後席の広さや荷室の使い勝手で選ぶならフィットRS

改良新型フィットは一部のグレード名が改められるとともに、主要グレードの外観と装備が大きく変化した。“RS”のグレード名は変わっていないが、旧“LUXE”と統合されて快適装備が充実している。

一方、アクアの改良は法規対応を含む小変更にとどまるが、2025年9月の改良から販売が停止していたGR SPORTグレードが復活した。

フィットRSとアクアGR SPORTは、ともに内外装やシャシーを中心に手が加えられたスポーティモデルとなる。どちらも専用エアロパーツなどをまとうことで全長は数十mmほど延長されているが、室内や荷室の寸法はそれぞれのベースモデルと共通であり、両車のボディサイズにも大きな差はない。

後席の頭上空間は同じくらいだが、膝まわり空間はフィットRSの方が拳ひとつ分ほど広く、広い後席開口面積により乗降性に優れるのもフィットの方だ。

荷室はフィットの方が若干広いものの、両車の荷室寸法はフィットRSが長さ660mm×幅1010mm×高さ870mm、アクアが656mm×935mm×824mmと大きな差はない。

ただし、アクアGR SPORTは後席を畳むと荷室床面と後席背もたれの間に大きな段差ができる。ディーラーオプションの“アジャスタブルデッキボード”を上段に設置すればフラットな荷室となるが荷室高が低くなってしまう点がウィークポイントと言えるだろう。

その点フィットRSは、センタータンクレイアウト&ダイブダウンシートにより後席を倒すだけでフルフラットの広い荷室空間となるため、小柄な人なら車中泊も難しくない。加えて、後席座面を跳ね上げて空間を確保できるチップアップ機構もフィットRSの大きな特徴だ。

また、フィットRSは今回の改良でフロントおよびフロントサイドがUV+IRカットガラスに変わった。それに対して、アクアのIRカットガラスはフロントサイドのみとなる。実用性や快適性ではフィットRSが優位と言えるだろう。

ホンダ フィット e:HEV RS
ボディサイズ=全長4080mm×全幅1695mm×全高1540mm
ホイールベース=2530mm
車両重量=1200kg
タイヤサイズ=185/55R16(前後)

トヨタ アクア GR SPORT
ボディサイズ=全長4100mm×全幅1695mm×全高1485mm
ホイールベース=2600mm
車両重量=1160kg
タイヤサイズ=205/45R17(前後)

燃費性能で選ぶならアクアGR SPORTの方

パワートレインのスペックは、両車ともにそれぞれのベースモデルに準じており、駆動方式はどちらもFFのみの設定だ。アクアは元からハイブリッド専用車だが、フィットは今回の改良でガソリンモデルのRSグレードは廃止となっている。

それぞれのハイブリッドシステムは、フィットRSが最高出力123ps/最大トルク253Nmのモーター走行を主体とし、高速域では1.5L 直列4気筒エンジンの動力で走行するe:HEV。アクアGR SPORTは、1.5L 直列3気筒エンジンと最高出力80ps/最大トルク141Nmのモーターの動力を適宜使い分けるTHS-IIだ。

発進加速性能は絶対的なモータートルクで勝るフィットRSが優位となる。しかし、燃費性能はアクアGR SPORTの方が高い。

両車のWLTCモード平均燃費はフィットRSが27.0km/L、アクアGR SPORTが30.7km/Lとなっており、全速度域でアクアGR SPORTの方が良好な燃費数値となっている。

両車の真骨頂はシャシーの仕立てにある。フィットRSは、185/55R16の専用タイヤに高減衰ダンパーや強化スプリング、強化スタビライザー&ブッシュが組み合わされ、ベースモデルに対してハンドルの応答性と姿勢安定性が強化されている。

また“RS”には専用モードセレクターと、回生ブレーキの減速力を4段階で選択可能となるパドルシフトも備わっており、ブレーキの電動サーボもRSグレード専用セッティングだ。

一方、アクアGR SPORTは補強ブレースの追加によりフロア剛性を強化するとともに、特殊ワッシャボルトでリヤサスペンションまわりの締結剛性を向上させている。

サスペンションもそれに合わせた専用品であり、さらにはフロントロワアームブッシュの高硬度化や専用バンプストッパーを用いてセッティングが煮詰められているほか、“POWER+モード”時にはパワステもレスポンスを高める制御に切り替わる。

ベースモデルに比べて硬めの足まわりが両車の共通点だ。しかし乗り心地にも配慮されており、どちらもスポーツカーのような気構えは必要ない。

ホンダ フィット e:HEV RS
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1496cc
最高出力=106ps/6000-6400rpm
最大トルク=127Nm/4500-5000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

トヨタ アクア GR SPORT
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1490cc
最高出力=91ps/5500rpm
最大トルク=120Nm/3800-4800rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)

価格差は約34万円! しかしリセールバリューを加味すると…

アクア“GR SPORT”の新車価格は323万8400円。それに対し、フィット“e:HEV RS”は旧型から28万2700円値上げされた289万9600円だ。

フィットRSは、今回のマイナーチェンジでステアリングヒーターやシートヒーターが標準で備わり、旧型ではオプションだった“Honda CONNECTディスプレイ”も標準装備となった。そのほか、マルチビューカメラや本革シートなどオプション装備の選択肢も増えている。

旧型のRSグレードは価格が安かったものの、装備面で大きく見劣りしていたため比較が難しかったが、今回の改良でようやくアクアGR SPORTと同じ土俵に立てた。

アクアGR SPORTもシートヒーター&ステアリングヒーターを備え、通信が途切れても使える“コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus”が標準装備となっており、快適装備の面ではフィットRSとの大きな差は見当たらない。

内装装飾は両車の大きな違いと言えるだろう。フィットRSは、改良で内装色が天井までブラックでまとめられ、シートやステアリングのステッチはレッドに変更されたほか、ステンレス製のスポーツペダルが装着される。

それに対して、アクアGR SPORTの内装にはベースモデルに対して高触感人工皮革“エアヌバック”を用いた“GR”ロゴ入り専用シートやアルミ製ペダル、ガンメタリック加飾などの変更が加えられており、シャシーを含めてベースモデルに対して多分にコストがかかっているのはアクアGR SPORTの方だ。

相応に高価ではあるが、アクアGR SPORTは高いリセールバリューが期待できるため、価格差は大きな問題にならない。ただし、こうしたスポーティモデルの高い価値は低年式・低走行距離の個体に限られる。

そのため、3年〜5年の短期間で乗り換えるつもりであればアクアGR SPORTが手堅い選択となる。長く乗り続けるなら、優れた車内ユーティリティとスポーティなハンドリングがバランス良く備わったフィットRSがおすすめだ。

車両本体価格

ホンダ フィット e:HEV RS:289万9600円

トヨタ アクア GR SPORT:323万8400円