ルーフ延長で荷室は「風呂一杯分」拡大。後席の膝前スペースは衝撃的

bZ4Xに続くトヨタのバッテリーEV(BEV)が「bZ4Xツーリング」だ。そのネーミングから想像できるようにbZ4Xの派生モデルで、どちらかというと都会派のムードを漂わせているbZ4Xに対し、bZ4Xツーリングは実用派と言える。意図してアウトドアテイストを付与しているのが特徴だ。

2026年2月25日から発売が開始されたトヨタbZ4Xツーリング。都会的なbZ4Xに対し、よりアクティブなライフスタイルを持つ顧客層のアウトドアニーズに応える一台を目指した。
トヨタbZ4Xツーリングは「Z」グレードのみのラインナップ。駆動方式はFWDと4WDが用意されており、今回の試乗車は後者。

全長は4830mmでbZ4Xより140mm長い。2850mmのホイールベースは同じである。全長の延長分はすべてリヤのオーバーハング延長にあてており、おかげで荷室が拡大している。サイドビューで比較してみると両車の違いはわかりやすい。bZ4Xはルーフが短く、リヤドアの後ろで急傾斜している。

bZ4Xツーリング:全長4830mm、全幅1860mm、全高1675mm
bZ4X:全長4690mm、全幅1860mm、全高1650mm

いっぽう、bZ4Xツーリングのルーフはリヤまで一直線に伸び、バックドアは立っている。bZ4XにはないルーフレールがbZ4Xツーリングには付いており、この装備があることによってbZ4Xツーリングのほうがアウトドアテイストは強くなっている。前後のバンパー下部がスキッドプレート風の処理になっているのも、アウトドアテイストを強める要因だ。

フロント/リヤのアンダー部分にはスキッドプレート風のパーツを装着してアウトドアテイストを表現。
横一文字のLEDテールランプもリヤビューの特徴となっている。

荷室容量はbZ4X比プラス177Lの619Lだ。一般家庭の浴槽の適量が180Lだから、bZ4XツーリングはbZ4Xに対し風呂一杯分ほど容量に余裕があることになる。たっぷり浸かれ、いや使えそうだ。バックドア側からリヤシートの可倒操作を可能にする遠隔操作レバーが付いており、使い勝手は良さそうである。

後席はルーフの形状違いの影響が大きく、bZ4XツーリングはbZ4Xに対してヘッドクリアランスにプラス48mmの余裕がある。座ってみると、座高自慢(身長は184cm)の筆者でも余裕だ。頭上もさることながら、ヒザ前のゆとりが衝撃的で、筆者が運転席に座ってドラポジをとった状態でも後席着座時にこぶし3個分ほどのスペースが残る。リヤドアはガバッと大きく開くので、乗り降りがしやすいのもいい。

113mmのヘッドクリアランス、1000mmの前後カップルディスタンスを擁することで、後席は身長184cmの世良耕太さんでも余裕あるスペースとなっている。

トヨタ最速の0-100km/h加速4.5秒! アウトドアテイストに騙されるな!?

パワートレーンはbZ4Xよりも一部強力だ。駆動方式はFWDと4WDがある。FWDがフロントに搭載するモーターの最高出力は167kWで、bZ4Xの上位グレードとスペックは同じである。異なるのは4WDが搭載するリヤモーターの出力で、bZ4Xの最高出力が88kWなのに対し、bZ4Xツーリングはフロントと同じ167kWの最高出力を発生する。システム最高出力は280kW(380ps)で、bZ4X 4WD比でプラス28kWである。0-100km/h加速は4.5秒で、なんとトヨタブランドで最速だという。アウトドアテイストに騙されてはいけない。相当な俊足の持ち主だ。

bZ4Xツーリングの4WDモデルは、フロントに加えてリアのeAxleも167kWに強化。システム最高出力280kWとなる高出力eAxleを前後に採用。リチウムイオンバッテリーの総電力量は74.69kWhで、bZ4Xと共通。

試乗したのは4WD仕様だった。2名乗車+手荷物の状態で試したが、全長4830mmのSUVから想像する加速のイメージをはるかに上回る鋭い加速を披露する。高速道路の本線への流入や、走行車線で遅いクルマに引っかかったときの追い越しなどは完全にストレスフリーだ。BEVの大きな特徴でもあるが、単にパワーがあるだけでなく、レスポンスに優れるのがいい。いまこのタイミングですぐ加速してほしいという状況で、アクセルペダルの動きに即応して加速してくれる。だからストレスがなく、爽快だ。

0-100km/h加速4.5秒というトヨタブランドのモデルではトップクラスの動力性能を実現している。

それに、とっても静かだ。(ハイブリッド車であれ)エンジンを搭載したクルマの場合は急加速した際にエンジン回転が高まって耳障りなノイズが車室内に遠慮なく侵入してくるが、BEVの場合は高い静粛性を保ったまま。BEV同士で比較してもbZ4Xツーリングは静かで、これなら加速時に「何ごと?」と同乗者を不審がらせることもないだろう。

高さを抑えた水平基調のインストルメントパネルを採用。センターディスプレイは14インチの大型サイズでとても見やすい。

重さを感じさせないしなやかな乗り心地と、新4WD制御の恩恵

しかも、動きが安定しているのがbZ4Xツーリングの美点だ。加速時も、減速時も、そしてコーナリング時も。試乗時に「ここがそうか!」と手に取るようにわかったとまでは言えないけれども、4WDにはbZ4X比で新しい制御が入っている。旋回時にリヤへの駆動力配分を積極的に行なう方向で、これによりフロントタイヤに余力が生まれ、ライントレース性が高まる仕組みだ。

旋回時に前後のトルク配分をリヤ寄りにコントロールする4WD制御を採用。オンロードから雪道までライントレース性を向上させている。

新4WD制御の効果だけを抽出するのは困難だが、雪道や非舗装路などの滑りやすい路面だけでなく、乾燥舗装路でも効果が味わえる制御だ。ということを知っていても知らなくても、比較的大柄なサイズにもかかわらず、「気を使わず、思いどおりに運転できる」と実感していただけると思う。

4WDモデルにはドライブモードセレクトにX-MODEを設定。
SNOW・DIRT、DEEP SNOW・MUDのほか、一定の速度を維持してドライバーがハンドル操作に集中できるGRIP コントロールが選べる。

大量のバッテリーを搭載するBEVは必然的に重くなり、重くなった車重を支えるためにばねは硬くせざるを得ない。すると乗り心地に悪影響が及びがちで、ヒョコヒョコと落ち着かない挙動が顔を出すというのが初期のBEVの定番ではあったが、車重2030kgのbZ4Xツーリングは重さを感じさせないしなやかな動きに終始する。とくに、小さな凹凸が連続する路面を微低速で通過する際の凹凸のいなし具合は絶妙で、感動的ですらある。

インテリアカラーはブラックのほか、アウトドアテイストのカーキ(写真)が選択可能。
前席シートにはヒーター/ベンチレーション機能が備わる。

実航続距離への安心感と、新たな充電インフラ「TEEMO」の利便性

「bZ4Xツーリング、良さそうじゃない」と感じても、BEVを所有したことがない人からすると懸念が残る。電欠の心配はないのか、充電は大丈夫なのかと。スマホですら外出先でバッテリー残量がゼロになったら困るのだから、BEVでそれが起きたらどうしようと不安になるのも無理はない。

bZ4Xツーリングはその点手を打っており(bZ4Xも同等だが)、一充電走行距離はたっぷり確保している。カタログ値ではFWDで734km、4WDで690kmだ。20インチタイヤ装着車(標準は18インチ)の場合、FWDで667km、4WDで627km(試乗&撮影車)になる。試乗車の返却時のバッテリー残量は73%で、航続可能距離は409kmと表示されていた。計算上、満充電で560km走れる計算になる。カタログ値の約9割だ。筆者の肌感覚でいうと、これだけ走れればよほどの遠出であっても、外出時に充電のことが気になることはない。

床下の後部にはディフューザーを配置するなど、空力性能をブラッシュアップ。FWDモデルでは734km、4WDモデルで690kmの航続距離を確保している。
リヤウインドウの左右を囲むように装着されたスポイラーも空力性能向上に効果を発揮しているという。

外出先での充電に便利なサービスが始まっているのも朗報だ。トヨタが2025年秋から始めた充電サービスで、TEEMO(ティーモ)という。TEEMOは150kWの充電器を主体とした高速充電網を構築中で、2026年度末までに全国約650のトヨタ/レクサス(一部を除く)店舗への設置を見込んでいる。また、急速充電器を約9800口、普通充電器を1万5500口持つ日本最大級の充電インフラ会社であるe-Mobility Power(e-MP)と連携することで、全国をカバーしている。

外出先での「経路充電」における不安を解消するため、トヨタは新たな充電サービス「TEEMO」を開始。150kW充電器を中心に、2026年度末には全国約650店舗への設置を見込んでいる。e-Mobility Power(e-MP)とも連携しており、TEEMO会員は全国の急速充電器約9800口、普通充電器約1万5500口も利用が可能。

会員プランは2種類。トヨタのBEV、PHEVユーザーが入会可能なTEEMO会員と、トヨタ車以外のユーザーでも入会可能なTEEMO Lite会員の2つがある。どちらも月額基本料金は0円(TEEMO Lite会員はTEEMO充電器のみ利用可能)。従量課金のみのシンプルな料金体系で、TEEMO会員に関してはハイブリッド車のガソリン代よりも利用料金が低くなるよう設定している。

アプリを使えば充電器の予約も可能。トヨタのBEV普及への「本気度」

また、TEEMO会員はアプリを通じて充電器を予約することが可能だ。外出時の充電待ちをゼロにできる(予約しようとした際にすでに埋まっていたら、別の場所を探す必要はあるが)。現在はbZ4XとbZ4Xツーリング購入者に限り無料キャンペーンの対象で、TEEMO充電器の充電代が1年間無料になる(月2回、各30分が上限)。

アプリでTEEMO充電器を予約し、充電を体験してみた。スマホ画面には青の丸印でTEEMO充電器、緑でe-MPの急速充電器、薄緑でe-MPの普通充電器が表示される。青丸を選択し、空いていることを確認して予約。アプリ上で予約すると通信で車載ナビに情報が共有され、車載ナビ側でルートを案内してくれる…。

といいのだが、車載ナビ側では別途ルートを設定する必要があり二度手間だ。ルートを設定すれば充電時にバッテリーの温度が最適な状態になる「バッテリープレコンディショニング」が起動する。一連の流れがルーティン化してしまえば、スムーズにこなせるようになるだろう。

bZ4XおよびbZ4Xツーリングの購入者限定で、TEEMOでの充電代が1年間無料になるキャンペーン(月2回、各30分まで)も実施されている。

トヨタは現在、BEVの魅力を知ってもらうためにbZ4X、bZ4Xツーリングの試乗車の配備を進めており、全国の約8割の販売店で試乗できる環境が整っているという。販売店には充電環境やランニングコスト、補助金などBEVにまつわる情報を熟知したマルチパスウェイスペシャリストが配備されており、疑問や困りごとにワンストップでサポートする体制を整えている。いいBEV、いいクルマを開発するだけでなく、いかにストレスなく使ってもらうかまで考えて行動しているところに、トヨタのBEV普及にかける確かな本気度が伝わってくる。

自宅での「基礎充電」用として、設置からアフターフォローまで販売店がワンストップで対応する「トヨタ6kW普通充電器」をオプション設定。この充電器は、すでにbZ4X購入者の約25%に選択されているという。トヨタはこうした取り組みを通じて、ユーザーがEVを購入するハードルを下げている。

これで「一部改良」だって!? フルモデルチェンジ並みの大変化でしょ! 新型「トヨタbZ4X」は走りも激変!!

マルチパスウェイを掲げるトヨタは、BEV(電気自動車)にも本気だ。クロスオーバーSUVの「bZ4X」は2022年の登場以来、市場から寄せられた「航続距離」「充電環境」という切実な課題に対し、ハードとソフトの両面から改善を実施。もはや「一部改良」の枠を超え、フルモデルチェンジに匹敵する進化を遂げた。 TEXT:世良耕太

車種bZ4Xツーリング Z(4WD)
全長4830mm
全幅1860mm
全高1675mm
ホイールベース2850mm
室内長1935mm
室内幅1500mm
室内高1145mm
乗員人数5名
最小回転半径5.6m
最低地上高180mm
車両重量2030kg
駆動方式4WD
Fモーター種類/型式交流同期電動機/2XM
Fモーター定格出力64.0kW
Fモーター最高出力167kW(227PS)
Fモーター最大トルク268Nm(27.3kgm)
Rモーター種類/型式交流同期電動機/2XM
Rモーター定格出力64.0kW
Rモーター最高出力167kW(227PS)
Rモーター最大トルク268Nm(27.3kgm)
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電圧391.0V
バッテリー総電力量74.7kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)121Wh/km
一充電走行距離(WLTCモード)690km
サスペンション前:ストラット式 後:ダブルウイッシュボーン式
タイヤサイズ235/60R18
価格640万円