BMW M2 CS

いわば“幻のM2”

やはり最大の特徴はカーボン製ダックテール形状のトランクリッドだろう。全高は標準より5mm(欧州値では8mm)ローダウンされた。
やはり最大の特徴はカーボン製ダックテール形状のトランクリッドだろう。全高は標準より5mm(欧州値では8mm)ローダウンされた。

 

日本で楽しむジャストサイズのM。クーペ時代の「M3」に憧れた我々世代にとっては、最も好ましい選択肢のひとつ、それが「M2」だ。筆者もまたM2にこそBMW Mの神髄があると頑なに信じるひとりである。そんなM2に日本国内限定87台という特別なグレード「M2 CS」が加わったのは昨年秋のこと。あっという間に完売御礼となった、いわば“幻のM2”である。

S55B30型3.0リッター直6ツインターボエンジンは530PS&650Nmにまで引き上げられた。これはもはやM4コンペティションと同じ。それゆえ日本での販売価格もM4コンペとほぼ同じで約1500万円、M2スタンダードモデルよりおよそ500万円も割高である(もっともM4CSはさらに500万円も高くなるのだが)。カーボンパーツを使って30kgほどダイエットし、専用チューニングを受けた足まわりのセット、あからさまに目立つダックテールウイングのトランクリッドを持つ。ゴールドにペイントされたアロイホイールも特別であることを主張してやまない。残念なのは3ペダルMTが選択できなかったことぐらいだろうか。

そんな貴重なM2 CSを友人が購入した。ありがたいことに自由にテストしてくれという。なんならサーキットにも行ってみろ、と。パリパリの新車だったので流石にそれは諦めて、慣らしがてら長距離ドライブをじっくり楽しんだのち、街中からワインディングロードまでいくつかのステージで試してみた。

優れたグランドツーリングカーでもある

最高出力530PS、最大トルク650Nmにまで引き上げられたS55B30型3.0リッター直6ツインターボエンジン。この数値はM4コンペティションと同値だ。
最高出力530PS、最大トルク650Nmにまで引き上げられたS55B30型3.0リッター直6ツインターボエンジン。この数値はM4コンペティションと同値だ。

ダックテールさえ見なかったことにすれば(ノーマルM2オーナーにはできっこない相談だ)、気心の知れたM2だと比較的カジュアルな気分で乗り込む。バケットシートも同じ。ただしCSと入っている、センターコンソールまわりが簡素だ。赤いボタンでS55が目をさます。

動き出した瞬間、予想に反して、これはM2とは“まるで違う”と思った。硬くフラットな滑り出しは、M2というよりどちらかというとM4のようだ。ステアリングホイールを握った太い感触そのままに、前輪の存在を感知する。もちろん、後輪駆動だから四駆のM4に比べてフロントタイヤの動きはクリアだ。けれども存在感があった。

乗り心地もはっきりとハード。中高速域からはほとんど気にならなくなるけれど、低速域ではガツンとくる。ナラシが進めばもう少し心地良くなるだろうか。もっとも中高速域に入れば、Mらしく実に安定したグランドツーリングカーに。Mのエンジンは静かに回してもその精緻さが心地よい。クルージング中もまた感覚的にはM4を流しているかのようだった。高速域の安定感もまたピカイチ。ホイールベースの短いM2という感じがまるでない。この半年間に東京〜京都で試したモデルの中で、最も優れたグランドツーリングカーだと思った。

動的なクオリティはM4レベル

シート背面やセンターコンソールなどにカーボンが用いられた室内がレーシー。ルーフもカーボン製となり重心高の低減に貢献している。
シート背面やセンターコンソールなどにカーボンが用いられた室内がレーシー。ルーフもカーボン製となり重心高の低減に貢献している。

地元のホームワインディングへとノーズを向ける。Mモードを使って無理のない範囲で攻め込んでみた。加速の鋭さはもちろん、その動的なクオリティもまたM4レベルだ。実に安定している。制動もまた素晴らしい。姿勢をさほど変えることなく、ドライバーだけ前のめりにコーナーへと入っていく。少しだけステアリングと格闘しなければならない感覚もまたM4とよく似る。それでいて旋回の鋭さはM2譲りだ。タイトベントからロングコーナーまで、ジャストサイズ感の恩恵を存分に受けつつスポーツドライビングを楽しんだ。

筆者が特に気に入ったのはS55エンジンのフィールとサウンドだ。精緻な回転フィールは常に密度感たっぷりで、ブレない芯のような存在が頼もしく、迫力の排気音がドライバーを鼓舞してやまない。回転の芯が右足、そして腰と後輪とがダイレクトにつながり、ジャストサイズな動きが身体とシンクロする。ワインディングロードチャンピオンである。オーナーの言った通り、サーキットへ連れ出してみたいと思った。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/平野 陽(AKio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2026年9月号

SPECIFICATIONS

BMW M2 CS

ボディサイズ:全長4590 全幅1885 全高1405mm
ホイールベース:2745mm
車両重量:1700kg
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:390kW(530PS)/6250rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2750-5730rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35R19 後285/30R20
燃料消費率:9.9km/L(WLTCモード)
最高速度:302km/h
0-100km/h加速:3.8秒
車両本体価格:1488万円

 

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

BMW M2 M xDrive × BMW M4 Competition M xDrive

同じ3.0リッター直6ターボに全輪駆動を組み合わせたBMW「M2 M xDrive」と「M4 M xDrive」を比較

2026年6月、BMW M社(BMW GmbH)は、M2シリーズ初となる全輪駆動モデル「M2 M xDrive」を追加。今回は同じ3.0リッター直6ターボと全輪駆動システムを搭載する「M4 コンペティション M xDrive クーペ」とスペックを比較し、どこに違いがあるのかチェックしてみよう。