Z:550万円
日産 アリア B9:746万7900円
