BMW M2
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Lotus Emira

どんなコーナーも驚くべき速度でクリア

デイリーユースをストレスなくこなし、いざスポーツドライビングを楽しみたいとなれば期待以上のパフォーマンスで応えてくれる。しかも比較的手頃な価格で……。実際のところ、そんなスポーツカーは数少ない。しかし探せばないわけでもない。BMW M2とロータス・エミーラは、そんな欲求を満たしてくれる最右翼である。

悩ましい、実に悩ましい……。

AMGメルセデス製2.0リッター直噴ターボを積む「エミーラ・ターボSE」に乗ったときは、「これで決まり、これがベストだ」と確信したのだけれど、久々に慣れ親しんだトヨタ製3.5リッターV6スーパーチャージャーのエミーラV6、しかも6速MT仕様に乗った僕の決意は揺らいでいる。

それに加えて今回のお題はエミーラと「BMW M2」の比較。世が世ならヨーロッパvsマルニターボといったところだろうか。方や2シーターのV6ミッドシップ、方や2+2の直6FRと何から何まで対照的な2台ではあるが、悩みはより深くなる。

BMW M2が2代目のG87型に進化したのは2023年のこと。エンジンがM3/M4と同系列のS58型になるとともに、アダプティブMサスペンション、Mサーボトロニックステアリング、Mコンパウンドブレーキ、Mトラクションコントロールを備えるなど、シャシーも大きくアップデートされた。2024年には早速マイナーチェンジが行われ、3.0リッター直6DOHCツインターボが460PSから480PSにパワーアップされている。加えて2025年には87台限定でルーフ、トランクリッド、ディフューザーなどをCFRPで置き換え30kgの軽量化を果たしたM2 CSも登場しているが、今回はスタンダードのM2である。

スクエアなシルエットと無骨なブリスターフェンダー、フロントエアダムとの組み合わせは、マルニターボというよりは320ターボ・グループ5を彷彿とさせる。軽いボンネットを開けると、ガチガチに固められたブレースの下にメインディッシュというべき直6ユニットが収まっている有難い光景を目にできるが、フロントミッドシップでないにもかかわらず、その動きはとてもタイト。走行モードを「コンフォート」にしても、乗り心地はコンフォータブルではなく、ゴツゴツと路面の凹凸を律儀に拾ってくるものの、不快な振動や雑味は見事にシャットダウンされ、ステアリングを通じて感じるインフォメーションは実にクリア。また入力に対するレスポンスも鋭く、えらく剛性の高いミッドシップのレーシングカーのように鉄壁の一体感を伴って無駄な動きなどいっさいなく、スパッと切れ味よく曲がる。

驚くのは様々な電子制御の躾けで、すべてを余すことなくトラクションに変換するMディファレンシャルと、常に一定の操作フィールを提供するMサーボトロニックステアリングのおかげで、どんなコーナーでも見えざる手がアシストするかのごとく、驚くべきスピードと安定感でクリアすることができるのだ。その動きは時として物理の法則を飛び越えてしまったのではないか? と錯覚するほど。サイボーグ的というか、派手なグラフィックのインパネが象徴するようにデジタル的なのだ。

どこからでもパワーが出るリニアな特性

ではドライビングの手応えが希薄なのかというと、そうではない。エンジン、シャシー、ステアリング、ブレーキを個別設定してあげれば、その時の路面状況や自分のコンディションに合わせたベストなセッティングを見出すことができる。

加えて魅力的なのはMモデル専用のS58型直6DOHCツインターボで、どこからでもパワーが出るリニアな特性ながら、4000rpmを超えると尚更パワーがみなぎる味付けで、速度だけでなく感情にも訴えてくるスポーツエンジンの鑑というべきキャラクター。組み合わせる8速ATもレスポンスが素晴らしく、オートマチックモードでも常にパワーバンドを捉え続けてくれたが、個人的にはあえて6速MTをセレクトし、自分の意思でシルキー6と向き合ってみたいとも感じた。

試乗車はステアリングホイール・ヒーティングやハーマンカードンのサラウンドサウンドシステムなどを備えた「Mコンフォートパッケージ」と、Mライトアロイホイール、トラックタイヤ、CFRP製ルーフ、バケットシートなどを備えた「Mレーストラックパッケージ」を装着していたが、それらオプションを除いた車両本体価格が1000万円程度というのは、掛け値なくバーゲンプライスだといえるだろう。

ミスすればちゃんと後始末が待っている

デイリーユースをストレスなくこなし、いざスポーツドライビングを楽しみたいとなれば期待以上のパフォーマンスで応えてくれる。しかも比較的手頃な価格で……。実際のところ、そんなスポーツカーは数少ない。しかし探せばないわけでもない。BMW M2とロータス・エミーラは、そんな欲求を満たしてくれる最右翼である。

そこから再びエミーラV6に乗り換えてみると、以前のエリーゼ/エヴォーラ時代に比べて遥かにソフィスティケートされてはいるものの、その設計思想が真逆のアナログ的であることを痛感する。

すでにバッテリーEVのエヴァイヤではカーボンモノコックシャシーを導入しているロータスだが、エミーラのシャシーはエリーゼ以降続くアルミ押し出し剤を接着したバスタブ式セミモノコック。しかしながらサイドシルが低くスリムになり、乗降性が格段に良くなり、エヴォーラに比べても室内空間に余裕ができたことからもわかるように新規で開発されたもの。その証拠に剛性感は高く、目地段差を乗り越えてもミシリともいわないのはさすがだ。

スロットルペダルに力を込めると、ギュイーンという金属音を伴ったスーパーチャージャーならではのエンジンサウンドが背後から聞こえてくる。心なしか、その音質がクリアに聞こえるのは遮音性が良くなっているからだろう。

このトヨタ製2GR-FE型3.5リッターV6スーパーチャージャーは、ロータス独自のチューンによってエヴォーラGT430に迫る405PSを発生しており、1458kgの車重に対しては必要にして十分以上。しかもターボと違いタイムラグがなく、踏めば踏むほど上乗せさせていくスーパーチャージャーらしいパワー感が懐かしくもある。

またエヴォーラと同じ2575mmのホイールベースながらピタっと路面に吸い付くような直進安定性をみせるのは、エヴァイヤから実践されているPoroslty(多孔性)と呼ばれるボディ内部とアンダーフロアのエアフローを最適化した空力処理の効果も大きいはずだ。そしてもうひとつ意外だったのは、決してストロークの大きいサスペンションでないにもかかわらず、路面の凹凸を上手に抑え、望外に乗り心地がいいことだった。

そんなエミーラとM2のキャラクターの差が鮮明に浮かび上がるのは、やはりワインディングだ。パワステ付きではあるものの、ソリッドで手応えのあるステアリングを切ったときにまず感じるのは、ミッドシップらしい鼻先の軽さだ。しかしながらそこに不安定さはなく、ステアリングを通じてしっかりとしたインフォメーションがあるのはロータスの良き伝統。そこからクルマと呼吸を合わせるように手足を駆使して操ってあげれば、まさに人馬一体というべき一体感を伴いながらヒラヒラと気持ちよくコーナーを駆け抜けていく。

あわせてストロークが短くダイレクトなタッチの6速MTもエミーラV6の美点のひとつ。ヒール&トゥのしやすいペダル配置も「分かってる!」という感じで、ブレーキングと共にスパッとシフトダウンが決まった瞬間は、他には変えがたい気持ちよさがある。ただし、必要以上の電子アシストの類はないので、ステアリングの舵角が大きかったり、スロットルを開けるタイミングが早すぎたりすれば、ちゃんとドライバーがその後始末を強いられるように、その動きは一貫してアナログ的なのである。

一方で、シャシーがもっているポテンシャル自体はエミーラに分がある。もちろんサーキットなどでタイムを測れば明らかにM2の方が安定して速いのは間違いない。しかし仮にM2に装備されているすべての電子デバイスを外したとすれば……エミーラの方が速く走れるのではないか? と感じたと言えばその意味がお分かりいただけるだろうか。

BMWとロータスの正義と美学

デイリーユースをストレスなくこなし、いざスポーツドライビングを楽しみたいとなれば期待以上のパフォーマンスで応えてくれる。しかも比較的手頃な価格で……。実際のところ、そんなスポーツカーは数少ない。しかし探せばないわけでもない。BMW M2とロータス・エミーラは、そんな欲求を満たしてくれる最右翼である。

このように、M2とエミーラはその成り立ちだけでなく、走りの質も対極にあると言っていい。「スポーツカーは速さである」と定義するのであれば、踏めば踏んだだけ進み、切れば切っただけ曲がり、どんなシチュエーションでも速く走ることができるM2に軍配が上がる。

もしスポーツカーに速さだけでなく「スポーツすること」という要素を加えるのであれば、もはや破綻する気配すらなく、人が介在する隙を見せないデジタルマッチョのようなM2よりも、常に物理の法則のもとにあるエミーラの方が「対話して乗りこなす」という悦びを、より濃厚に享受できるといえる。

そう思うとM2とエミーラは、機械的な凄みを付加することで他を圧倒してみせたマルニターボと、余分なモノを削ぎ落とす引き算の美学を前面に押し出したヨーロッパとの関係に似ている。とはいえエアコンが効き、遮音も良く、スペースに余裕があり信頼性も高いエミーラは引き算ばかりではないのだが、ドライバーに与えられる自由度はM2の比ではない。そのうえで両車に、今やスポーツカーにおいても絶滅が危惧されているマニュアルトランスミッションが用意されているのは、何よりの特色であり、魅力だと思う。

そこで思い出したのは「プアマンズ○○」という、昔からある表現だ。日本だと「貧乏人の○○」と直訳されがちだが、実際には安くとも実力では負けていないことを示す反骨精神というか、持たざる者の美学というか、そんなニュアンスが込められている。

そういう意味でBMW M2は「プアマンズM4」であり、ロータス・エミーラは「プアマンズ・マクラーレン」だ。もちろんこれは両車への最大級の褒め言葉である。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年7月号

SPECIFICATIONS

BMW M2

ボディサイズ:全長4580 全幅1885 全高1410mm
ホイールベース:2745mm
車両重量:1730kg
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:353kW(480PS)/6250rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/2700-5620rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35R19 後285/30R20
0-100km/h加速:4.0秒
最高速度:285km/h
車両本体価格:1031万円

ロータス・エミーラ V6ファーストエディション

ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1458kg
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:3456cc
最高出力:298kW(405PS)/6800rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2700-6700rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
0-100km/h加速:4.3秒
最高速度:288km/h
車両本体価格:1573万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

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