プレミアムEVではテスラの次に売れているボルボ

ボルボは北欧企業らしく環境問題には積極的に取り組んできており、クルマの電動化もヨーロッパメーカーの中では早い方だった。とはいえ、それは一気にBEV化を進めるものではなくハイブリッドやプラグインハイブリッドも同時に展開する漸進的な展開だった。その中で、BEVのエントリーモデルとして登場したEX30はBEV販売拡大の重要なポジションを担うモデルである。

ボルボEX30(発表時)

ボルボはEV販売が低調な日本市場において健闘を続けており、欧米メーカー+レクサスがメインとなるプレミアムBEV市場において、BEV専業メーカーとしてBEV販売で大きく先行するテスラに次ぐ第2位のシェアを獲得。昔ながらの自動車メーカーではBEV販売でトップだ。

テスラ・モデルYとモデル3。

2023年11月にEX30の日本導入以降、順調に販売台数を伸ばしており、テスラの各モデルに次ぐ販売台数となっているという。また、BEVに限らずBセグメントのプレミアムコンパクトSUVでも、レクサスLBXに次ぐ販売台数であり「BセグメントのプレミアムコンパクトSUVのBEV」という独自のポジションを築いているようだ。

レクサスLBX

グレード構成とラインナップをわかりやすく

EX30はシステム的に、バッテリーがノーマルかロングレンジか、パワートレインがシングルモーターの後輪駆動(RWD)かツインモーターのAWDという構成というのは一貫しているが、実際のグレード構成となると、ボルボ独特のやや長めのグレード名がややわかり難い印象があった。

ボルボEX30「ウルトラシングルモーターエクステデッドレンジ」(2024年)
車名グレードモーター駆動方式
EX30プラスシングルモーター1RR
EX30プラスシングルモーターエクステンデッドレンジ1RR
EX30ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ1RR
EX30ウルトラツインモーターパフォーマンス2AWD
EX30クロスカントリーウルトラツインモーターパフォーマンス2AWD
以前のグレード体系
トリムレベルが「プラス」と「ウルトラ」、モーターが「シングル」「ツイン」、バッテリーが通常(無印)か「エクテンデッドレンジ」で、AWDは「パフォーマンス」というもの。

現在はシステム/パワートレイン構成も整理され、グレード名も見直されたため以前よりはわかりやすくなっているようだ。上位グレードが「ウルトラ」、エントリーグレードが「プラス」なのは変わらず。パワートレインがRWDがエントリーの「P5」、バッテリー容量を増やした「P5ロングレンジ」、AWDは「P8 AWD」という名称になった。ロングレンジではない「P5」は「プラス」のみだ。

車名グレードモーター駆動方式
EX30プラスP51RR
EX30ウルトラP5ロングレンジ1RR
EX30ウルトラP8AWD2AWD
EX30クロスカントリーウルトラP5ロングレンジ1RR
EX30クロスカントリーウルトラP8AWD2AWD
2026年9月のグレード体系
モーター数がグレード名から外れて「P5」(シングルモーター)、「P8」(ツインモーターAWD)に変更。「エクステンデッドレンジ」は「ロングレンジ」になった点も単語的にわかりやすい。

また、2025年2月によりSUVテイストを高めた「クロスカントリー」を追加。こちらはツインモーターのAWDのみで、EX30の最上位モデルという位置付けでデビューしていた。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」(2026年)

EX30クロスカントリーにRWDを追加

そのEX30クロスカントリー(以下、EX30CC)にシングルモーターのRWDが追加された。わかりやすく言うとEX30の上位グレード「ウルトラ」のRWDモデルのEX30CC版といったところで、パワートレインは「P5ロングレンジ」になる。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」

EX30はBEVらしいグリルレスのフロントマスクが特徴だが、BEVらしい先進性を求めるユーザーには好評な一方、従来のクルマらしいテイストを求めるユーザーには違和感があったようだ。EX30CCはブラックフェイスとしたことで、そうしたユーザーにもEX30受け入れられやすい要素となった。

ボルボEX30。フロントグリルに開口部が無いBEVはグリルレスデザインを採用するケースが多い。
ボルボEX30クロスカントリー。開口部は無いがブラックフェイスとなったことで、従来のクルマらしいデザインに見える。

もちろん現在のSUV人気という背景もあるし、SUVではあるもののEX30ではSUV的なテイストが足りないと感じていたユーザーもいたことだろう。EX30に150台限定ながらブラックフェイスとなる「Black Edition」が導入されたことからも、そうしたユーザーの嗜好が伺い知れる。

ボルボEX30「Black Edition」は「ウルトラP5ロングレンジ」をベースにした特別仕様車で、2026年9月に150台限定で発売された(599万円)。クロスカントリー以外で唯一ブラックフェイスが選べることになる。

RWDの軽快な走りをクロスカントリーのスタイルで味わう

これまで試乗してきたEX30はEX30のRWDモデル(「ウルトラシングルモーターエクステンデッド」)、EX30CCのAWDモデル(「ウルトラツインモーターパフォーマンス」)。そして今回EX30CCのRWDモデル(「ウルトラP5ロングレンジ」)だ。先の2台はどちらもクルマとしての素性の良さを感じられ、AWDモデルはツインモーターのハイパワーと電子制御AWDのトラクション性能に感嘆したものだ。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」。ツインモーターのパワーはワインディングでもストレスフリーな加速を見せ、電子制御AWDによる路面を選ばないトラクション性能で遺憾無く発揮される。

とはいえ、いずれの試乗でも長距離ドライブということもあり航続距離を気にしてしまった感は否めない。特に冬の山道も走ったEX30CCは尚更だった。

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今回は神奈川県の大磯から西湘バイパスや箱根ターンパイクを通り大観山で折り返す、これまでよりは短めの行程。今までの試乗にはなかったドライのワインディングで、走りの違いを味わった。

試乗車のボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」

EX30CCは全高で15mm(1550mm→1560mm)、最低地上高で20mm(175mm→195mm)高くなっているが、腰高感が上がった感じはしない。このサイズ以外にも実はEX30よりも足まわりのセッティングが柔らかめになっている。バネレートはフロントが27N/mm→25N/mm、リヤが99N/mm→86N/mm)。リヤのアンチロールバー(スタビライザー)径も21mm→20.5mmに変更されており、乗り味はEX30より気持ちソフトめだ。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」。AWDモデルの「ウルトラP8AWD」との外観上の差異はほとんど無い。

特にコンフォートモードはそれが顕著で、乗り心地で言えば確かに良く、舗装の良くないところや、高速時の突き上げをソフトにいなしてくれた。一方で、ワインディングを走る上ではややハードになるパフォーマンスモードの方が乗りやすい印象だった。かと言って、コンフォートモードでワインディングを走ったからといってフワフワで不安というわけでもないので、気分や好みの範疇とも言える。いずれにせよ状況に合わせて選べるのはありがたい。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」。ボディカラーは「サンドデューンメタリック」。

何よりAWDモデルより90kgも軽い車重は、フロントモーター分の115kW(156ps)の出力減を補って余りある。安全のために制御されているとはいえ、アクセルを大きく踏み込んだ際の後輪で蹴り出される感覚と相まって軽快感はAWDを上回る。EX30より柔らかめにセッティングされた足まわりが、その感覚をより強くしているのかもしれない。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」

もちろん、ステージに合わせたモードセレクトや、優れた安全装備とドライブアシスト機能、使い勝手の良いインフォテインメントシステムなど、最新のBEVとしての機能や充実している。しかし何より、シンプルながらバランスの良い走りこそがEX30の真骨頂ではなかろうか。元々EX30は素性の良いクルマであったが、セッティングの異なるクロスカントリーでもそれは変わらなかった。今回の試乗でその良さを改めて体感することができたのは幸いだった。

ボルボEX30クロスカントリー「P5ロングレンジ」のコックピット。基本的なレイアウトはEX30やEX30クロスカントリー「ウルトラP8AWD」と違いはない。
ボルボEX30クロスカントリー「P5ロングレンジ」のフロントシート。
ボルボEX30クロスカントリー「P5ロングレンジ」のシート表皮は、パインカラーのウールブレンド/ノルディコ・コンビネーション。ノルディコはリサイクルポリエステル使用する素材。
ボルボEX30クロスカントリー「P5ロングレンジ」のダッシュボード。表皮には亜麻原料のフラックスを使用しており。シートと合わせ環境に配慮している。

より悩ましいEX30シリーズの選択肢

より気軽に日常の足としてプレミアムBEVに乗りたいというのであれば「プラスP5」は悪くない。航続距離こそ390kmにとどまるが、479万円と500万円を切る価格設定は破格だ。

雪道での走行を考えるなら「ウルトラP8AWD」が良いだろう。しかし、EX30で629万円、EX30CCで649万円とシリーズトップグレードだけにどちらも600万円を超える。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」。雪道での走行や全天候性を考えるとAWDモデルが魅力だが、単純にツインモーターによるハイパワーでBEVの高性能を求めるのもアリ。

逆にAWDは必要無いが航続距離は担保しておきたいなら「ウルトラP5ロングレンジ」という選択になるが、こちらはEX30で579万円、EX30CCで599万円で、いずれも600万円を下回る。EX30CCは欲しいけど予算的に厳しい、あるいはAWDは必要ない、というユーザーにEX30CC「ウルトラP5ロングレンジ」の追加は嬉しいポイントとなった。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」。「30」に右にあるグレードエンブレムが外観上の違い。
車名グレード価格
EX30プラスP5479万円
EX30ウルトラP5ロングレンジ579万円
EX30ウルトラP5ロングレンジ
Black Edition
599万円(150台限定)
EX30ウルトラP8AWD629万円
EX30クロスカントリーウルトラP5ロングレンジ599万円
EX30クロスカントリーウルトラP8AWD649万円
2026年9月現在のグレードと価格

ただ、スタイル以外にもポイントになるのがボディサイズだ。全長は共通だが、EX30CCは全幅と全高で15mmほど大きい。全幅はそれほど大きな差にはならないが、全高はEX30の1550mmに対して1565mmとなるため、高さ制限のある駐車場を利用できないケースが発生してしまう。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」
車名EX30EX30クロスカントリー
グレードウルトラP5ロングレンジウルトラP5ロングレンジ
全長4235mm4235mm
全幅1835mm1850mm
全高1550mm1565mm
最低地上高175mm195mm
重量1760kg1790kg
EX30とEX30クロスカントリーのボディサイズの違い。
メーカーボルボ
車名EX30クロスカントリー
グレードウルトラP8AWDウルトラP5ロングレンジ
型式ZAA-2E400AZAA-2E400R
全長4235mm
全幅1850mm
全高1565mm
ホイールベース2650mm
最低地上高195mm
車両重量1880kg
定員5名
最小回転半径5.5m
航続距離500km530km
電費(WLTC)161Wh/km150Wh/km
最高出力F:115kW(156ps)/6000-6500rpm
R:200kW(272ps)/6500-8000rpm
R:200kW(272ps)/6500-8000rpm
最大トルクF:200Nm(20.4kgm)/5000rpm
R:343Nm(35.0kgm)/5345rpm
R:343Nm(35.0kgm)/5345rpm
バッテリーリチウムイオン
バッテリー容量69kWh
充電普通(AC200V)
急速(DC/CHAdeMO)
駆動方式AWDRWD
トランスミッションー
サスペンションF:マクファーソンストラット
R:マルチリンク
ブレーキ4輪ディスク
タイヤ・ホイール235/50R19(7.5J×19)
価格649万円599万円
ボルボEX30クロスカントリー諸元

どちらかと言えば守旧的で四駆信者の筆者としてはブラックフェイスのEX30クロスカントリー「ウルトラP8AWD」を選びたくなるが、一方で「クルマは軽いが正義」とも考えているのでEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」の軽さにも惹かれるものもあった。より実践的なグレードラインナップとなったEX30シリーズ、その選択は実に悩ましい。

フォトギャラリー:
ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」

ここまでの画像や、本文にはない画像はページトップの「この記事の画像をもっと見る(40枚)」で見ることができる。ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」のディティールを写真でさらにチェックしてみてほしい。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラP5ロングレンジ」